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機械達の逃避行

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機械達の逃避行

リアクション

「先生、ちょっと一緒に来てください!」
 解決の糸口を見つけたことで、満足そうに頷いていた起木保の手が、強引に引っ張られる。
「な、なんだ!・」
 手を引くのは、茶色の髪を揺らして走る、遠野 歌菜(とおの・かな)
 本人の了承を得ぬまま、彼女は起木保を引きずり、蛇行を続けるバッサイーンへと向かっていく。
「ちょっとだけ手荒ですけど……凍って止まっちゃいなさ〜い!!」
 言って【アルティマ・トゥーレ】を発動。バッサイーンの足元が氷結する。
「先生! 何かおかしいところがないか、見てください!」
 引きずられて眼を白黒させている起木保を、遠野歌菜が振り返ったその時、ノコギリを振るったバッサイーンが氷を砕いて逃げ出した。
「あっ……!」
「もう、大人しく捕まってくれないの?」
 頬を膨らめる遠野歌菜。と、背後でミサイルの破裂音。相殺されるミサイルが、爆風を生む。
「先生! 何か分かりました?」
 風の音に負けぬよう大声で遠野歌菜が呼びかける。
「うーん、そうだな……」
 立ち上がりつつ、起木保は腕を組んだ。
「バッサイーンは特にいつもと変わらないような……あ」
 ぽん、と手を叩き、得意げに微笑む養護教諭。
「ノコギリに、糸みたいなものがついていたかもしれない」
「糸、ですか?」
 思いがけぬ言葉に眉をひそめる遠野歌菜。しかし、起木保は怏々に頷く。
「ああ、間違いない。しかし、あの糸、どこかで――」
「バッサイーンのノコギリについている糸は、白雪が来ている服と同じものだ」
「分析の結果、あの糸は白雪の服と同成分であることが分かりました!」
 ヴァル・ゴライオンと島村幸が叫んだ。
「幸姐さん!」
 遠野歌菜が島村幸を見つけ、手を振る。島村幸も満面の笑みを浮かべ、手を振り返した。
「あのノコギリが白雪の服を裂いたのかもしれんな」
「その可能性は高いですね」
 ヴァル・ゴライオンの考えに、島村幸が頷く。
 と、ミサイルが飛んできた。白雪と対峙しているメンバーが撃墜し損ねたのか、バッサイーンの背後、起木保へとまっすぐ飛んでくる。
「先生、危ないっ!」
「センセ!」
 起木保が、黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)に突き飛ばされ、日比谷皐月のタワーシールドによって護られる。
「気をつけろよ、センセ。油断してると、痛い目みるぞ」
「ああ……」
 爆風を受けて身を固くしながら、日比谷皐月に応える起木保。
 黒脛巾にゃん丸は、そんな養護教諭を振り返った。
「先生! いずれ白雪には逃げられるとは思ってたけど……バッサイーンまでとはねぇ」
 苦笑する彼に、起木保も苦い笑みを返すしかない。
「一体何やったんですか! ……え? 股間にドリルつけた?」
「いやいや! そんなことは断じてしていない!」
 ぶんぶんと勢いよく起木保が首を振る。
「バッサイーンに喋る機能つけて白雪と口喧嘩したとか……」
「やってない!」
 全力で否定する起木保を、疑いの眼で見つめる黒脛巾にゃん丸。
 その間にも、ミサイルがはじける音が響く。
「これじゃ、先生の行く先々の都市が壊滅だ……。ハッ!」
 黒脛巾にゃん丸は、起木保を上から下まで眺め、顔面蒼白となった。
「まさか……先生こそが世界のラスボス!?」
「そんなわけないだろう!」
 高速で首を振り、起木保が否定する。黒脛巾にゃん丸の深刻そうな表情が、笑みに変わる。
「うん、違うって知ってる」
「……おい」
「冗談はさておき、行きましょう!」
 駆け出す黒脛巾にゃん丸にため息をつきつつ、起木保も続いた。
 起木保達の背後に、ミサイルの嵐。火炎放射機が唸る。
「ケイ、俺の後に続け!」
「了解!」
 鬼一法眼は【ヒロイックアサルト】の「神通力」を使用。身体能力を強化して爆風に備える。
 飛んでくるミサイルに向け乾坤一擲の剣を構え、飛び上がる。
「俺様も協力するぜ!」
 雪国ベアも【ディフェンスシフト】で防御力を上げ、攻撃に備える。
「これで……」
 緋桜ケイは、全英の二人に防御を任せ、集中。【ヒロイックアサルト】の「神通力」により、魔力を強化。
 更に黒薔薇の銃で白雪を狙う。
「先生、暴走する前と後で、雪さんの変わったところはありまえんか?」
 魔法を唱えようと白雪に視線を向けつつ、ソア・ウェンボリスが起木保に問いかける。
「……そうだな」
 起木保は眼鏡を外して眼をこすり、眼鏡をかけなおして目を細めた。
「そういえば……」
 今見た物と過去を比べて、言葉を紡ぎだす。
「白雪の眼の色が赤くなっているようだな。煙も出ているし……服が破けているようにも見える……」
「服が破けて、怒っているんでしょうか……?」
「恐らく服を破いたのは、バッサイーン……やはり、バッサイーンが事の原因のようだな」
 ヴァル・ゴライオンが重々しく頷いた。