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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

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「はあ……はあ……」
「どうした、もう息切れか? どれ、一思いに殺してやるから首を出すといい」
 息を切らすフリューネ、一方余裕を見せるファナティックは尚も衰えぬ殺意をもって言う。
「ふざけたことを……!」
「ファナティック……!」
 フリューネと共に戦い続けていたリネンとレンがファナティックの物言いに、闘志を漲らせる。
「いいの、二人とも。私は今とってもいい気分なんだから」
「……なに?」
 傷だらけのフリューネが笑う。
「ファナティック、あなたってば最高よ。ええ、ほんともう最高だわ」
 途端にファナティックを褒めだすフリューネ。
「ほう、気でも触れたか。これならば我が手を下すまでもない」
「……あなたは最高の道化よ」
「……貴様」
 ファナティックが喋る前にフリューネが制し、喋る。
「冥途の土産に、かっこいい勝ち方を教えてあげるわ。それはね……最後にぶちぬくのよ。圧倒的な不利を、絶対的な劣勢を!」
「―――――な、に?」
 ファナティックが見たもの。それは空賊の大群。
「ヘリワード! フェイミィ! よく来てくれたわ!」
「ちょっと手こずったけれど、あんたの部下たちはもう戦闘不能よ」
「あとはお前だけだぜ、ファナティック!」
 リネンが叫んだとおり、ヘリワードとフェイミィの姿があった。
 そして、【『シャーウッドの森』空賊団】が空を覆うかのように展開する。
 その数は、ハデスが用意したオリュンポス兵団の倍ほどに達する。
「こ、これでは如何に『優れた指揮官』や『要塞化』があろうと、【小型空中機雷】を設置していようと、こちらが不利ではないか!」
 ハデスの言うとおりだ。オリュンポス兵団も無傷なわけではない。
「……これが、かっこいい勝ち方とやらか。実にくだらんな」
「そうかもね。けど私はうずうずしてるのよ……やっとあんたを、叩きのめせるってね!」
「勝利までの過程なぞいらぬ! 結果こそ全て! そして我が勝つという結果は絶対に揺るがん!」
「そんな戯言は、辞世の句にでもして言ってなさい!」
 最後の戦闘が始まる。しかし、戦力差は歴然。確実にオリュンポス兵団は押され始める。
「くっ、もう長くは持たないか。ヘスティア! ペルセポネ! 撤退の準備をしておくのだ!」
「りょ、了解です!」
「は、はいです!」
 そう長くは持たないと判断したハデスが撤退の準備を始める最中、ファナティックへ一陣の風がぶち当たる。
「いらぬ風が紛れ込んだかっ!」
「あらあら、つれないじゃない? さしずめ、追い詰められた悪の親玉って感じだね」
 魔鎧・ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を身に纏い、
 ギフト・黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)はオーラとして立ち上り、
 吸血鬼・アリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)と【ユニオンリング】で合体した、
 その身を戦いに特化させた戦闘狂(バトルジャンキー)。
「ボクは風、君に敗北をもたらす風だよ」
 風・鳴神 裁(なるかみ・さい)がファナティックに襲い掛かる。
 既に言葉を置き去りに行動を開始。
 【パーソナルスラスターパック】と『卓越の運転術』をメインに空中を舞い、縦横無尽に駆け巡る。まるで風が空を行くように。
 更に自身の空賊たちと呼応しつつ、【レゾナント・ハイ】を使用。
 駄目押しに『武装細胞』を展開。その姿、オーラはもはや畏敬の念さえ抱かせる。
「この戦闘狂が!」
 機晶ユニットからレーザーが穿たれる。
 しかし、裁にあたることはない。自分にむりやり『グラビティコントロール』を使い、急停止して避けたのだ。
「お褒めに預かり、光栄だよ!」
 そして間合いを一気に詰め、前代未聞のレーザーをよける風がファナティックに襲い掛かる。
「ぐぅ!?」
 痛烈な一撃を何とか受けきるファナティック。だが、裁は止まらない。
「もう負けを認めるんだ! どうあがいてもこの人数には敵わない!」
 叫びながらも攻撃を止めない裁。対して、受けながらファナティックも負けじと言い返す。
「煩わしい風だ! 数など、我の前では無意味!」
「強い力には総じて強い反動がある! わかっているのか? そんな無理な力を続けていれば、ぼろぼろになるぞ!」
「貴様、さっきからなにを―――」
 次の瞬間、『覚醒』を使用しつつ裁の口から予想だにしない言葉がファナティックへと叫ばれる。
「あなたの……毛根が!」
「……はっ?」
 突拍子のなさすぎる発言に、さすがのファナティックも開いた口が塞がらない。
「絶望を届けに参りました! イッツ! ターイムコントロール!」
 覚醒状態の裁が『タイムコントロール』を使用した。
「ぐ、ぐおお、おおおおおおっ!?」
 苦痛の声と共にファナティックの体が一気に10年分の老化を辿る。
「さあ、禿げぇ……上がれええええええ!」
 特大の妄言を拳に乗せて、思い切りファナティックの顔面をぶち飛ばす。
 右ストレートと妄言を頂いたファナティックが吹っ飛ばされる。