天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

リアクション公開中!

七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「みなぎる魔力!大開放!!」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が、ヴォルテックファイアで襲ってきた小型機晶姫を焼き滅ぼした。だが、すぐにその炎が壁に吸収されて消えてしまう。
「なんなの? 魔法が全然派手じゃないよね」
 せっかく派手な魔法を使ったのにしょぼいと、カレン・クレスティアがぼやいた。
「外にいる人たちから連絡がなかった? この遺跡は魔法を吸収する爆弾みたいな物なのよ」
 ヘイリー・ウェイクから連絡を受けていたリネン・エルフトが、カレン・クレスティアを注意した。
「だから魔法は禁止。肉弾戦で行くぜ!」
 コンドルのレガースのクロー攻撃で小型機晶姫を砕いたフェイミィ・オルトリンデが、ちょっと自慢そうに言った。
「まったく。これは俺の活躍を制限しようとする敵の陰謀です。この雪だるま王国騎士団長クロセル・ラインツァート、不当な圧力には屈しません!」
 超伝導ヨーヨーで小型機晶姫を叩き落としながら、クロセル・ラインツァートが言った。
「ひとまず、このあたりの悪は滅びました。正義の勝利です」
 もう周囲に小型機晶姫がいないことを騎士団兵に確認させると、自慢げにクロセル・ラインツァートが宣言した。
「まったく、魔法が使えないというのは不便ですね。葵、もう、落ち着いて調べられますよ」
 フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、秋月 葵(あきづき・あおい)に声をかけた。
「じゃ、もう一度やってみるね」
 秋月葵が、トレジャーセンスで星拳を探してみる。放出系の魔法や光条兵器などのエネルギー兵器関係は吸収されてしまうみたいだが、パッシブ系の魔法や超能力は大丈夫のようだ。
「二つある……ということは、ココちゃんとアルディミアクちゃんだよね。近い方は、こっちの道の先の方かな」
 少し前に同じことをして得られた方向と今回の方向から、マップ上で三角測量をして秋月葵が目的地を割り出した。
「では、行きましょう。俺たちの目的は開くまでもゴチメイ救出です。彼女たちがあっさりと捕まるようなところには、きっと何か美味しい展開があるに違いません。美味しい物は、全てこのクロセル・ラインツァートがいただきです!」
 思わず本音をぽろりと漏らしてしまいながら、クロセル・ラインツァートが進行方向をポーズをつけて指さした。
「グルルルルルルル……」
 だが、その進行方向から、何か獣の低い唸り声が響いてくる。
「えーっと、こっちでいいんですよね?」
 先ほどの言葉の舌の根も乾かないうちから、クロセル・ラインツァートがちょっと心配そうに秋月葵に聞き返した。
「やれやれ、また面倒が待ち構えているのですか。話の分からない愚か者は、さっきのように叩き潰して進みましょう」
「黒子ちゃん、過激だよね……」
 やる気まんまんのフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』に、秋月葵がつぶやいた。
「誰かいるんですか?」
 一同が戦闘態勢をとっていると、月詠 司(つくよみ・つかさ)がひょいと角から顔を出した。
「なあんだ、クロセルさんと愉快な仲間たちさんですか。よかった、敵じゃないですよね」
「誰が愉快な仲間たちだ!」
 名前を呼ばれて御満悦なクロセル・ラインツァート以外の全員が、力を込めて月詠司の言葉を否定した。
「敵がいるの? よし、ツカサ、今こそ変身よ!」
 後ろから現れたシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が、微塵も話を聞いていないで、月詠司をドンと突き飛ばした。
「うわっ、何をするんで……」
 つんのめった月詠司が、よろよろとカレン・クレスティアの方に突っ込んでいった。
 思わず何かをつかんで身を支えようとのばした手が、カレン・クレスティアの胸にのびて……スカった。そのまま、月詠司がビタンとカレン・クレスティアの足許に倒れ込む。
「なっ……、今のは何よ! つかむんだったらちゃんとつかむんだもん!!」
 なんだかもの凄い屈辱を与えられた気がして、カレン・クレスティアがゲシゲシと月詠司を踏みつぶす。
「ツカサ、それはセクハラのフラグか? あいかわらず、立てなくともよいフラグばかりゲットするのう」
 クロセル・ラインツァートたちが敵ではないと分かって、狼のゲリとフレキをなだめていたウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)が、呆れたように月詠司を見つめた。
「だから、まだ魔法少女に変身しておれば、同性としてそのような目にも遭わなかったのに……」
「も、問題の根本が……ち、違……う」
 シオン・エヴァンジェリウスのつぶやきに、それだけは嫌だ月詠司が呻いた。