天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション公開中!

紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション

「これ、宝か?」
「そのようですね」
 掘り当てた銀色の宝箱を、神楽坂翡翠が持ち上げる。鍵がかかっているようだ。
 神楽坂翡翠は一瞬鍵穴を見るや、開け方を知っていたかのように軽々と開錠した。
「さすが、専門。開けるの早いな?」
 レイス・アデレイドの言葉に、神楽坂翡翠が微笑む。
「宝は……黒い羽根ペンですね。どうぞ」
「しっかし、上手い話には裏があるって、本当だよな〜疲れた」
 羽ペンを受け取りつつ、レイス・アデレイドが、うーんと伸びをした。
「……あれ、これは……」
 銀の宝箱の底から、神楽坂翡翠が、古びた布を取り出した。
「ボロ布か!」
「届けに行きましょう」
 神楽坂翡翠は四方天唯乃達に軽く会釈して、イルミンスール魔法学校を目指す。
「やったぁ、二つめの宝箱っ!」
 それに気づかぬまま、紙象が見つけた宝箱に喜ぶシィリアン・イングロール。
「私の分も開けていいわよ」
「本当!?」
 四方天唯乃の言葉にシィリアン・イングロールは瞳を輝かせる。
 そしてゆっくりと宝箱を開いた。
 中身は、ライトだった。
「さっきは健康ドリンク、今度はこれ……変なお年玉ね」
「でも、嬉しいよ!」
 シィリアン・イングロールが微笑む。
「シリィが喜んでるなら、これでもいいかな」
 四方天唯乃が優しく微笑み、シィリアン・イングロールの頭を撫でた。

「宝箱見つけました!」
 魔物のいなくなった荒野で、紙熊の示した位置を掘り返したソア・ウェンボリスは、嬉しそうに笑う。
「ケイ、どうですか?」
 宝箱を抱え、近くで宝箱を掘った緋桜ケイ達のもとへ。
「俺達も見つけたぜ!」
「何が入っているのだろうな」
 瞳を輝かせる緋桜ケイと悠久ノカナタ。三人は一斉に、宝箱を開いた。
「おっ、これは!」
「ステキです!」
 緋桜ケイの宝箱には温かみのある杖、ソア・ウェンボリスの宝箱には紙ペットと仲良くなれる本が入っていた。
「おぬし達によく似ておるな」
 手に入れた宝を手に悠久ノカナタが、八体の紙ドラゴンに呼びかける。
 彼女の手には、額縁に入った竜を象った切り絵が、握られていた。

 宝を探し終えた【イルミンお宝鑑定団】のメンバーはブルーシートを広げ、くつろいでいた。
 一人【光学迷彩】を使用しているデューイ・ホプキンスだけが、警戒に当たっていた。周囲にたくさんの宝箱の空箱が転がっている。
「どうぞ、お弁当です」
 ホワイト・カラーが持っていたバスケットの中身を取り出した。
 サンドイッチ、おにぎり、鳥の唐揚げ。大きな水筒もある。
「私もおかずを作ってきました。よかったら、どうぞ」
 シェイド・クレインが重箱を広げる。
 中身は、ちくわの磯辺焼、若鶏の照り焼き、こんにゃくの煮物、かぼちゃの煮物、酢ハス、しば漬け、揚げ出し豆腐。
 多種類のおかずが重箱にぎっしりと詰められている。
「食後のデザートは私が」
 ギルガメシュ・ウルクが差し出した箱の中には、人数分のチョコレートケーキが詰まっていた。
「自分が取り分けるよ」
 紙皿と割り箸を取り出し、ケイラ・ジェシータが全員に告げる。
「よろしくお願いします」
 シェイド・クレインが頭を下げる。
「はい、どうぞ」
 ケイラ・ジェシータは、素早くおかずと主食とケーキを全員分取り分け、配った。
「ありがと〜」
 ミレイユ・グリシャムがにっこり笑い、紙皿を受け取った。
「ホワイトさん、ギルガメシュさん、ありがとうございます」
 シェイド・クレインは礼を言いながら、鶏の唐揚げを口にした。
「どれもいい味だな」
 レン・オズワルドが満足げに頷いて、おかずを口に運ぶ。
「おいしいであります!」
 ルナール・フラームが、皿まで食べる勢いで食事をする。
「……美味かった」
 いつの間にか見張りを交代したデューイ・ホプキンスが、ギルガメシュ・ウルクとホワイト・カラーに礼を述べた。
 各々、食事をとりつつ会話を交わしていると、エル・ウィンドが立ち上がってメンバーを見渡した。
「さてさて、腹も満ちたことだし、宝お披露目大会だぜ!」
 彼の声に応じ、シートの上に得た宝が広げられた。
 エル・ウィンド達は、金の扇子・人形用ウエディングドレス・金の王冠。
 ウィルネスト・アーカイヴス達は、炎の魔法書・日本米一キロ・ライター。
 ミレイユ・グリシャム達は、黒豹柄の靴下・双眼鏡・工作用紙。
 レン・オズワルドは夜汽車プラモデル・プラネタリウム入場券・ネクタイ。
 ケイラ・ジェシータは、まくら・菜箸・テント。
 宝の品評会が、幕を開けた。

 一方、一つ宝を奪った四条輪廻がアリス・ミゼルと、湖畔を歩いていた。
「……あった!」
 紙カメレオンが舌で一点を示した。
「掘りますっ!」
 アリス・ミゼルがスコップで土を掘り返す。
 すぐに宝箱が姿を現した。四条輪廻が中身を取り出す。
「……メガネ?」
 二つ目の宝箱の中身は、メガネのフレームだ。
「宝探しと争奪、終了……か」
 ふう、と息をつく。彼も、宝探しをしていたメンバーも、疲労感と満足感に満ちていた。