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星座の闘衣を纏いし戦士達!

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星座の闘衣を纏いし戦士達!
星座の闘衣を纏いし戦士達! 星座の闘衣を纏いし戦士達!

リアクション



競売

 フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)が崖下に落下するところを、フリューネの陣営以外にも目撃しているものがいた。
 それは星座に導かれたものであったり、たまたま通りががったものであったりしたわけだが、その中に、オリオン座の大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)とその一行がいた。
 泰輔は射手座の闘衣が何やら値打ち物であるらしいと知ると、それを奪って両陣営に競りで売りつけようと考えたのだ。
「ベテルギウス、リゲル、~道頓堀の~♪ さて、皆、崖降りるで!」
 それだけで付き合いの長い泰輔の相棒たちは彼の意図が飲み込めたらしい。一斉に崖を滑り落ちる。
「どちらのものになったとて我には関係なかろうが、状況を掻き乱す事は……面白かろうのう?」
 白鳥座の讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)はそう言いながら楽しそうに崖を滑り落ちる。
「まあ、やりたいことはわかるからお付き合いしますよ、泰輔さん」
 南の魚座のレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が微妙にワクワクしながら滑り落ちる。
「うう……僕は平和が一番なのに……」 
 フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)は平和を愛するうさぎ座。ビクビクしながら滑り落ちる。
「なんだ、ありゃ?」
 ルースがそう言いながらも闘志を燃やし崖の上に居るフリューネを守ろうとするリッターたちに攻撃を仕掛けようとする。
「そうはさせませんです、蟹座!」
 そう叫んだのは水瓶座のシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)で、命令を受けながらもなにか裏があるとしてそれを拒否し、その妨害に回ろうと考えていた黄金位のリッターだった。
「ああ? なんのつもりだ水瓶の?」
「蟹座よ、貴方はこの命令になんの陰も感じないというのですか?」
「ん~、まあ、そこら辺考えるのは俺の役目じゃないんでな。ま、そこら辺を考えてる奴はちゃんといるさ。な?」
 と言ってルカルカとダリルに目配せをする。
「とは言え、だ。青銅位のフリューネには射手座の闘衣は贅沢すぎるおもちゃだろ? 奴には資格が足りないんだよ」
「ふむ。ここは言い争っても無駄なようですね。オーロラリベレイション!!!
 絶対零度の凍気を放つ最大の必殺技を、シャーロットは問答無用でルミーナに放つ。が、その一撃は仮面を破壊しただけだった。手加減していたのである。
「ほう……その瞳、濁ってはいませんね。言いなさい、何者の命令です!?」
 最初、シャーロットはルミーナが操られているかと思った。だが、その表情を見れば正気なのは明らか。ルミーナは、自分の意志で闘衣を回収しようとしているようだった。
「ふっ……それは水瓶座のあなたも知っているはずですわ。それよりも、仮面を割られた女リッターの掟」
 ご存知ですよね? とルミーナは冷たく言った。
「もちろん。が不可能だろう?」
 その言葉にルミーナは同意し、かつ、あなたも御存知の通りですが、なにか問題でも? と言った。
 ルミーナの言葉に、シャーロットは確信する。
「ふむ。獅子身中の虫か……まさか頂点が腐っていたとは……」
 シャーロットはそうつぶやくと、それに諾々と従うとは情けない、とルミーナを侮蔑する。
「見下げ果てました。ここで倒して差し上げます!」
「させねえよ、水瓶座! 物事には色々タイミングってものがあるんだ! まだ、その時期じゃない! それに、奴は未だ崖の下。登り切るまでゆっくり待っていればいいさ……って、ええ!?」
 とルースが崖の下を覗くと、泰輔の一行がフリューネから射手座の闘衣を奪っていた。
 具体的には
「ふん!」
 顕仁がサイコキネシスで闘衣の箱を持っていた者のバランスを崩して足払いをかけたところで闘衣を奪い、レイチェルにトスする。
 そこで泰輔が叫んだ。
「さて、皆様お立会い! 射手座の闘衣は僕らが頂きました。欲しい人はこの闘衣に値段をつけてえな。要するに、オークションやな!」
 その言葉はその場にいる一同にとって衝撃的だった。
 まさか金銭で闘衣をどうこうしようとするものがいるとは……
「これは……」
「一時休戦だ水瓶座!」
「了解です!」
 そう言って二人は崖から飛び降りる。黄金位なので、滑り降りるなどとと悠長なことをしなくても問題ないのだ。
「急いで闘衣を奪い返してくださいませ!」
 ルミーナの指示で、それらに続いて大勢のリッターが崖を降りる。それを崖下でほうおう座のリッター安芸宮 和輝(あきみや・かずき)が見ていた。
「あの怪しい連中に闘衣を渡すのは拙いですね……ならばっ! 衝天鳳
 眩い爆炎を纏った不死鳥が和輝から飛び立ち、リッターたちを直撃する。それは、一定以上の力を持つ相手には効かなかったが、それ以下の能力のものは、一様に天空の彼方へと吹き飛ばされた。
