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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

リアクション


【3】龍脈


 鉄拳が稲妻の如く人中に突き刺さる。
 倒れゆく目の前の拳士から視線を外し、背後から迫る気配に素早く意識を向ける。
 床を叩く靴音は複数。培った戦闘感覚がその距離を捕まえる。
 振り返り様に飛んでくる拳を掌で外し、すかさず蹴りを腹に叩き込む。
 ステッブを踏んでもう一方に回し蹴り。高きから低きに流れる水のようにしなやかな動きで拳士を吹き飛ばす。
 床に転がる黒楼館拳士を眺め、神崎 荒神(かんざき・こうじん)は言った。
「力を示せと言われたが、これでもう文句はないよな?」
 普段は休日に肉まんを売っている荒神。
 しかし裏では空京中華街の自警団のリーダーをしている。厳密に言えばリーダー『代理』であるが。
 本来のリーダーは今病院だ。黒楼館とことを構えてしまったため、謎の大怪我を負う羽目になってしまったのだ。
「これほどの実力があれば、我らは貴様を拒む理由はない」
「いいだろう、用心棒に使ってやる」
 見届け人を務める拳士たちは言った。
 ここは町外れにある黒楼館道場。
 荒神は黒楼館内部に潜入するため、用心棒の審査を受けていた……そして、どうやら審査は通ったようである。
「早速だが、貴様には儀式の警備を任せよう」
「儀式?」

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 黒楼館道場の奥にそびえる五重塔。
 その最上階では巨大なかがり火が炊かれ、足元には真っ赤なペンキでコンロン道術の紋様が描かれている。
「なにをおっ始めようってんだ……?」
 怪訝な表情で警備する荒神の傍を、毛布を被った女がすり抜けていった。
 先ほど愛美たちから逃がれることに成功した麗しき五大人カラクル・シーカーだ。
 それから世紀末的黄昏オーラを纏って覇王マリエルもやや遅れて合流した。
 彼女たちに気付くと、黒楼館の拳士たちはうやうやしく道を空けた。
「準備は整ったようだな」
「はっ、指示通り滞りなく準備は完了しております」
「宜しい」
 マリエルは炎を不思議そうに見上げた。
「……ほう、随分と大層な祭壇だな。なんなのだこれは?」
「龍脈というものを知っているか?」
「龍脈?」
「人体に気が流れているように大地にも気は流れている。その気が集まる……言わば大地の経絡にあたる地点が龍脈だ。古くコンロン風水術では気が都市の運気を左右し、正しく気が循環する都市は千年に渡り栄えると伝えられている」
 カラクルはかがり火に目をやる。
龍脈は土地の要だ。龍脈を制するものは、都市を制すると言ってもいいだろう
「その龍脈とやらはどこにあるんだ?」
 カラクルは一枚の地図を見せた。
 空京センター街、空京中央公園、空京スタジアム、空京中華街など数カ所が赤く塗り潰された地図だ。
「我らの調査でこれらの場所に龍脈が通っていることがわかった」
「ほう?」
「正確な龍脈の位置さえわかれば呪術は完成する」
 拳士たちは紋様を囲むと、呪文を唱えながら炎に両手をかざす。
 炎はまたたく間に真っ赤な赤色から、不気味にゆらめく真っ青な炎へと変貌した。
 するとかすかに足下が揺れた。鼓動のように一定の間隔で、大地は胎動を始めた。
「こいつはろくなことにならなそうだな……」
 荒神は目を細めた。
 それから見た目完全に薬丸さん(控えめな表現)及川 猛(おいかわ・たける)をよんだ。
「どないしたんや、兄貴?」
「ちょっと頼みがあるんだが、ひとっ走り中華街のマフィアにコンタクトとって貰えるか?」
「そいつは構わへんけど……」
「嫌な予感がするんだ。俺達も協力しないとまずい気がする。ほら黒楼館と対立してる万勇拳って一派がいるだろ?」
「ああ、中華街の」
「あいつらを支援してもらえないか、マフィアに頼んじゃくれないか」
「ううむ、しかし兄貴。中華系マフィアは様子見を決め込むつもりらしいで。黒楼館が自分らの利益になるかもってな」
「……はぁ? 正気か、あいつら?」
「悪党に期待しちゃいけやせんぜ、兄貴。でも、手ぇ貸してくれる心当たりならないことはないで」
「そうなのか?」
「黒楼館のせいで肩身狭なってる組織はぎょうさんおるんや、中央公園の森ガールやらスタジアムのちゃんこ屋とかな」
「森ガールとちゃんこ屋がどう力になるのかわからねぇが……まぁいい、そこはお前に任せるぜ」
 そういうと猛は頷いた。
「了解や。ほな、またあとで」