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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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 最後に、HMS・テメレーアが、その巨体をゲートから現出させる。
「空間安定。ニルヴァーナに到着しました」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが、ブリッジのクルーに告げた。
「では、本艦はこのまま水上の町アイールにあるキート・ヴァーンナにむかう。そこで主砲などの修理、及び救命艇の再接続を行った後、本隊に再合流する。時間は貴重だ、急ぐぞ。コース、0−0−0。テメレーア、最大船速!」
 ホレーショ・ネルソンの命令で、HMS・テメレーアがそのまま北へと進路をむける。アイールは再廻の大地を縦断した先にあり、かなりの距離がある。修理の時間も考えると、あまりのんびりしていては、本隊への合流が不可能になる恐れもあった。
 修理を行うのは、キート・ヴァーンナと呼ばれる大型の浮きドックで、もともとはクジラ型ギフトのメンテナンス用に作られたものだ。そちらの方へは、土佐に乗っていたエレナ・リューリクがHMS・テメレーア到着前に連絡を行い、受け入れ準備を整えてもらっている。
 鬼龍貴仁らも乗せたまま、伊勢の後を追う形でHMS・テメレーアはゲートを後にした。
 それからしばらくして、土佐がアイールとは反対方向にあるニルヴァーナ創世学園へとむかうために、南に進路をとって出発する。
 正確には、ニルヴァーナ創世学園そばに墜落したアディティラーヤに新設された湊川造船所が目的地である。そこのドックで、土佐の再接続を行う予定であった。
 
    ★    ★    ★
 
 空港に残ったレン・オズワルドとトマス・ファーニナルたちは、すぐにソルビトール・シャンフロウの行方を調べ始めた。
「ニルヴァーナ創世学園へのシャトルと、それ以外の飛空艇や車両のむかった先を確認したい」
 レン・オズワルドが、空港の管理室にかけ合ってデータを洗い出しにかかった。
 ニルヴァーナに着いた者は、たいていはまずニルヴァーナ創世学園へとむかう。そこが、一番発展している場所でもあるからだ。
 他の場所に用がある者たちは、ほぼ間違いなく北へとむかう。中継基地を経て、アイール、あるいはパラ実分校など、ほとんどの拠点は北にある。もし、それ以外の場所へとむかう者がいれば、それは直接的に何かの目的を持ってということになる。
 調査の結果では、シャトル以外では、北へとむかった複数の飛空艇が確認できた。ゴアドー島にいたため逸早く先行したエンライトメントが、その後を追って北へとむかっていることも確認する。
「北か。まだ、範囲が広すぎるな……」
 充分に絞りきれてはいないと、レン・オズワルドは他の者たちと情報のすりあわせにむかった。
 空港では、トマス・ファーニナルたちが、手分けして聞き込み調査を行っていた。
 すでに緋桜ケイたちが同様の聞き込みを行っていたため、思いの外早く敵の足取りが確認できた。だが、すぐに後を追いかけた緋桜ケイたちとは違って、何か見落としがあってはいけないと、より綿密に調査をする。いずれにしろ、敵がここを後にしてからかなり時間が経っている。ただ追いかけたとしても、追いつける可能性はまだ低かったのだ。
 職員たちと、監視カメラの映像から、ソルビトール・シャンフロウらしき男たちと落ち合う男たちの姿が確認されている。どうやら、こちらにも仲間がいて、迎えが来ていたらしい。
 そのまま飛空艇に乗り込むと、彼らは空港を後にしたようだ。
「ゲートに関しては、今のところ以前と変化はないようだぜ」
 主にゲートの環境について聞き込みを行ったテノーリオ・メイベアが言った。
「ふむ。現時点では、敵の狙いはこのゲートの占領や破壊ではないということですかな。もちろん、現時点での話ではありますが」
 魯粛子敬が、敵の目的を探るように考え込む。
「どうやら、飛空艇に乗り込んで移動したようなので、相応の行動範囲と人員を考慮に入れた方がよさそうです」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットが、最新版のニルヴァーナの地図を広げて、敵の目的地を探した。最新版とはいえ、まだまだニルヴァーナには未踏破の地域も多く、地図としては略図以上の意味はあまりない。
「聞き込みでは、敵が乗っていったのは、イコンの搭載も可能な大型飛空艇のようだ。これは、ちょっと危険だな。中継基地かニルヴァーナ創世学園を襲撃する可能性もある」
「それにしては、戦力不足の気もしますが。他に仲間がいないとも限りませんからな」
 トマス・ファーニナルの言葉に、魯粛子敬が考え込んだ。
「奴らが、その船に乗ったのであれば、間違いなく目的地は中継基地だな」
 艦の形状を確認して、レン・オズワルドが言った。該当する艦は、まっすぐに中継基地へとむかったと記録にある。だが、到着したかまでは不明であった。
「すぐに、中継基地の情報管理室へ確認をとってみよう」
 ネットワーク構築をアニス・パラスたちに任せた佐野和輝が、さっそくそのネットワークを通じて中継基地にある情報管理室のデータにアクセスしてみた。
 そこで初めて、緋桜ケイたちの得た情報が彼らにもたらされた。どうやら、こちらの空港での混乱から、情報がどこかで止まっていたらしい。
「遺跡ですか。当然、地図には載っていませんな。これは、エンライトメントからの情報待ちということになりますか。へたに動きすぎて、敵に察知されては逃げられる恐れがありますからな」
 地図を睨んで、魯粛子敬が言った。エンライトメントのむかったという方向から、西の方角だということまでは判明しているが、まだ目的地を確認できたわけでも、敵を発見できたわけでもない。
「エンライトメントとのデータリンクはこちらで確立しよう。どのみち、本隊が到着していないんだ。後手に回らない程度で、確認次第追撃を開始するのが無難だとは思う」
 独断専行は危険だと、佐野和輝が提案した。
「こちらにも、別戦力が存在すると分かったからな、敵イコン部隊や艦隊が出てくる危険もある。まずは戦力を整えよう」
 レン・オズワルドも同意する。
 だが、ここにそんな話をすべて聞いていて、聞く耳を持たない者がいた。
「そうか、敵の目的地は遺跡か。きっと、失われた超技術の産物があるに違いない。オリュンポス・パレスの修理代としてはやや少ないが、俺はそれで我慢してやろう。くっくくくく……」
 アニス・パラスの確立したデータリンクで、緋桜ケイの送ってきたデータをすべて閲覧したドクター・ハデスが、神剣勇者エクス・カリバーンのコックピットで、忍び笑いをもらした。
「ゆくぞ、聖剣勇者カリバーン。先行して、遺跡に一番乗りだ。なあに、それらしい場所に移動しておけば、そこに着くころには正確な位置は、我が下僕共が勝手に調べ上げてくれるさ。さあ、出発だ」
「了解した。ドクター・ハデス!」
 自信満々、肝心なところは他人任せ、漁夫の利を狙って、ドクター・ハデスが見切り発車を宣言した。素直に、聖剣勇者カリバーンがそれに従う。
 剣状の飛行形態に変形すると、神剣エクス・カリバーンは空を割いて飛んで行ってしまった。