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三幕【ロマンティック・ナイト?】

[一場・夕焼けと夜桜と、宴の後始末]


 すっかり日も落ち、公園に設置されている提灯には光術の明かりが入った。
 しかし宴は終わる気配も無く、むしろ一層の盛り上がりを見せている。

 そんな公園の上空をふわふわと横切る二人乗りのグリフォンが一匹。
「もう、麻羅がこんな時間まで寝てるからぁー。もう人でいっぱいじゃない」
 後に乗る水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)が、グリフォンを駆る天津 麻羅(あまつ・まら)の背中をぺしぺしと叩きながら文句を付ける。
 が、麻羅の方は意に介さずと言った様子で、
「ほれ、下は人がいっぱいで桜を観るのも大変じゃが、こうして上から見下ろせば、綺麗な桜の絨毯じゃろ?」
と嘯く。言われて緋雨も改めて眼下を見渡して、おお、と溜息を吐く。
「確かに……麻羅ってたまにずる賢…じゃなく冴えてるわ〜」
 くすくす笑いながら緋雨はゆっくりと桜の絨毯を見下ろす。光術でライトアップされている桜の木々の隙間から、宴会を楽しむ人々の姿が見える。
「こういうのも、悪くないわね」
「じゃろう?」
 二人はそのまま、気の済むまで空からの花見を楽しむのだった。

「ふむ……やはり北エリアにして正解じゃったな」
 日も落ち、人気も無くなった北エリアに、この時間になってやってきたのは光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう)だ。
 一人でふらりと、シートを広げて晩酌……と行きたいところだが、あいにくとギリギリ未成年なのでビールテイストの
飲料で我慢する。
「夜に見る桜もオツなもんじゃ」
 ぷはぁ、と麦の香りの飲み物を飲み干し、しばらくぼんやりと桜を見上げる。
「おーい、出したゴミは持ち帰れよー」
 そんな翔一朗に、箒片手に掃除をしている武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が遠くから声を掛ける。
「そんなこと当たり前じゃろう。心配無用じゃ」
「ならいいんだ、邪魔したな」
 牙竜は軽く手を挙げて挨拶すると、パートナーのアネイリン・ゴドディン(あねいりん・ごどでぃん)と共に再び掃除に戻る。
「結構ゴミが落ちてるな」
「がりゅー、屋台のおかちはーっ?」
 せっせと箒で舞い散った花びらや、花見客の出したゴミを掃き集める牙竜の後ろ手、アネイリンがぶーぶーと文句を垂れる。
「桜も満開じゃにゃいしぃー」
 一応手伝いはするものの文句の止まないアネイリンに、牙竜はハァ、と溜息を吐く。そして、今日一日で大分花の落ちてしまった桜を見上げ、
「花ざかりに京をみやりてよめる。見わたせば柳桜をこきまぜて、都ぞ春の錦なりける……」
「ほえ?」
「一面の桜じゃなくて、緑が混ざっている方が良い、って意味の歌だ」
「ほえー……なりゅほど……騎士王、一つかちこくなった!」
 お掃除頑張ろう、と気合いを入れ直すアネイリンの頭をぽんぽんと撫で、牙竜はにっこりと笑った。
「今年もいい桜をありがとうな、さくら」
 牙竜がそう言うと、視線の先に居たさくらがひょこっと物影から出てきた。
「お掃除ありがと! もう、今日は大変だったから助かるわ」
「たいしたことじゃないさ。ところで、桜餅があるんだが、一緒に食うか?」
「えー……今日はみーんなさくらもち持ってくるんだもん、太っちゃうわ! ……まあ、貰ってあげるけど。あ、でも私、もう行かないとなの、ごめんね」
 牙竜から桜餅だけ巻き上げて、さくらはぱたぱたと走っていってしまった。

 さくらが向かったのは中央エリアだ。
 教導団の特別演習組も引き上げ、すっかりシンとしてしまっている。
「お疲れ様、さくらちゃん」
「今日はありがと、アスカお姉ちゃん。柚子お姉ちゃんも」
 見回りを終えて一休みしていた師王アスカと橘柚子に、さくらはぺこりと頭を下げる。
「イルミンスールの連中も引き上げたぞ」
「東の露店も片づいた」
 そこへ、エヴァルト・マルトリッツとミュリエル・クロンティリス、アスカのパートナーのルーツ・アトマイスとオルベール・ルシフェリアも戻ってくる。
「みなさんもありがとう。お陰で桜の木への被害は最小限で済んだわ! お掃除してくれた人も居たし、ほんとに助かったわ」
 そう言ってさくらはにっこりと笑う。さくらもちもいっぱい貰えたし、と満足そうだ。
「よかったら、皆さんで写真を撮りませんか?」
 ミュリエルが提案すると、
「それならオレが念写します。タイマー使うより確実でしょう?」
と、丁度中央エリアへと様子を見に来た空京稲荷狐樹廊が名乗りを上げる。
「よし、みんな並んで並んでー!」
 狐樹廊のパートナー、リカイン・フェルマータのかけ声で、園内の見回りに参加した面々がずらりと並ぶ。
 さくらを中心にして、左右には童子華花とミュリエル、そのさらに外側にリカインとアスカ。後ろの列に柚子とルーツ、オルベール、一番端にエヴァルトが並ぶ。
 その様子をしっかりと目に焼き付けた狐樹廊は、頭の中で自分の姿をその中に足して、ううん、とデジカメに向かって唸る。
「よし、できましたよ」
 にっこり笑って狐樹廊がみんなに向かって差し出した画面には――

 さくらを肩車して、左右に華花とミュリエルを従えたエヴァルトが中央に映っている、見事な集合写真が出来上がっていた。

「なっ……!」
 エヴァルトが顔を真っ赤にして、狐樹廊の手からデジカメを取り上げた。
「よく取れてるじゃないの」
 アスカがくすくす笑いながら言う。
「お似合いよ?」
 リカインもまた、笑いを堪えきれないという様子で肩を振るわせている。

「誰がロリコンだぁあああああ!」

 エヴァルトの悲痛な叫びが夜空に消えていく――
 そこに一同の笑い声が重なって――

―幕―

担当マスターより

▼担当マスター

常葉ゆら

▼マスターコメント

おつき合い頂き、ありがとうございました!
リアルワールドではお花見ひとついつも通りにはいかない日々が続きますが、パラミタでは全て忘れて大騒ぎを、ということで極力ゆるゆる判定でお送り致しました。
ダブルアクションも殆ど拾っちゃってます。(次回以降は必ずしも拾うとは限りませんので、あしからず。)

思ったより、皆さん妨害工作には出ずにガチ走りのアクションが多かったです。そのため、特に中央エリア争奪戦においては、「いかに速度を上げるアイテム・スキル・作戦があったか」が勝敗を分けることとなりました。
また、準備のアクションに重点を置かれた方もちらほらでしたが、今回はお花見当日シナリオということでその辺りは描写が薄くなっております。

何はともあれ、無事に桜の森公園ではお花見シーズンを乗り越えることが出来ました。来年も素敵な桜を咲かせてくれる事でしょう。
また次回シナリオでお目もじ出来れば光栄です。ご参加、有り難う御座いました。