天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

失踪する美女モデル達を追え! 

リアクション公開中!

失踪する美女モデル達を追え! 

リアクション




第七章:悪魔の折檻部屋


 そのころ工房のロベルト本体は『甘美な拷問』に悲鳴を上げていたのだった。
 「そっちの趣味はありません! お願いですから離れてっ! 身体をわたしに密着させないで!」
 「あらぁ? あたしじゃご不満ってことなのかしら、ロベルト」
 ハイレグレオタードでロベルトに関節技をかけているのは桜月 舞香(さくらづき・まいか)だ。大きな胸と長い脚をロベルトにさらに密着させる。
 「モデルの方には触らない主義なのですよ! 蝋人形にした方々も丁重にあつかってですね! ぐぐぐ」

 工房の観客は舞香の『甘美な拷問ショー』にやんやの拍手を送って応援している。


 時間は舞香が工房に入ってくる前にさかのぼる。


 退紅 海松(あらぞめ・みる)は工房の扉をノックし、強引に入室した。フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)が海松に続いて入室する。
 「おや……モデル面接のお時間ではありませんが」
 工房の主、ロベルトがやや困惑気味の表情で振り返る。
 海松が興奮気味にロベルトに話しかける。
 「私、退紅 海松(あらぞめ みる)と申しますのー♪ 蝋人形、拝見しました! これは作者さんにぜひぜひお会いしたいと思いまして!」
 フェブルウスがロベルトに言う。
 「突然で申し訳ないのですが……彼女がこう言いだしたらテコでも動きませんから僕に帰らせようと思わないで下さいね。僕でも多分無理なので」
 「お作りになっているのは貴方ですの?」
 「はい。ロベルトと申します」
 「ふふ、私、同人をやってるのですが……」
 「お連れの方もそうですか?」
 「あ、僕は彼女が暴走した時のストッパー役なんで。おかまいなく」
 「蝋人形もフィギュアの一種ですわ! さぁ、いざゆかんコミケ会場へ〜♪」
 「……へ?」
 「彼女はですね……あなたをコミケに誘っているのですよ。ロベルトさん」
 「そうなのです! 私と一緒にフィギュアを作ってみませんか? 原型師としてそちらの業界に名をはばたかせてみません?」

 「フィギュア……ですか。フィギュアは……蝋人形以上に難しいのではないかと」
 「こんなに生きているような蝋人形をつくれるあなたでしたら問題ないですわ」
 「いえ、蝋人形は、実際の人物をモデルにしますから……まぁ、その人物らしい表情や仕草、体勢にするかがネックなんですけれど」
 「ええ、ええ。わかりますわ」
 「フィギュアは基本2次元、漫画やアニメのキャラクターがモデルになりますよね?」
 「ええ、ええ」
 「……”フィギュアを元にフィギュアを作る”ことならできるかもしれませんが……フィギュアの原型を作るとなると」
 「大丈夫ですわ。はじめは誰しも模倣から入るものでしょう?」
 「そう……そうですね」
 「それにですね、たとえばこの蝋人形がですね♪」

 海松は朝倉千歳とイルマ・レストの蝋人形に歩み寄った。

 「これがウケると思うのです! コミケ会場では!」
 「そのお二人の蝋人形はお辛そうで……わたくしとしましてはあまり」
 「いえいえ、これを!」

 海松は二人の蝋人形が手を伸ばそうとする前に同人グッズを掲げて立った。
 「こうすると『戦利品を手にした記念写真』がとれますわ! この二人がその漫画のキャラでしたらファン大喜びですわ♪」

 「それにですね」と言って海松は工房内の蝋人形を配置してジオラマのように仕立てていた。

 嬉々として作業する海松を片目にフェブルウスがロベルトに言う。
 「よくない噂、流れてますから。まぁ、でも……遠回りに聞かれるより、直接聞いた方がこの場合いいのかな。で、どうなんです?真相は」