 そしてそれに紛れて、現場を逃亡するリッターが一人。
 エリダヌス座のロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)
 あんまり争い事は好きじゃないんですが、どうしましょうかねぇ。まあ、怠けてると思われない程度に頑張りましょう。などと考えていたところに都合よく攻撃が来たので、吹き飛ばされたふりをしたのだった。
 そんなこととはつゆ知らず
「これで多少はふるいにかけられましたね……フリューネさん、大丈夫ですか?」
 和輝はフリューネに声をかける。
「大丈夫! それより……」
 フリューネは闘衣に視線を向ける。
「はい!」
 和輝はフリューネとともに奪われた闘衣に向かっていく。
 そして崖を滑り落ちながら、ロレンツォのパートナーで鳩座のリッターアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)は、「逃げたなぁ……」と呟きつつも苦笑いした。
「まあ、これからの展開をちょっと様子見……私の様子だとパーツごとに分割するはずだから、それからだね」
 そう言いながら崖を滑り落ち続ける。ほぼ垂直な滝のような、なかなかに難儀な崖であった。馬は当たり前として鹿も降りれまい。そんなところを滑り落ちていけるのは、リッターならではである。
 そして、降りてきた黄金位が泰輔一行の前に立ちはだかる。
「闘衣は金で扱うものではありません」
「そうだぜ! 資格が必要なんだ!」
 シャーロットとルースが口々に言うと泰輔はこう答えた。
「ですからこそ、値打ちがあるんやろ? こうして大勢のリッターが群がるくらいやさかい」
「だからさせねえって言ってるんだよ!」
 ルースが叫ぶ。
「では、力づくで来ればいいのです?」
 レイチェルがそう言って闘気を練る。
「はああああああああああ! フォーガトゥン・スター!!!
 凍気を込めた拳を放つ。が、
「愚かな……水瓶座の、凍気を操る私に、その程度の凍気など冷房程度でしかありません」
 シャーロットが悠然と呟く。と闘気を練り、そして解き放つ。
オーロラリベレイション!!!
 レイチェルとは比べ物にならない凍気。
 泰輔一行は天高く舞い上がり、顔面から地面に激突する。
「さ、さすがは黄金位やな……せやけど、たくさんあって困らへんのがお金と人情。ゼニで買えないモンもあるけど、大概のモンはそれでなんとかなんねん。せやからゼニが必要やねん。喰らえ! 道頓堀クラッシュ
 右腕の赤い灯(ベテルギウス)と左足の青い火(リゲル)から同時に放った攻撃を、だが、ルースはやすやすと受け止める。
「言ってることはわかるぜ。でもな、黄金位を相手にするには役不足だな! サアタ・アクベンス!!!
 両手の手刀を、上段からクロスさせるように、音速を超えた一撃を放つ。
 絶叫を上げて倒れる泰輔。その一撃は、泰輔を生死の境に導くのに十分だった。
「泰輔!」
 レイチェルが駆け寄り、泰輔にヒールをかける。
「うう……たすかったで。やってくれはるな、黄金の。だが、これならどうや! 通天閣エクスプロ―ション
 泰輔はそう叫ぶと、シャーロットを掴んで闘気を練り込み、ルースに向かって投げ放つ。
「きゃああああああああ!!!」
 シャーロットが悲鳴を上げる。
「うお! ちょっとまて!」
 が、避ける暇もなく二人は激突する。
「痛ぅ……さすがに黄金位のリッターが激突するとかなり痛いな……舐めた真似してくれるじゃないか!」
「まだまだ! もういっちょや!」
 今度はシューベルトを投げ飛ばす。
「うわあああああ! ぼ、僕!?」
 音速で飛んでいったシューベルトはシャーロットとルースにそれなりのダメージを与えつつ、自身は瀕死になる。
「大丈夫、フランツ?」
 レイチェルがフランツを回復させる。
「ふむ。無駄だとは思うが一応試してみようかのう……ハート・オブ・グラス
 凍気を放つ顕仁。だが……
「温いですよ」
 やはり通じないようだ。
「どうするよ、泰輔。我の思うところだと、コヤツらにはかなわないと思うのだよ」
「せやな……とはいえ、まだ現物はこっちにあるんやで」
「なら、買ってやるよ!」
 二人の会話に、何者かが割って入る。
 それは実家がお金持ちなお嬢様、羅針盤座の茅野 菫(ちの・すみれ)だった。
「たまたま闘衣に導かれてやってきてみれば……フリューネが大変なことになってるじゃないか。あたしがあんたらから買い取ってやるよ」
「僕もお金出すです」
 そう言ったのは同じく実家が大金持ちな子馬座の土方 伊織(ひじかた・いおり)だった。伊織はフリューネが崖から落ちるのを目撃し、救出のためにそこへ向かって、フリューネにヒールをかけて治療している最中だった。
「じゃ、折半でどう?」
「わかりました」
 二人と泰輔の間で話がつくと、伊織は泰輔から口座番号を聞き銃型HCから振込の操作をした。
「はい、振込みましたよ。菫さん、あとで半分払ってくださいね」
「了解! さて、フリューネ、逃げるよ!」
「そうですね。ここは戦線離脱をして情報収集、そして集めた情報を今後の指針にしましょう」
 祭壇座のサー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)の言葉に、フリューネは頷く。
「は、はい!」
 そして菫たちは今きた道を逆方向に逃げ始める。
「まて!」
 ルースが呼び止めようとするが
「休戦協定はここまでですね、蟹座!」
 シャーロットが立ちふさがる。
「おもしれえ! 黄金位同士で戦うか。それも悪くない。喰らえ! 積尸気冥界傀儡掌!!!
