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【蒼フロ2周年記念】未来の君へ

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住むべき場所

東京の下町の一角では、葬儀が執り行われていた。

喪主は甲斐 英虎(かい・ひでとら)(28)。
92歳で生涯を終えた、祖父の葬儀である。

(あれ? ユキノはどこにいったんだ?)

通夜に葬儀とあわただしい中、ようやく一息ついた所で、
パートナーの甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)がいない事に気がついた。

亡くなった妹の写似であるユキノが
葬儀で好奇の目で見られていた事は気になっていたが、
気を使ってあげる余裕はなかったのだ。

だからこそ、余計に心配だった。

しかしそれは杞憂で終わった。

植木で満たされた小さな庭に面した縁側。
そこにユキノは祖父と暮らしていた老猫の玉三郎と共にいたのだ。

10年経っても殆ど変わらない、妹の雪乃そのままの姿で。

「ユキノ……」

「タマ……おじいさんはあそこにいったのですよ」

声をかけようと思った英虎であったが、
ユキノが玉三郎に語りかけているのを聞いて言葉を止めた。

ユキノは遥か彼方にあるはずのパラミタを指さす。
そして指はパラミタから下にさがる。

「地球で亡くなった魂はナラカへ行くんです。
……そしてパラミタの生物に生まれ変わって、パラミタで亡くなったら地球へ。
魂の循環でござますね。タマも、パラミタへ行きますか?」

「ニャーン」

ユキノの言葉に年老いた虎猫は愛おしそうに鳴いたが、
ユキノの膝を降りてそのまま歩いて行ってしまう。

「この家がいいって。祖父ちゃんの匂いがする家がいいのかもね。
……仕事があるから、明日には出るつもり」

英虎には御神楽鉄道の技術員としての職務があるのだ。
ユキノは玉三郎を少し見やると、英虎の方を向いて答えた。

「はい。帰りましょう。あそこに」

玉三郎にとってこの家が住むべき場所のように。
二人にとってはパラミタが住むべき場所なのだ。