 そこで扉がノックされた。入ってきたのはリリア・オーランソートだ。
 「あら、面接の時間になったもので入ったんですが……お取込み中?」
 「いえいえ、お待ちしておりました」
 「この方々は助手さんですか?」
――リリアは海松とフェブルウスがそうではないことを知っていて尋ねる。
 「ご客人でして」
 「では、また出直しましょうか?」
 「いえいえ、面接させてください。あなたには是非ともモデルになって頂きたく……」

 フェブルウスが二人に言う。
 「僕に海松をこの部屋から出すように言っても無理ですよ。ああなったら彼女、本当に出ていきませんよ」

 リリアが海松の作ったジオラマを見て「物語ができていますね!」と褒める。「すこし失礼しますね」とロベルトに言うと、海松と一緒にジオラマに参加しだした。

 扉がノックされる。
 「ロベルトさん? 面接をお願いした桜月舞香ですけれど。入りますね!」
 「ああ……もうそんなお時間ですよね」
 ロベルトが舞香に椅子を用意する。
 「精巧な蝋人形ね。どうやって作ってるの? ねぇ、私、見てみたいわ」
 「また後日でもよろしいですかね」
 「……もしかして、あたし、面接に落ちたということかしら」
 膝の上に両手を重ねた舞香はその両腕で大きな胸を寄せ上げ、上目使いでロベルトに懇願するように言う。
 「――いえ、モデルとして申し分ありませんよ、桜月さん」
 ロベルトの視線を感じて舞香は確信した。

――やっぱり。こいつ女好きなスケベ男よね! 女を騙して利用するなんて絶対許せないわ! ――

 舞香は立ち上がり、ロベルトに背を向けた。
 「でも……でも……それって慰めの言葉なんでしょう?」
 悲しげに肩を落として見せる。ロベルトが席を立って舞香の後ろに立って言う。
 「そうじゃないんです、あなたは本当に美し……」

 「かかったわね! ロベルト! さぁ、白状してもらうわよ!」
――こうして甘美な拷問が始まり、あっけなくロベルトは降参したのだ。ほどなく蝋人形にされていた人々はその術から解放された。




終章:後日譚

 ロベルトの身柄は拘束され、刑に服することになった。


 サズウェル・フェズタは『事件の被害者』師王アスカと”あの事件”について語り合っていた。

 芸術家として。同じ絵描きとして。

 「ロベルトは僕に『絵描きがうらやましい』って。あの表情……忘れられなんだよねぇ。蝋人形だったけど」
 サズウェルがマリーとして会話していたのは『蝋人形のロベルト』だったのだ。
 「蝋人形、また作るのかねぇロベルト」

 アスカはサズウェルに答えた。
 「私、スケッチブックをいつも持ち歩いてるんだけどねぇ、あの時も持ってたんだよねぇこれ」

 アスカはスケッチブックを取り出して開いて見せた。そこには公園とそこであそぶ子供たちが描かれていた。ベンチにはそれを見守る老夫妻が座っている。
 公園の木々には彩色を施してあったが、人物は鉛筆画のままだ。

 「スケッチブックは表紙で閉じてあったはずだけどねぇ。このページが見えるようになってた。ロべさんはこれが気に入ったんだろうねぇ」


担当マスターより

▼担当マスター

にのみやくれは

▼マスターコメント

 はじめまして。にのみやくれはです。
 初めてのリアクションになります。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
 楽しんで頂けましたでしょうか? 個人的にはご参加くださった皆様の「アクション」が楽しくて楽しくて……私が楽しんでおりました。はい。
 いっそそのまま全部コピーして、リスト状態で並べた方が面白かったんじゃないかとひやひやな「文章」ではございますが……

 どうぞまた次作で皆様にお会いできますことを祈ってやみません←アイディア出るのか? 出せるのか?!

 ――ロベルトはいい子にしすぎたかなぁ? 間違ってるけど「いいやつ」設定だったしなぁ