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賞金首の空賊を退治しろ!

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賞金首の空賊を退治しろ!

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戦場の流星



 越中 麗牙(こしなか・れいが)は新人である。最近シャンバラ教導団に入ってきたばかりで、イコンも初期支給のクェイル。武器もアサルトライフルだけである。
 だがそんなことと彼の智謀とは関係なかった。
 まず、不慣れながらも単騎で突撃すると、空中に向かってアサルトライフルを発射する。
 無論それは届かない。だが、敵が麗牙を脅威と感じたのも事実だった。
 そして降下してくる随伴飛行歩兵たち。だがそれこそが彼の狙いであった。
 パートナーを載せていないので40%から50%の出力しか出ないとはいえ、それでも地球人である。シャンバラの種族だけで構成されるイコンよりは出力が大きかった。
 そして20人ほどが彼におびき出され、後退する麗牙を追い詰めようとやって来る。
「よし、狙い通りだ」
 麗牙はそうつぶやいて勝利を確信する。
「いまだ、撃てー!」
 そこに武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)が指揮する【オペレーション・ユニコーン】の射線が集中する。
 セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)とそのパートナーオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)も敵の中を撹乱して味方の射撃が優位になるように働きかける。
「本当ならあたしは護衛艦のブリッジ制圧に行きたかったんだけどなー」
 セフィーがぼやく。
「それは無理だと説明したはずだ。20レベル以下のおまえたちが出ていったところでおとなしく制圧されるほど空賊もやわじゃない」
 幸祐がそう説明する。
「まあ、たしかにねー。早くイコンと戦えるレベルになりたいものね……」
 エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)もそう言ってため息をつく。
 幸祐の【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】のアサルトライフルが銃弾をばらまく。セフィー、オルフィナ、エリザベータの三人はそれぞれ小型飛空艇で敵陣に斬り込む。
「さて、悪名高きジーハ空賊団、対シャーウッドの森空賊団とヴュルテンベルク連合航空艦隊。どちらに勝利の女神が微笑むか。お手並み拝見ですね幸祐……」
 ローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)がそう言う。
「そうだな。だが甘んじて勝利の女神を待っているわけにもいかない」
 幸祐の言葉に頷くと、ローデリヒは飛空艇を前進させた。

 ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)も地球人一人乗りのクェイルでありその能力は著しく低い。
 だがソニックブラスターによる面制圧攻撃に、黒板を引っ掻いた音を取り入れたのは流石としか言いようがない。
 この音波攻撃を受けた敵兵は少なからず脱落してゆく。
 その音波攻撃は、敵味方問わず発狂させるような強力な威力を誇っていた。
「うがああああああああああああ。ちくしょう、音流してるこっちも嫌になる」
 ヴァイスはそう叫んで音波攻撃を止めた。
 敵が麗牙の行動を罠だと悟ったときには遅かった。
「デッキガン、一斉発射!」
 【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】のデッキガンが敵を制圧してゆく。
「《破邪の刃》! いっけええええええええええええええ!」
 セフィーは一度に二人を相手取ることによって戦線全体の負担を和らげていた。
 とはいえ彼女の力では、これも三回しか使えない。そしてSPが尽きると彼女は食事をして回復するために【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】に着艦した。
 オルフィナとエリザベータは二人一組で敵空賊団の相手をしていた。彼女たちのSPでは使える特技が殆ど無いので、オルフィナはバスタードソード、エリザベータはブロンドソードで前後、あるいは左右から敵を攻撃する。
 ことにエリザベータは指揮技能を持っているので、支配下の百合園女学院生徒を指揮して対空賊の任務に当たらせていた。
「A班とB班は右翼、C班とD班は左翼。挟撃するわよ!」
『了解!』
 左右から取り囲むように百合園の部隊は敵を攻撃していく。
「エリザベータ様、殲滅完了しました」
「では、次の目標はあちら。正面からぶつかって押し切りなさい」
『はっ!』
 こうしてエリザベータの部隊は空賊を片付けていった。

「【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】着陸する。補給を要するものは速やかに申し出るように」
 幸祐のその言葉にリロードもして弾丸を使い切ったイコンたちがやってくる。
「頼むぞ、ヒルデガルド」
「イエス、マイマスター」
 ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)は着艦するイコンを誘導しながら補給作業のスケジューリングをする。
 しばらくは忙しく働いていた彼女だが、やがて艦内にレッドアラームが鳴り響く。
『敵兵侵入せり、敵兵侵入せり。各員すみやかに排除すべし』
 動けない【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】に向かって敵が侵入してきたのだった。
「隔壁を降ろせ! 敵の侵入を防げ! 総員第一種戦闘配置!」
 ヒルデガルドが指示を出すと隔壁は降ろされ乗組員たちは火器を持って整列する。
「目標、侵入してきた敵空賊。奴らは我々とは違い制服ではなく私服であるからにして判別はすぐに付く。目につき次第すぐに射撃!」
「了解!」
 ヒルデガルドの指示によってすみやかに敵歩兵は制圧される。
「絶対にマスターに一人足りとも近づけるな!」
 ヒルデガルドの激は艦の乗組員の意識を刺激する。幸祐は頭脳だ。頭脳を失っては生きていけない。彼らはそれがわかっているからこそ、懸命に空賊と戦った。
 そしてそれが彼らに勝利をもたらすことになる。

 ヴァイスはスナイパーライフルでを背にしながら、【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】に侵入しようとする敵を排除し、着実に成果を上げていった。
 近づきすぎればアサルトライフルで一気に敵を打ち落とす。そんな彼の戦術もあって【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】に侵入する敵は最小限といっても良かった。
「行くわよ、オルフィナ!」
「わかったよエリザベータ!」
『必殺、ツイン・スラッシュ!』
 二本の剣によるすれ違いざまの攻撃が敵の飛空艇を撃墜する。
 能力とは関係なしに、連携できる生徒側のほうが有利であった。
 もちろん敵の反撃もある。
 オルフィナがマシンガンで攻撃されるが、一回目は躱す。
 二回目、これは命中する。
「ぐぅっ! 痛いんだよ!」
 1/3程度のダメージを受けるが、彼女はそのまま攻撃を続ける。
 三回目、なんとか回避する。治療を受けるためオルフィナはエリザベータを伴って【飛空巡洋戦艦グナイゼナウ】に着艦する。
 そして、戦局の流転はあらたなる決断を投げかける。