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第1回ジェイダス杯開幕!

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第1回ジェイダス杯開幕!

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第六章 炎と霧の舞踏曲

 そうこうするうちにレースは2周目へ。
「わ〜れら〜が学園長〜ロリッ娘えりざべーとのた〜めに〜♪」
 チェックポイント目前のオペラ座の前で、楽しげに珍妙な歌を口ずさんでいるのは、イルミンスールのアルビス・ヴォネガット(あるびす・う゛ぉねがっと)選手だ。脳天気な歌声に思わず頬も緩む…なんて言ってられないっ!
「着火!!!」
 突如、魔法で炎を生み出したアルビス選手。前方を走る選手に向かって、その炎を投げつけた?!
「俺の前を走るヤツは全員、火だるまにしてやるよ〜ん♪」
 無差別攻撃とも言えるアルビス選手の妨害を受けたのは、蒼空学園東重城亜矢子(ひがしじゅうじょう・あやこ)選手。
「きゃぁ、突然なんなんですのっ?!」
 ローブに火が付いた東重城選手の悲鳴が響き渡る。
「ひゃはは、燃えろ、燃えろ、真っ赤に燃えろぉ〜♪ 優勝はいただきだぜぃ♪」
 どうやらアルビス選手、どんな台詞も節を付けて歌うのがクセのようだ。しかし、陽気な歌声とは裏腹に行動は姑息だ。
 次にアルビス選手が放つ炎の餌食となったのは、蒼空学園の結城大介(ゆうき・だいすけ)選手。
「運転ミスって事故っても困るし、安全に、安全に……って、あっちぃ〜いっ!」
「ひゃはは、アイツもコイツもコンガリ、カラッと♪ フライ・ド・マンのできあがりぃ♪」
 楽しげに歌い、踊るアルビス選手〜。結城選手はうつむいたまま、何か作戦を考えているのか、こめかみに手を当てている。
「できれば穏便に…って無理かな?」
 すると突然、結城選手がかけていた眼鏡を投げ捨てたぁ〜〜〜! これは何かの前兆か?!!
「テメェッ! やってくれたな!」
 穏和な好青年から一変。カルスノウトを抜き放つと、鬼神の如く形相でアルビス選手に躍りかかるっ。
「げげっ、コイツ!反撃してきやがった!」
 慌てたのはウィザードであるアルビス選手だ。セイバーの結城選手に肉弾戦を持ちかけられては手も足も出ない。
「逃げるが勝ち」とばかりに空飛ぶ箒を加速するアルビス選手。
「待ちやがれ、卑怯者!」
「お〜れがぁ、か〜んたんにやられると思うなよぉ♪」
 そう言うや否や、アルビス選手。なんと自分が着ていたローブに火を付けたぁ!
 まさかの自爆?!と思いきや…。
「キャストオフ♪」
 燃え上がるローブを脱ぎ捨てたアルビス選手。ヒラリと空を舞ったローブは、猛然と追いかけてくる結城選手に向かって飛んでいっくぅ〜〜。
 だが、結城選手も負けてはいないぞ。
「やられるかよっ!」
 上段に構えたカルスノウトを振り下ろすと、眼前に迫ったローブを真っ二つに切り裂いた!
 二つに分かれたローブは、後方からやってくる新たな選手達に襲いかかる。
「危ないっ、リアトリス! 避けてくださいっ!」
 いち早く危機を察したのはドラゴニュートのパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)選手だ。
「まっかせて〜」
 バルマローザ選手の警告に、にこりと爽やかな笑みで応えたのは、蒼空学園のリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)。ヒラリと宙に身を躍らせると、華麗なるバク宙でローブの直撃を避ける。体勢を乱すことなく着地をすると、すかさず両手を挙げてポーズを決める。これは何とも美しい演技。芸術点として10ポイントを追加だぞ。


 アルビス選手の暴走で、混迷を極めた学者通りを避け「蒼い月の市場」へと進路を取ったのは、薔薇の学舎藍澤黎(あいざわ・れい)選手だ。
 オベラ座の向かいにある蒼い月の市場は、食料から各種生活用品までそろう地元タシガン市民にとって台所とも言える場所。薔薇の学舎からも近いこともあり、藍澤選手もよく利用しているのだろう。細く込み入った路地もなんのその。愛馬のイフィイを駆り軽快な走りを見せている。身にまとっている白いマントと制服は、霧に紛れて行動するために、特別に仕立て上げたものだ。銀の髪を持つ藍澤選手にとって、この深き霧はこの上ない隠れ蓑だ。
「くだらぬ行動で目立とうとする奴らの気が知れぬ。我は我の道をゆくのみ」
 後を追う者はいない。白い外套を翻した藍澤選手は、薔薇の学舎へと愛馬のイフィイを走らせた。


 その頃、チェックポイントである薔薇の学舎前では…。
 またもや鈴生りに並べ奉られた等身大ジェイダス様フィギアを前に、通過者達は頭を抱えていた。
「やっぱりあれ、持っていかなくてはならないのですよね…」
「通過の証があれじゃぁ、100万G相当っていう優勝賞品も期待できねぇよなぁ…」
 如何にもイヤそうに顔をしかめていたのは、輝晶姫のルナ・テュリン(るな・てゅりん)選手と蒼空学園の永夷 零(ながい・ぜろ)選手だ。事前に綿密な吸血鬼対策を立ててきた風森巽(かぜもり・たつみ)選手と、パートナーである剣の花嫁ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)選手も同様だ。
 特に吸血鬼との乱戦を期待していたティア選手は不満を隠せない。
「吸血鬼がそろって、参加者を大歓迎なんてありえないよ〜」
「結果として無駄な戦闘を避けられたんだ。良かったじゃないか」
 淡々とした風森選手に窘められたティア選手は口を尖らせた。
「キミだって磨きあげた剣技を披露できるって、喜んでいたくせにぃ。どうせなら、あのジェイダス人形。全部ぶちこわしてみる?」
 物騒な相談を持ちかけるティア選手。これは強制リタイアにも為りうる問題発言?!
「あんなもんは燃やしちまえばいいのさぁ〜♪」
 そう言ってティア選手に同意を示したのは、先ほどの火祭り男、アルビス選手だ。これは何やら不穏な空気が漂ってきたぞ。
「わ〜れらが望むのは、ロリッ娘学長エリザヴェェェ〜トの等身大フィギアのみ〜と♪」
 胡散臭い歌とともに、火の玉を作り上げたアルビス選手。大きくフォームを構えると、ジェイダス様フィギアに向けて投げつけた?!
「灰になるまで燃やしつくせぇ♪」
 たちまち炎に包まれるジェイダス様フィギア。これは大会運営にもかかわる問題行動だぞ。警備隊、すぐに現場に急行だぁ〜! 放火魔を取り押さえろ!
「うぉ〜っ、すっげ〜!!!!」
「アイツ、やるじゃねぇか!」
「炎の勇者、登場ですわ!」
「助かったぁ…」
 ………………あれ…なんだか歓声があがっている…気がする…ぞ?
 もしかして、皆さん…通過の証がジェイダス様の等身大フィギアだったってこと、ものすごく不満に思ってた?!