 ルースは冥界から死者の魂を呼び出すとシャーロットにぶつける。
「くっ……体の自由が……」
「さすが黄金位、普通なら自由に操れるんだが動きを封じるのが精一杯か。だが、これなら反撃できまい。とは言え、同じ黄金位。仲間の誼で見逃してやる。ルカルカ、ダリル、フリューネを追え!」
「了解!」
「わかりました」
 そして、二人の黄金位とルミーナ、そして遅れてやってきた傭兵たちがフリューネを追う。
「まて!」
 シャーロットが叫ぶが、体が動かない。
「ここで待ってようぜ。闘衣が戻るのをな。さて、他の雑魚どもには容赦しないぞ! 積尸気冥界傀儡掌!!!
 白銀位、青銅位でフリューネに味方する多くのリッターは、ルースに操られて自滅していった。
「くぅ……蟹座のルース、枢機卿の命令に唯々諾々と従うのはなぜです?」
「怪しいとはいえ裏は取れてないし、正式な命令系統で降りてきてる命令だし、まあ、今のところ逆らうタイミングじゃないのさ」
「なるほど……」
 その中に、二人だけ操られないものがいた。黒衣を纏った、2つの影が。
「何者だ!」
 黒衣の影は、その問に「死者の国からお前たちを迎えに来たのだ」と答えると、更に語り続けた。
「私の名はエシク。かつて双子座だった者。ナラカから甦ったのです――仮初の命を貰い幽拳士(レイス)として!」
 そしてその女、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)は漆黒のローブを破り捨てる。
 そこには、双子座の闘衣を纏った凛々し気なリッターがいた。
「レイスだと!」
 ルースが叫ぶと、もう一つの影が「一緒に降りてきたんだけど、気が付かなかった?」
 と、これまた女の声で喋る。
「なんだと……」
 さすがにそれはルースも気が付かなかった。
「まあ、情報を探るつもりだったけど、そこの水瓶座のおかげですぐわかって助かったわ」
 その女はローブを纏ったままそう続けると、「エシク、そろそろ撤退しましょう」と小声で言う。
 今回、エシクの黒子に徹しているローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、ルミーナの裏に何かあると読んで動いていたのだが、シャーロットが直接動き出したおかげで手間が省けたのだった。
「わかりました。では……幻妄冥皇拳!!!
「なん……だ?」
 ルースがつぶやくと、彼は子供に戻っていて、昔のトラウマを、再度追体験した。
「うわあああああああああああああああ!」
 恐慌状態になり、体が麻痺を起こすルース。と同時に束縛が解けるシャーロット。
「行きなさい」
 黒衣の女(ローザマリア)がそう囁くと、シャーロットは礼を言ってからフリューネたちを追いかけた。
「……くそう、まさかこのオレがそんな妄執にとらわれるなんてな……」
「回復した!?」
 刹那、ルースが意識を取り戻す。
「このオレも冥界の瘴気と魂を操るリッターだ。エシクとやら、お前さんの攻撃はオレとは相性が悪いんだ……」
「ふむ……まあいいでしょう。こちらはこれ以上そちらに用事はありません。蟹座のリッター、またいずれあいましょう」
 エシクはそう言うと、ローザマリアとともに唐突に姿を消した。
「まて!」
 だが、ルースの言葉は虚しく虚空に響くのみであった。