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夏だ!祭りだ!喧嘩神輿だ!

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夏だ!祭りだ!喧嘩神輿だ!

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第2章 夏だ! 祭だ! 喧嘩御輿だ!

「喧嘩御輿、楽しみだな」

 宙野 たまき(そらの・たまき)は、喧嘩御輿のために祭の会場にやってきた。とはいっても、彼は喧嘩御輿に参加するつもりはない。

「外から見てるのが一番楽しいのさ」

 そう、外野で見学するのが目的なのだ。

「今日の祭の目玉は喧嘩御輿だよー! パンフレットをどうぞー!」

 出店を見て回っていたたまきの耳に、元気な女の子の声がきこえてきた。声をした方を見ると、実行委員として祭に関わっている三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)がパンフレットを配っていた。たまきも一部もらうことにする。

「どれどれ、出場チーム一覧はっと……」

 たまきは早速喧嘩御輿のページを見る。

「お、うちの学校からもエントリーしてるチームがあるぞ。よし、ここを応援しよう」

天御柱学院所属のたまきは、【プレジデント・ミコーシ】をひいきにすることにした。
 そのとき、間もなく喧嘩御輿が始まることを告げるアナウンスが鳴った。たまきは出店で食べ物を買うと、足早に会場へと向かった。


【武術部神輿】VS【みんなの教導団】

「まずは、【武術部神輿】と【みんなの教導団】が相対するようです」

 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、ビデオカメラ片手にレポーター役を務めていた。

「世界樹イルミンスールをモチーフとした御輿と、戦車に見立てた御輿。両者とも、学校を背負っての出場と言えますね。さあ、早速始まりますよ!」

「ヒャッハー! お前達、担いで担いで担ぎまくれ! 武術部神輿だ!」

 マイトが【武術部神輿】の音頭を取る。

「おーらがんばれー♪ うひゃひゃひゃひゃ(≧3≦)」

 例の兜を被り、足袋にサラシ、赤いハッピをオシャレに着崩したメトロは、神輿の上でアクロバティックに跳ね回った。

「俺の入っとる武術部も神輿出しとったんやな! 幽霊部員だから知らんかったわ。マイト部長〜! 頑張れや〜! 参加せんでスマンかった!」

 観客席から、日下部 社(くさかべ・やしろ)の声援が飛ぶ。

 先に仕掛けたのは武術部だった。

「攻撃あるのみだぜ!」

 紗月が、敵の御輿に突進していく。風次郎とパートナーの仙國 伐折羅(せんごく・ばざら)がこれを受け止めた。二人はドラゴンアーツを使いながら、しっかりと御輿を支えていた。

「武術部のみんなは血の気が多そうだし、喧嘩っぽいことは他に任せて俺はサポートをしよう」

 相田 なぶら(あいだ・なぶら)は、バランスの悪そうなところがあるとバーストダッシュで駆けつけ、すぐさまそこを支える。月谷 要(つきたに・かなめ)ルーフェリア・ティンダロス(るーふぇりあ・てぃんだろす)も、興奮を必死に抑えて周りにペースを会わせるよう努めた。
 武術部のメンバーは、攻守の役割分担がうまくできていた。

「決して気持ちで負けるではないぞ!」

 一方、教導団の先頭に立った一夢庵 ひょっとこ斎(いちむあん・ひょっとこさい)は、バットをタワーシールドに打ちつけ、激しく味方を鼓舞していた。

「そのとおり。喧嘩なんてものは、気持ちの強い方が勝ち残る。日々厳しい訓練に耐えている教導団の力を見せるのだ!」
 
 伐折羅も相手の勢いに飲み込まれることはない。
 
「すごい迫力だなあ」

 双眼鏡を覗き込んだ本山 凪(もとやま・なぎ)は、思わずそう漏らした。
 彼は出店で買った焼きそばを頬張りながら、会場とは少し離れた見晴らしのいい場所で喧嘩御輿を見学していた。

「お、これは」
 
 凪が身を乗り出す。膠着状態だった喧嘩御輿に動きがあったのだ。

「く、俺たちはまだまだいけるが……御輿の装甲がはがれ始めたな」

 風次郎が渋い表情を浮かべる。ひび割れた装甲板をはんだ付けした程度では、耐久性に問題があったようだ。

「原、なんとかなりそうか?」

「やれるだけのことはやってみるさ」

 風次郎の問いかけに、原 萌生(はら・もえにいきる)が答えた。
 アーティフィサーである彼は、今までも御輿を担ぐ傍ら随時損傷部分の修理を行っていた。しかし、とうとう修理が追いつかなくなってきたのだ。

「ねえ、相手の御輿をぶっ壊してきちゃだめなの?」

 萌生に連れられて喧嘩御輿に参加していた切裂木 浮螺(きりさき・ふら)が、サイコキネシスで御輿を支えながら言う。

「それは駄目だ。喧嘩御輿は御輿同士をぶつけ合う競技。御輿に直接攻撃を行うなど、フェアではないであろう」

「ちぇ」

 萌生の言葉に、浮螺は不満そうな顔をした。

「しょうがないなあ。このままじゃどうせ御輿が壊れちゃうし、萌生は修理に専念してよ」

「……そうだな。頼んだぞ」

 萌生は一か八か御輿を支えるのを浮螺に任せて、全力で修理に当たった。しかし、担ぎ手が一人減るのは大きい。程なくして教導団の御輿は倒れ、破損した。

「くそ! 関羽様に顔向けできないじゃないか!」

 トマスが悔しそうに地面を叩く。

「私たしが全力を尽くしたこと、きっと関羽様なら分かってくださいます」

 そんなトマスを、子敬が慰めた。

「いやあ、面白かった。帰ったらランディに色々話してやろう」

 凪は祭に来られなかったパートナーのことを考え、デザートのチョコバナナに手を伸ばした。

 【武術部神輿】VS【みんなの教導団】の勝負、は、【武術部神輿】の勝利に終わった。