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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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■探せ、温泉蟹と温泉!

 ――パラミタには、いまだ解明されていない謎がある。今回の探検場所もまた、その解明されていない謎が潜んでいるのだ。その謎の名は温泉蟹
 謎を解明するため、そして何より廃部寸前の探検部を立て直すため、ジョニスを隊長とした探検隊が、森の入口に集まっていた。
「みなさん、今回は集まってもらってありがとうございます! ぜひとも、探検を成功させましょう!」
 ジョニスは丁寧に全員へ集まってくれたお礼と今回の意気込みを語る。やはり部の存続がかかっているのか、気合の入れようが違う。
 挨拶もそこそこに、いざ森へと足を踏み入れようとする探検隊。だがそこで、月乃 神那(つきの・かんな)がポツリと呟く。
「――というか、この森を焼き払っちゃったほうが早いような」
 ……その言葉に全員が凍りついた。
「いやいやいやいや!? それやっちゃったら探検にならないからっ! 探検部の意味なくなっちゃうからっ!」
 ジョニスが慌てて却下する。それがまかり通ってしまったら今回の探検が根本から覆ってしまう。
「別にいいじゃないですか。……まぁ、めんどくさいからやるつもりはありませんけどね」
 無表情で言葉を続けると、そのまま神那は後続組のほうに紛れ込んでしまった。ジョニスは溜息をついてしまう。
「温泉というものは初めてです……楽しみですね」
「ええ、楽しみだわ……ふふふ」
 神那とそのパートナー、雪廻 シシィ(ゆきめ・ししぃ)の話し声が聞こえてくる。特にシシィは見たことのない神那の裸体を見れるチャンス、とかなり気合が入っている。

「――温泉蟹はその名のごとく、温泉を縄張りにしているかも。ならきっと、温泉を探せば自然と温泉蟹を見つけることができるかもしれない!」
 ジョニスの立てたその推測を元に、探索組は温泉を探すことにした。もとより人数が多いので、人海戦術を用いて探すことができるだろう。
「どんな温泉なのかしら、楽しみですわ」
「『お下がりくださいませ旦那様』、詩穂たちについてきてくださいね」
 『パスファインダー』を使い、うっそうとして歩きづらい道を涼しい顔して移動するはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)。『パスファインダー』の効果で、他の探検隊メンバーも同様に涼しい顔で歩ける状態だ。
 そしてその後ろで、探検隊の安全を『お下がりくださいませ旦那様』や『ガードライン』で確保しているのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)。セネシャルとしての奉仕精神を忘れることなく、探検隊の仲間を第一に考えているようだ。 この二人を先導役に据えながら、探検隊の探索組はそれぞれの方法で温泉探しに精を出す。

 『超感覚』を使い、硫黄の臭いや温泉の気配を調べるリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)清泉 北都(いずみ・ほくと)、そして遠野 歌菜(とおの・かな)。リアトリスは大きな犬耳をピクピクとさせながら『トレジャーセンス』も用いて、森の周囲をしっかりと調べている。
「つぅっ!?」
 と、銃型HCでマッピングしていた北都が、ちょうど近くにあった植物の鋭利な葉で手の甲を怪我をしてしまう。だがすぐにクナイ・アヤシ(くない・あやし)が動いた。
「っと、大丈夫でございますか?」
 クナイはすぐに北都の手を取り、葉で切ってしまった切り傷をペロリ、と舐める。そしてパパッと絆創膏を貼っていった。
「ありがとう、クナイ」
「いえいえ」
 当たり前の行動、とばかりの展開であるが……すぐ近くでそれを見ていたジョニスは目をパチクリしていた。
「え、えと……男同士、なんじゃ」
「ああ、気にするな。我たちにしてみれば普通のことだ」
 剣で邪魔な草木をばっさばっさと切りながら、モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)は端的に説明する。その説明に、ジョニスは呆気に取られるばかりであった。
(にしても、今日のクナイは機嫌が悪いようだが……何かあったのだろうか)
 ――その原因が二人っきりでの行動という状況を崩してしまっている自身にあることに気づいていない、モーベットであった。

 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)を中心とするチームは共同で探索を進めていた。グラキエスとゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)の『博識』な知識と、グラキエスの持つ『パラミタ地図検索』やロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)の銃型HCで地理情報を集めつつ、足りないところはゴルガイスとハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)の特技のひとつである『捜索』で補う。そしてその情報をハイラルの籠手型HCで記録していく。
 また、レリウスも『人の心、草の心』を使って植物から情報を集めていた。これはリアトリスも行っていたのだが、あまり良い情報はもらえなかったようだ。レリウスの『適者生存』も、動物が住みづらい環境のためか動物がおらず、使うに使えない状況だった。
「えーっと……多分、こっち!」
 同じく、『トレジャーセンス』を使って探索を進めている女の子が一人。及川 翠(おいかわ・みどり)である。しかし向かったその方向はまったくもって見当違い。このままでははぐれてしまうかもしれない。
「ダメよ、翠。好奇心に任せて探してたら迷っちゃうわよ」
 しかしそれを翠のパートナーであるミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が止める。抑え役としての役目をしっかり果たしているようだ。
「あぅっ、ミリアお姉ちゃん……」
「ほら、あっちのほうがなんか温泉がありそうな雰囲気だしあっちを探しましょう?」
 そう言ってミリアが指差したのは、いかにも温泉がありそうな雰囲気をかもし出してるところ。翠は微笑みながら頷くと、ミリアと共にそちらのほうへ探索をしていくのだった。

「うーん、見えないなぁ……ねー、そっちのほうはどおー!?」
 木から木に移り、上方から温泉蟹を探しているレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)。さらに上――上空には『空飛ぶ箒スパロウ』に乗って蟹探索をする甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)がいた。どうやら、レキが飛べる人を探していたところ、白羽の矢が立ったようだ。
「あ、いえ、蟹の姿は見えないようです……」
 引っ込み思案だからか、ちょっと張りの足りない声ではあったがレキには聞こえたようだ。そのまま二人は広大で深い森を上から探索を続ける。
 一方、森の中にいる探検隊はといえば……ノー天気にバケツをお玉で叩いて楽器にしながら楽しげにしている屋良 黎明華(やら・れめか)。カンカンカンカンと相当うるさい。
「お〜んせ〜ん♪ お〜んせ〜ん♪ ど〜こなのだ〜♪」
 道なき道をひたすらに突き進む黎明華。たまに先導組より先に行きそうになるのが怖い。
「こう、鬱陶しい森の中というだけでげんなりするのに、あんなやかましい音を聞かされるとは……」
 後方でデンと構えながら歩いている馬謖 幼常(ばしょく・ようじょう)。どうやらかなり不満のようだ。
「はわわ、怒っちゃだめなのですよ」
 馬謖の契約者である土方 伊織(ひじかた・いおり)が、馬謖の不満を爆発させないよう諌める。だが馬謖本人も怒るつもりはないようだ。
「わかっている。一見でたらめに見えるあのやかましい音、あれはあれで動物避けになるし、何よりこの探検隊の大まかな位置を知らせるのに一役買っているんだ、止める理由はない。……やかましすぎるのと、当の本人がガンガン先に進んでいるのが気に食わないけどな」
 さすがは軍師、といったところか。黎明華のノー天気気味な行動を冷静に判断しているようだ。
「とにかく、今は人海戦術で温泉を探すしかないな」
「そうですねぇ。じゃあ僕はかにさんを目印に探してみるですよー」
 そう言うと、伊織は共に来ていたもう一人のパートナー、サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)と一緒に温泉蟹を探し始めたのだった。