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【学校紹介】イコンシミュレーター

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【学校紹介】イコンシミュレーター
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エピローグ

 ――天御柱学院学生食堂に重々しく併設された一角。
 そこへ通された蒼空学園チームの一行。
 まず目に飛び込んできたのは、つい今朝がた海京沖合で一本釣りされた、巨大なパラミタマグロ(推定1200キロ)であった。
「凄ええええええ!!」
 絶叫する一同。
 さらに、中央に屹立するマグロを囲むように作られた、半径20メートルはあろうかという円形のカウンター。その中には、マグロ職人というマグロ職人がみっちりと詰め込まれ、腹を空かせた勝利チームの胃袋を、手ぐすね引いて待ち構えている。
 この訓練の総合スポンサーは蒼空学園校長室というから、さもありなん。
「へい! らっしぇい!」
 祭りの開始を告げる職人の声が、生徒たちの頭のネジを1秒で吹っ飛ばした。

「いぃぃいやっっっほう!」
 我先にとマグロの海にダイブする生徒達。
 やはり人が押し寄せるのは寿司コーナー。
 見ただけで何もかも溶かしてしまいそうな大トロが、熟練の職人の手によって次々と握られてゆく。薬味も多彩だ。ワサビ醤油は基本として、あさつきにもみじおろし、刻んだ山芋などというものもあり、単調になりがちな脂を飽きさせずに食させる。
 赤身もいい。分かっている者はトロよりも赤身に向かう。こちらはマグロの本質を味わうには最高の部位だ。口に入れると、旬の魚のうまみが濃い。ごくりと喉を通過するときに、爽やかな酸味と甘みが、余韻となって残る。これこそ、マグロだ。ヅケも用意してあり、持ち帰っても構わない。
 そして究極、大トロ中トロ赤身中落ちの、必殺4色鉄火丼。これを食わずしてパラミタマグロは語れない。その破壊力は、飢えた獣のような生徒たちの食欲を、一口で天国行きの切符へ変える。

 刺身は苦手だという生徒のために、超特製のマグロステーキも用意された。
 とれとれのカマとホホ肉を贅沢に使用した一品。口に入れると、魚の繊維がほろりとほどけ、あたかも最高級の牛肉のような味わいだ。噛めば熱々の肉の隙間から、狂おしく脂があふれ出す。特にカマ下の部分は稀少、かつ最高にうまみが凝縮されている部分だ。まだじゅうじゅうと湯気を上げるそれを、大根おろしと葱のソースでいただけば、もはや言葉など意味をなさない。おおマグロ。ああマグロ。腹減りしものよ、そなたは幸いである。

 ――すべてが終わった。

 この世界には今も争いが続いている。
 明日になれば、再び我々は、正義のため、愛する者のために戦うだろう。
 しかし、今は、今だけは、この喜びに浸っていたい。
 そして、この世で最もうまい生き物に、感謝を。


 ◇


 見上げた先にあるのは、――何もない。
 何も見えない。
 目の前にある「これ」は、こんなにも巨大だというのに。
 どんどん視線を上に持っていくと、それは途中で雲を突き抜け、遙か上空にある大陸の底あたりから――望遠鏡の世話にならないといけなくなる。
 天御柱の生徒たちは、絶望感で頭がくらくらし始めた。
「罰ゲームだからな。きちんとやってもらうぞ」
 見れば、学院で普段のイコン搭乗訓練を受け持っている教官達がずらりと居並んでいる。
 誰かが、教官の後ろにあるものに気付いた。
「あれ、……イコン?」
 その通り。
 教官達は、人数分のイコンを用意していたのだ。

「よく聞け、ヒヨッコども。俺たちは優しくないからな、今から訓練の続きをしてもらう」
「訓練の続き?」
「そうだ。イコンのマニピュレータを見るがいい」
 イーグリットとコームラント、それぞれのマニピュレータは、雑巾とモップになっていた。
「……!!」
 驚く生徒達。こんなアタッチメントがあったのか。いったいいつ使うんだ。
「今しかないだろう。よし、全員搭乗! ぼやぼやするな!」

 ――多くの生徒は、まあ生身の体でやるよりはマシかもしれない、と思っていたが、これが厳しい。
 エレベータ表面を、まずはモップで埃をはらい、それを雑巾で拭いていく。適当にやっていては、誰がどこまで作業したか分からなくなったり、ガラスを傷つけたりしてしまう。それもホバリングしながらとなると、一瞬も気を緩めることが出来ない。
「これ――ものすごい良い訓練になるな」
 その言葉に教官が頷く。
「気付いたか。その通りだ。殆どガラスの、しかも垂直に近い表面を磨く行為。マニピュレータ操作、空中姿勢制御、パートナーとの意思疎通、さらには連携に至るまで、あらゆる要素が鍛えられる。天沼矛清掃にこそ、イコン操作の精髄があると言っても過言ではないのだ。これが終わるころには、お前たちはまるで別人のような技術を手に入れていることだろう。誰が考えたのか知らんがな」
 そう言って笑う教官。
「……!」
 感極まって涙を流す生徒もいる。
「ようし、解説は終わりだ! 次の訓練は勝ってやろうじゃねえか!」
「了解!」

 そうして天御柱学院の面々は、瞳に炎を宿らせて、次々とエレベータに向けてブースターを吹かしていった。
 ――明日のエースパイロットを目指して!

担当マスターより

▼担当マスター

牧村 羊

▼マスターコメント

はじめましてこんにちは。牧村羊でございます。
のっけから遅れてしまいまして、申し訳ありません。
みなさんの面白たのしいアクションをどう生かすか、悩み喜ぶ日々でありました。
また次のシナリオでお目にかかれれば幸いであります。
ご参加有り難うございました!