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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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「……えーっと、ここを曲がると……さっきの道につながる訳か」
 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は周囲を見回しつつ、紙に何かを書き込む。
 それは簡易的な地図であった。広い隔離区域をマッピングしているのである。
「想像以上に広い場所だな。マップくらい持っててくれよ」
 頭を掻きながらラルクが溢す。先ほど、看守の死体から通信機を手に入れる際にこの監獄島の内部図を持っていないかと探したのだが、残念ながら持っている者は居なかった。
 その代り他の場所で紙とペンを手に入れる事は出来たので、マッピングをしているわけである。最低限、自分がどこにいるかを把握しなくてはならないという考えからだ。
「……しかし、この服も慣れねぇなあ」
 ラルクはふと、自分の身体を見る。纏っているのは囚人用の衣類だ。監獄島に入れられる際、全員に着せられた物である。
 ある程度動き易くはあるのだが、どうも心地が悪い。
「だからと言って、なぁ……」
 ちらりとラルクは死体を見る。他にあるのは看守の服だ。だがわざわざ探して手に入れる程の物ではない。
「仕方ない、我慢するか」
 そう呟き、ラルクは周囲を警戒しつつ歩き出した――時だった。
「……悲鳴?」
 微かながら、悲鳴のような声が聞こえた気がした。

     * * *

「……ひでぇことしやがる」
 メルキアデス・ベルティ(めるきあです・べるてぃ)が吐き捨てるように呟いた。
 彼は今、監房に居た。監房も、タタリやマガツヒの仕業であろう死体が廊下と同じく転がっている。
 その死体から目を背ける様に、メルキアデスは監房内を探す。探しているのは、隠れる場所だ。
「……駄目だな、碌な場所がねぇ」
 メルキアデスが小さく溜息を吐いた。監房にはベッド程度しかなく、その下に隠れたとしても外から見たら一目瞭然であった。
「仕方ねぇ、か……」
 メルキアデスはそう言うと、転がっている死体に目を向ける。
 死体は看守、囚人と入り混じっている。逃げようとしたところを襲われたらしい背中を抉られた囚人や、武器を手に持ち応戦しようとした看守等の様子が窺える。
「わりぃ、ちょっと借りるぜ。できれば使う状況になって欲しくないんだけどな」
 そう言ってメルキアデスが看守の死体から警棒を取る。
「それと……すまねぇが、ちょっと手伝ってもらうぜ。いや俺様だってやりたかねぇんだぜ? こんなことやりたかねぇけど命かかってるんだわ」
 言い訳する様に言ってからメルキアデスは両手を合わせると、死体の脇から手を通し引き摺り始めた。

     * * *

「……一体これは何処に向かっているんだ?」
 ヴァンビーノ・スミス(ばんびーの・すみす)が少し苛立ったように言う。
「勿論出口ですよ。正しければこのままエレベーターシャフトまで向かえるはずです」
 富永 佐那(とみなが・さな)が振り返り答える。
 ヴァンビーノと佐那達が今居る場所は通気ダクトだ。現在エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)を先頭にし、ソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)、佐那、ヴァンビーノと並んで進んでいた。
 元々彼らは共に行動していたわけではないが、通気ダクトを伝うという考えが一緒であったため中で再会し、同行することになったのだ。
「そう言ってさっきからずっと似たような場所をグルグルと回っていないか?」
 だが先程からヴァンビーノの言う通り、ダクト内の通路をただぐるぐると回っているだけで目的地のエレベーターシャフトには一切近づいていなかった。
「わたくしもそう思うのですが……」
「おかしいですね、方向的にはあっていると思うのですが」
 エレナの言葉に佐那が顎に手を当てる。
(やれやれだ……こんなダクトを動き回るだなんて貴重な体験だというのに、紙と筆記用具が無い事がつくづく惜しいよ。何でさっきの部屋に置いてないんだ……全く……)
 ヴァンビーノが小さく舌打ちする。パートナーの長曽禰 ジェライザ・ローズ(ながそね・じぇらいざろーず)が居れば手分けして探す事も出来ただろうが(協力するかはわからないが)、流石に今回はよく探している暇もなかったのだ(それでもダクトに潜む為に入った部屋をざっと探しはしたのだが)。
「……佐那さん、何かいます」
 先頭のエレナが足を止め、前方の角を見据える。
「……僕の様にダクトに入っている仲間が居る、って展開は?」
 ヴァンビーノの言葉にエレナは首を横に振ると、【ディテクトエビル】に反応していることを説明する。
「何者かはわかりませんが、敵意がある事は確かです」
「ふむ……ソフィーチカ、御守りは持っていますか?」
 佐那の言葉に、ソフィアが「もちろん、ジナマーマ」と丸まったアルミホイルを自信ありげに見せてくる。
「む、それは一体なんだ?」
「これは先程医務室にあった狭心症用のニトロなんかの薬品を使って作った爆薬です。いざという時にはソフィーチカに使わせるように言ってるんですよ」
 ヴァンビーノの問いに佐那が答える。ちなみに佐那にその様な物を作る為の知識は無い。使う状況に陥らない事を祈るばかりである。少なくとも好転する事は無いのは確かなのだから。
「――皆さん、来ますよ!」
 気配に対して、エレナが身構えた。

――角から白い影が見えたのは、その直後であった。