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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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エピローグ

 契約者たちの総攻撃により、ルークは再生不能なほどに破壊され、操っていた光の老人も消滅した。アクリトは光の老人と契約者たちのやり取りから消滅までの映像をじっくりと検分していた。ヘクトルが憔悴しきった顔で遺跡に程近いアクリトの今回の拠点である喫茶店に入って来、正面のイスにどさっと座った。窓辺ではアピスがお祭りの片づけをはじめた、どこかうら寂しい気配を漂わせる広場の様子をじっと見つめていた。
「何かわかったか」
「概要にすぎないが……。どうやらパラミタ、ニルヴァーナに限らず全ての大陸を昔から光条世界は監視していたようだな。
 監視者を通し、ナラカ世界にある浮遊大陸に文明が生まれ、それが滅ぶまでの監視を行っていた。
 ソウルアベレイターであるドゥケの言葉から考えれば、その世界の文明の程度が光条世界にとって都合の悪いものとなった際に強制的に滅ぼすということもあるのだろう」
「世界の破壊と創造のコントロールか? ずいぶんうがった真似だな……」
「光条世界が何故そんな事をしているのか、執拗なまでに安定を求めるか……光条世界そのものの調査が必要だろう。
 ともあれ……あの老人、メーテウスと、メーテウスの口から語られた“ビアー”という者が、ニルヴァーナとパラミタを含む範囲を監視していたのだと考えられる。
 だが、どういう意図はわからんが、ニルヴァーナとパラミタについては光条世界に正しい情報を送っていなかったようだな」
「ほう?」
「古代ニルヴァーナの歴史でわかってきたこと、ドゥケからも似たような話を聞いたのだが……。
 光条世界の存在を知ることは禁忌、ある程度文明が発達し、干渉に気付くものが出れば滅ぼされているようだ。
 今回の監視者の二人は、何らかの理由でパラミタとニルヴァーナを滅びに至らぬよう、ある意味で保護していたといえるだろう。
 その一人、メーテウスは今回滅んだが、ビアーというものはまだ生きており、その意図もわからぬままだ。
 最初のうち二人は協力関係にあったのだろうが、ある時点でビアーはメーテウスの前から姿を消した。
 それが一体どういうことなのか……光条世界から寝返ったままなのか、そちらにやはりくみすることにしたのか……。
 あるいは独自の理由で動いているのか、現段階ではわからんな」
「あのでかいのの残骸はどうする?」
「現段階ではな……まあ、必要があれば各校と調査隊合同で調査研究、といった形になるだろう」
そのとき、アピスがこちらを振り向いた。
「呼ンデイル」
アピスは全身にかすかな光を帯びていた。街のスポーンたちも同様に淡い光輝を纏い、巨大光条兵器を安置した遺跡のほうを見つめている。レナトゥスもまた。
 微かな地鳴りのような音が響きはじめ、それは耳に聞こえる音とも違う、奇妙な規則正しい振動音となった。
「アクリト教授! 巨大光条兵器が光り始めました!」
モニターの一つが切り替わり、遺跡内の巨大光条兵器の安置された現場が映し出された。それは正視できないほどの光を帯び、やがて光の帯が上に向かってまっすぐに立ち上がった。
 不意にあのヴィジョンにあったのと同じ、無数のヴァルキリー達からなる光の軍勢が遺跡の上に無数に現れた。それを見るや突如ドゥケが舞い上がると、全身から強烈な光を発しながらそちらへ向かって飛んだ。飛びながらドゥケは遺跡にいる全てのものに聞こえる声で叫んだ。
「道は開かれた! 未来とは誰かが決めるものではない。運命もまたはなから決まったものでもない。
 数々の偶然や行動が、未来を作り、変えてゆくのだ。この先に何があろうとも、それだけは覚えておけ」
ドゥケの光は滅びの軍勢に突っ込み、軍勢は目もくらむような大爆発を起こした。その衝撃はニルヴァーナ大陸全土を揺るがし、湖中も嵐のように激しく荒れた。
 その際に放たれた衝撃波はナラカを渡り、後に遥か彼方のパラミタ大陸でも観測されたほどだった。
 
 このままニルヴァーナ大陸も崩れ去るのではないかというほどの地震と嵐が収まり、やがて静かになったとき、滅びの軍勢も、ドゥケの姿もどこにもなかった。空中には煌く塵が無数に舞い、湖面へ舞い落ちた光の塵は湖水のなかをゆっくりと煌きながら沈み、スポーンの街へと静かに降り注いだ。
 気付けば、ウゲンの姿もまた街から消えていた。
 
 
 数日後――――
 
 置いてけぼりをくらっていたガイアがパラ実分校校舎を引きずって、湖の回廊を通り南ニルヴァーナのバンシーのねぐらへ向かう姿を見送りながら、アクリトは独りごちた。
「ドゥケはその命を賭して軍勢を消滅させた。
 自身の世界(大陸)を失ったソウルアベレイターとは、長きを生きてゆくうちに奇妙な考え方を持つようだな……。
 彼は非常に合理的な世界の出身らしい……その最後は……実に興味深いものだ」
 永く、本当に永くナラカを彷徨った時間が彼らの思考を変化させていっているのだろうか。アクリトは、そこまで考えてから、空を見上げた。
 そこには、光条世界へと続いている筈の、様々な色彩の光が混じり合うゲートが、その存在を主張していた。

担当マスターより

▼担当マスター

鷺沼 聖子

▼マスターコメント

 こんにちは、鷺沼聖子です。
この夏は炎暑という言葉がぴったりの厳しい夏でしたね。9月半ばを過ぎ、ようやく一息と言ったところですが、夏の疲れが出やすい時期でもあります。体調にはくれぐれもお気をつけくださいませ。

 今回皆様の活躍で、ルークは斃れました。レナトゥスやアピス、スポーンたちもさらにヒトの心に近いものを得はじめ、光条世界への道も開かれました。今後の展開で光条世界からパラミタなどへの干渉をやめさせることができるか否か、と言った展開になってゆくでしょう。

またよろしかったら、私のシナリオにご参加いただけますと幸いです。