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ハロー、シボラ!(第3回/全3回)

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ハロー、シボラ!(第3回/全3回)

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chapter.13 帰還 


 すっかり和やかになった雰囲気の中、生徒たちは謝罪と共にミイラを返却し、無事許しを得た。同時に、両部族間の誤解も解け、わだかまりは完全になくなった。
「いやあ、突進で気絶した時はどうなることかと思ったよ」
 あれから生徒たちの看護により無事意識を取り戻したメジャーが、笑って言う。
「悪かった、体、大丈夫か」
「ぜひお詫びとして、今度おしゃれな服を送ろう」
 ベベキンゾ、パパリコーレらに温かい言葉をもらい、がっちり握手を交わすメジャー。
「さて、すっか日も暮れてしまったし、そろそろ帰ろうか!」
 メジャーがそう言うと、生徒たちは満足した顔で頷き、シボラを後にしようとした。
 が、どういうわけか、3人の生徒が、メジャーたちについていこうとしない。
「き、君たち……?」
 不思議そうな目でメジャーは彼らを見た。ベベキンゾ族の集団に混じり、彼らに手を振っていたのは司とサクラコ、そして優梨子だった。
「私たちは、あと数ヶ月ほど逗留と観察を続けますから、お気になさらず」
「……そういうことだ。藤原の気が済むまで、俺たちは滞在を続ける」
 彼らの言葉に、メジャーは念を押した。
「……いいのかい?」
「ええ」
 即答した優梨子。その意思は固いようだ。そこまで心に決めているなら、無下にもできない。メジャーは、笑って彼らに手を振った。
「エキサイティングな留学だね! 気をつけるんだよ!」
「はい、皆さんもおたっしゃでー!」
 にこやかに挨拶を交わし、彼らは別れた。
 ここだけを見たら感動的なシーンであるが、実際はこの後、一週間ほどで彼らは色々な意味で人恋しくなり、シャンバラに帰っていた。大学に戻った3人は、しばらくの間あだ名を「ベベキンゾ」にされたという。



「頭領、結局今回は収穫なしでしたね」
 生徒たちと別れたヨサークは、シャンバラで待っていた空賊団の団員にそう話しかけられた。しかしヨサークは、笑って首を横に振る。
「そうでもねえぞ。あの後あいつらが『悪いことをした』っつってお詫びをくれたんだ」
 言って、ヨサークが彼らに土産を見せる。それは、あのミイラの副葬品の一部だった。
「頭領! これかなり光ってますよ! 高級な金品じゃないんですか!」
「ああ、これなら新たな飛空艇の資金としてかなり足しになる」
「あれ、これってそのパパリコーレとかいう部族からのですよね。もうひとつ部族があったんじゃ……?」
 団員のひとりが、なにげない疑問を口にした。しかし、ヨサークの顔が苦笑いに変わったのを見て、首を傾げる。
「頭領?」
「あー……いや、まあ、色々あるよな」
 もちろん、彼はベベキンゾ族からもお詫びを受け取っていた。しかしそれは形として残るものではなかった。彼がベベキンゾ族から「これが、お詫び」と言われて見せられたのは、ベベキンゾ族の間では有名な「謝罪の舞」だっだのた。ちなみにその内容は、ただ全裸で狂ったように踊るだけである。
 ヨサークは「まあ、人手が足りなくなった時に呼べば来てくれるんじゃねえか」と団員たちにそれっぽいことを言って誤魔化す他ないのだった。
「まあ、あの教授から金もある程度もらったしな、ヨサーク空賊団、空に復活もそう遠くねえぞ!」
 ヨサークの元気な声に、団員たちはいつものかけ声で応えた。



「いやあ、今回の冒険も危険がいっぱいで楽しかったなあ」
 シボラから帰ったメジャーは、早速自分の研究室へ戻ると、日記を書くため机に向かった。ギギ、と椅子を引き、座ろうとする。その時、彼は小さい違和感を覚えた。
「痛っ……」
 内側から響いてくるような、鈍い痛みの感覚。それは、彼の足から脳へとダイレクトに伝わった。
「な、なんだろう……?」
 その部分が熱すら帯びているように感じてきたメジャーは、机の上にあった携帯電話をたぐり寄せると、電話をかけた。数回のコールの後、機体から音声が聞こえてきた。
「はい、もしもし、空京病院です」