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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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 同じころ。
 蒼空学園生ながら今回の事件に関わっていた湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)は、パートナーたちと共に、分校へとたどり着いていた。
 写楽斎の邪悪な計画の全貌を知る彼は、なんとしても悪を阻止しなければならなかった。
 志願者たちは、すでに宇宙へと飛び立っている。彼らが人工衛星と接触する10時間が勝負だ、と凶司は思った。志願者たちが作業を始めると、写楽斎は計画を実行する。宇宙空間で人工衛星を爆発させるだろう。爆破させるだけなら、ワンコールで終わる。ネットワークそのものを切断する必要もあった。
「いっけー!」
 もはやなりふり構っていられない。写楽斎そのものを丸ごと叩き潰すつもりで、彼は突撃を仕掛ける。
 まずは電算室を抑えることが優先だ。凶司は主な攻撃をパートナーたちに任せて、自分だけ進路を変えた。果たして無事にたどり着けるだろうか。
「出てきなさい、写楽斎!核を打ち上げ、あまつさえ反発する学生を始末しようとは、教育者にあるまじき行為!」
 パートナーのディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)は、分校へたどり着くなりパワードスーツ用の武装で正面の校舎を吹き飛ばす。元々老朽化が進んでおり、モヒカンたちにあらされ放題だった建造物は、あっけなく粉砕される。
 驚いた生徒たちが逃げ始め、代わりに分校の治安を守る決闘委員会のお面モヒカンたちがわらわらと登場する。
「何者だ!? 分校でのむやみな暴力行為は禁じられている!」
「あんたたちに用はないの! 写楽斎を出しなさい! それとも、匿うつもりなら、あんたたちも敵と認識するわよ!」
「ええい、構わん! お引取りいただけ!」
 ディミーアたちが何をしに着たのか理解していないお面モヒカンたちは、いっせいに彼女らに殺到してきた。
 迎撃網を突破しようと援護するのがエクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)だ。
「出て来い! シャラクサーイ!」
 大声で呼びかけながら、ありったけの武装とスキルを発動させた。とにかく注目をひきつける。その間に凶司が電算室へとたどり着き、爆発装置を停止させることができれば成功だ。敵を討ち損じても陽動としての役割ができればよかった。彼女らは、躊躇いもなく強行突破を試みる。
 防災訓練でテロリストたちが襲ってきたときよりも激しい戦いが始まり、大混乱になった。
「もしもーし、やっと電話つながったわ。何でこんなに不便なのよ。それとも居留守だったの? どうなっても知らないわよ」
 もう一人のパートナーセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)は、携帯端末から分校の責任者に電話をかけていた。殴りこみの件を予め知らせておこうと思っていたのだが、荒野では電波が届かなかったのだ。電話局や中継地点があったとしても、モヒカンたちに破壊されていて使い物にならなかった。ようやく電話が通じたのは、分校の敷地内に入ってからであった。
「コラー! なにやってんだ、お前たち!? こっちにまで攻撃の振動が伝わってきているぞ!」
 分校長室で舞花と相談していたシリウスは、電話口から怒って返事をしてくる。襲撃は予想していたが、分校の不良たちではなく蒼学生だったので驚いている様子。
「なんだか知らんがすぐにやめろ! こっちも反撃するぞ!」
 シリウスは、傍で護衛として控えているリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)に様子を見に行かせようとしているようだ。
「やあやあ。あなたが新校長? あんたのとこの写楽斎が何か企んでて、時間ないから殴り込むわ。証拠データは送っとくからフォローよろしく♪」
 セラフは事後報告で要点だけ伝えてデータを送信すると、端末の通信を切った。長話をするつもりも事情を口で説明するつもりもなかった。どこにいるのかわからない写楽斎を探して攻撃を開始する。
「ヒャッハーっと!」
「おやめなさい、あなたたち! モヒカンより乱暴なことになっておりますわ。ことと次第によっては怒りますわよ!」
 分校長にまで危害が加わるのを警戒して、リーブラがすぐさま駆けつけてきた。
「写楽斎出せー!」「シャラクサイでてこーい!」
 ディーミアとエクスが同時に叫びながら攻撃を継続する。
「早くつれてこないと、関係のない人たちまで巻き込むことになるわよ!」
 セラフは、リーブラに言った。
「写楽斎なら、地下教室へ連れて行かれたって聞いておりますけれども……」
 リーブラは、視線だけでシリウスにどうするつもりなのか伺った。
「データ来た。これ、事件の詳細」
 秘書のメルが、セラフから送られてきた伝聞をシリウスに見せる。
「……舞花、委員会のお面モヒカンを退かせろ。被害が拡大するだけだ」
 校長室の窓から様子を見ていたシリウスは、舞花に伝えた。委員会が総動員しているおかげで戦闘が激しくなっているのだ。彼らは、侵入者を追い返すべく全力攻撃を仕掛けている。使命感も時には邪魔だ。
「それがいいようですね」
 舞花は、頷いた。分校の混乱を未然に防ぐのが決闘委員会の役目なのだが、この殴りこみはどうも事情が違うらしい。
 彼女は、テレパシーを含む遠隔の意思疎通でお面モヒカンたちに伝達する。彼らは、特に事情も聞かずに、了承した。
「地下教室は、決闘委員会の管轄のはずだ。元凶の写楽斎を連れてきたほうがいいんじゃないのか?」
「……他の人物に手をつけないと、約束してくれるのでしたら」
 シリウスの提案に、舞花は少し考えてから答えた。
 今、地下教室には写楽斎が閉じ込められているだけでなく、ハカセと桃子、それに彼女らが事件解決の手伝いとして丁重に招いたドクター・ハデスまでがいる。その事情を舞花は知っていた。だが、シリウスは知らない。無用の誤解を避けたいし、やはりハカセと桃子は決闘委員会に置いておきたい。発見されて捕まったり殺されたりしないよう、意識していた。
「わかっている。何を見ても聞いてもオレは何も言わねえぜ。悪までも包み込んでやると決めたんだからな」
 シリウスは、了解した。実際、ここで舞花と押し問答していても仕方がないのだ。
「では、閉じ込めてある写楽斎さんをすぐに連れてきてください」
 舞花は、お面モヒカンの数人に伝えた。彼らは、指示に疑問を抱くこともなく大急ぎで地下教室の写楽斎の部屋へと向かった。そして、愕然とする。
「いません。逃げられたようです」
「なんですって!?」
 お面モヒカンからの報告に、舞花は悪い予感が当たったと少々落胆した。
 おかしい。そんなはずはないのだ。地下教室の警備の厳重さは、舞花も委員会活動の中で見学したので知っている。監禁してある生徒たちが逃げ出せないよう罠も張り巡らされているのだ。
 写楽斎の行動をある程度予想していた舞花は、地下教室周りの警備を強化していた。陰湿で凶悪な仕掛けを張り巡らせてあったため単独で突破するには、よほど力が突出していないといけない。写楽斎はそれほどの戦闘能力を持っているというのだろうか。
「付近に隠れていないか確認してください。私もそちらへ向かいます」
 舞花は、シリウスに簡単な別れを告げて分校長しつを飛び出した。そのまま、現場へと駆け出していく。
「オレも様子を見に行く。留守番していろよ」
 シリウスは秘書のメルに伝えると、舞花の後を追うことにした。