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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
『小僧、諦めが悪いな』
まだまだー!!
 四度、荒人とミキストリが切り結んだ。
「ああ、やってるやってる。いい、サーシャ、そのまま天裂刀を射出して」
 戦いを追って駆けつけてきた伏見明子が、上空待機しているサーシャ・ブランカたちのラストホープに命じた。
『ちょっと待て、どうするつもりだ』
「いいから、つべこべ言わずに射出しなさい!」
 訳が分からないと聞き返すレヴィ・アガリアレプトを、伏見明子が怒鳴りつけた。
「もう、どうなっても知らないぜ。まさか、こいつを使って生身で戦おうってんじゃないだろうなあ」
 いやな想像をしつつ、レヴィ・アガリアレプトが、ラストホープに装備させていた天裂刀をミキストリにむかって射出した。
「あ、あの馬鹿、そっちじゃない!」
 伏見明子が叫んだが遅かった。
「何っ!?」
 突然上空から接近してきたイコンから、いきなり装備を投げつけられてミキストリがそれを避けた。普通、そんな攻撃は予想しない。
『そこかあ!』
 荒人の空裂刀が、ミキストリの右肩から袈裟斬りに機体へと食い込む。同時に、ミキストリのバインダーソードも、荒人の右脇腹に食い込んでいた。
『ここまでやるとはな』
『当然だ』
 離れることをせず、お互いさらに剣にパワーを込めていきながらアラバスターと紫月唯斗が言い合った。
極絶、森羅万象……。この一撃、受けて見ろ
 一歩も引かずに、紫月唯斗が荒人の持つ剣を下にむけて斬り下ろしていった。ミキストリの重装甲がゆっくりと斬り裂かれていく。だが、同時に、荒人の胴体も循環液を噴き出して崩壊寸前であった。
「あと一歩!」
 荒人の最後のパワーを上げる紫月唯斗を見て、エクス・シュペルティアがベルトを外してシートから立ちあがった。コックピットハッチを独断で強制排除する。
「プラチナム、手伝って! ここはお下がりくださいませ旦那様!!」
「よせ、まだ決着は……」
 なおも戦おうとする紫月唯斗を、エクス・シュペルティアが人の姿に戻ったプラチナム・アイゼンシルトと一緒に無理矢理外へと連れ出した。
 乗り手を失った荒人が横倒しに倒れる。だが、空裂刀に深々と斬り裂かれたミキストリも動いてはいない。
「ははははは、もらったあ。ただ働きの恨み、お・も・い・し・れーーー!!」
 地上に突き立っていた天裂刀を拾った伏見明子が、自動車投げの要領でそれをグルグルと振り回している。
 アナイアレーションの奥義を総動員して、伏見明子が天裂刀をミキストリにむかって投げつけた。
 乗り手がいなければ、イコンもただの人形だ。バリアのなくなった装甲に、深々と天裂刀が突き刺さった。その勢いで、ミキストリの機体がひっくり返る。いままでの防御力から考えると、なんともあっけなさすぎる。
「やったあ、この私がいけ好かない隊長をやっつけたわよ」
 伏見明子が勝ち誇る。
「やれやれ、勝っちゃったのかよ」
 意外だとレヴィ・アガリアレプトがちょっと呆れたときだった。
「うわ、サーシャ、前!」
 突然正面にイコンが現れて、ラストホープはあわてて回避した。
『このソピローテを引きずり出すとは、少し侮っていたか』
 その漆黒のイコンから、アラバスターの声が響き渡った。一目で玉霞をベースとしたイコンだということが分かるシルエットだ。頭部は鷲型のヘルメットのような意匠となっており、頭頂から背中を、腰近くまで黒いエネルギー体の鬣が被っている。
「やはり、玉霞を中に隠していたのか……」
 あまりにコンセプトの違う機体から、まさかと思っていた紫月唯斗であったが、予想は最悪の結果で当たってしまったようだ。ミキストリであったイコンの機体は、中身がすっぽりとなくなったがらんどうの状態で天裂刀に貫かれて倒れている。
 だが、紫月唯斗の荒人は、ただの着ぐるみであったミキストリと相討ちですでに戦闘不可能だった。
『お兄ちゃん、聞こえる!』
 失意に満ちた紫月唯斗の携帯に、紫月睡蓮が連絡を入れてきた。
「睡蓮か!?」
『もう、こんなの、私に扱えるわけないですー』
「いったい何を言って……」
 訳が分からない紫月唯斗の前に、突然イコンが現れて大地につんのめるようにして止まった。危なく巻き込まれそうになって、紫月唯斗が腕を組み合わせて防御姿勢をとる。
 玉霞をベースとしたイコンは、黒い機体に赤いマフラー、背部には九重にスラスターを広げた巨大なウェポンバインダーを装備していた。
「こ、これは絶影!? 完成したのか!」
「うーん、持ってくるの大変だったんだから。でも、お兄ちゃん、これ乗りこなせるの?」
 コックピットから這い出してきた紫月睡蓮が、紫月唯斗に訊ねた。
「やるしかないさ。俺はやってみせる」
 力強く、紫月唯斗が答えた。
「そうですね。おぬしならできるであろうよ」
 エクス・シュペルティアがうなずく。
「行きましょう、マスター。私を纏ってください」
 あわてて人間体に戻ったため、一糸纏わぬ姿のままのプラチナム・アイゼンシルトが言った。紫月唯斗の正面に立ち、そっとその両肩に手を載せる。ポニーテールにしていたプラチナブロンドの髪が解け、大きく広がってプラチナム・アイゼンシルトの裸体をおしつつんだ。そのまま光に解けるようにして、無数の白銀の糸と化したプラチナム・アイゼンシルトが、紫月唯斗に巻きついて魔鎧へと変化を遂げた。