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【新入生歓迎】ゴブリン軍団を撃退せよ!

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【新入生歓迎】ゴブリン軍団を撃退せよ!

リアクション

「おまえの言おうとしたことは、間違っていない」
 大荒野の土を踏みながら歩くヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)が、少し後ろを歩くブラウディー・ラナルコに告げた。
「ゴブリンにも、何か理由があってこれだけのことをしたのに違いない。我々の目的は暴動を収めることだけではない。荒野の治安を維持し続けなければならないのだ」
「我輩も、そう思う。無益な戦いが起こらざるを得ない状況こそが、このような事態を招いているのだ」
 ブラウディーが答える。
「面白い考え方だ。君にも帝王学の素質があるかもしれんな」
 背後から眺める神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)が、やりとりを楽しむように目を細めた。
「我輩は共産主義者だ」
「指導者は必要だろう?」
 ブラウディーの返答に、ゼミナーはさらに笑みを深くした。
「ゼミナーの言うとおりだ。どのような思想にも、指導者は必要だ。……ゴブリンにも」
 ヴァルが向かっていたのは、装甲車のひとつ……ゴブリン魔術師が捕らえら、搬送されようとしているその場所だ。
「彼には、ゴブリンを治める力があるはずだ。断罪するだけでなく、彼の協力が得られれば、大荒野のゴブリンたちをまとめることが……」
 と、言いかけた時。ヴァルは装甲車の戸が開いていることに気づいた。
「何だっ!?」
 ブラウディーが思わず叫び、中をのぞき込む。そこには……
「あ、やばっ」
 装甲車のなかで、気絶させたゴブリン魔術師の衣服をはぎ取り、杖を奪っている椿 木春(つばき・きはる)の姿。さらには、ナイフを使って皮膚を奪おうとしている。
「ここで何をしている!?」
 ヴァルが鋭く問う。が、答えるよりも早く、横から飛び出してきたディオード・ムスペル(でぃおーど・むすぺる)がヴァルに突っ込んだ。
「うおおっ!」
 ヴァルが飛び退り、かろうじてその攻撃をかわす。
「こちとら、戦いに参加できずにいらいらしてんだ。誰でもいい、ぶっ潰してやる!」
 ディオードが叫び、剣を振り回すように再び突っ込む。
「なるほど、研究材料としてそのゴブリンを手に入れようとしたわけか!」
 ゼミナーが木春の様子に素早く叫ぶ。
「その通り! さすがに、これでは無理でありますがね!」
 狭い装甲車の内側から、木春は雷を撃ち放つ。ゴブリンから奪った杖の性能を確かめるように。
「案外、普通でありますね……まあ、とにかく、これ以上は面倒、帰るであります」
 雷でヴァルたちを遠ざけながら、木春は装甲車を飛び出す。
「チッ! ようやく暴れられそうだったってのによ……!」
 ディオードが舌打ちし、その後を追う。
「くっ! 追わなければ……」
「いや、それよりもまずはこっちだ」
 ヴァルが装甲車の中をのぞき込む。魔力が尽きたところを気絶させられ、持ち物を奪われた彼が、人間を信用することなどできるだろうか?
 ヴァルの心中に、暗い気持ちが広がった。


 シャンバラ教導団、作戦室。教導団と天御柱学院の幹部が、報告書を読み終えた。
「報告に補足いたします」
 クレア・シュミットが敬礼を掲げてから、作戦の一部始終を伝えた。
「教導団や学院の生徒の中には、規律を乱すものは少なく、おおむね立案された作戦の通りに進行していました。ただ……」
 その隣にいたクレーメック・ジーベックが、ゆっくり首を振る。
「他校の新入生の中には、やはり個人の独断で動きがちなものが多いようですな」
「……とはいえ、契約者は非常に強力な存在です」
 クレアがさらに付け加えた。
「契約者とパートナーの間の関係がその強さを作り上げているとするなら、巨大な組織としてより、個人として振る舞う方がその力を効率よく引き出せるのかも知れません」
 ……報告を終えて。
「どう見る?」
 クレアが、マーゼンに問うた。
「教導団の考えは変わりませんよ。たとえ、契約者の強さが個人に根ざしているとしても、教導団はそれを支配し、統制しなければなりません。自分たちは軍ですからな」
「……天御柱学院の考え方は、少し違うように見えたな」
 クレアがぽつりと呟く。
「個人を個人のまま、力とする方法を考えているように見える。強いものをより強く、だ」
「彼らは、軍というもののを完全に信用していないような気がするな」
「同感だ。今回の合同訓練とやらも、我々のやり方を確かめるためのモノだったのかもし廉な」
 かつ、かつ、とふたりの足音が遠ざかっていった。

担当マスターより

▼担当マスター

丹野佑

▼マスターコメント

 本シナリオのリアクション執筆を担当させて頂きました、丹野佑と申します。
 シナリオに参加していただき、あるいはリアクションを読んで頂き、まことにありがとうございます。

 今回のシナリオは新入生歓迎シナリオ、ということで、新入生の皆様の活躍、および上級生の皆様との協力に主眼を置いて書かせて頂きました。
 新入生NPCの秀幸となななのふたりは、新入生たちを教えて頂いたとき、自分から頼んで使わせて頂いたキャラクターです。
 PCもそうなのですが、NPCは魅力的に描けていたでしょうか? ふたりがマスターシナリオで皆様の目に触れるのはこれが初めてになるはずなので、緊張しきりです。

 「協力してことにあたってください」とガイドに書いたことで、掲示板が予想を遥かに超えて盛り上がり、皆様の楽しもうという気持ちが伝わってきてとても嬉しく思いました。
 みんなで協力してことに当たるシナリオの醍醐味を感じられたような気がします。

 今回は、新入生の中でも活躍が目立った皆様に、称号を贈らせていただきました。

 最後になりましたが、重ねて、ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
 もし機会があれば、またマスターを務めさせて頂ければと思います。