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サンサーラ ~輪廻の記憶~ ex『あの頃の欠片』

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サンサーラ ~輪廻の記憶~ ex『あの頃の欠片』
サンサーラ ~輪廻の記憶~ ex『あの頃の欠片』 サンサーラ ~輪廻の記憶~ ex『あの頃の欠片』

リアクション

 
 私服で格安の自動車を運転し、世 羅儀(せい・らぎ)は、仕事を終えて帰宅するヨシュアの姿を見つけてクラクションを鳴らした。
 振り返ったヨシュアが破顔する。
「セイさん! お久しぶりです」
「元気だった、ヨシュア?」
「はい。セイさんもお元気そうで。今日は、ヨウさんは?」
「あっちはあっちで休暇。書類の整理でもしてんじゃないかな。
 なあヨシュア、この後時間あるか?
 一緒に遊ばないか。ナンパ行こうぜ、ナンパ」
「……ナンパ? って何するんです」
 真面目な言葉に、羅儀はがくりと崩れた。
「可愛い子見つけたら、食事に誘ったりさー、……ヨシュア好きな子いるのか?」
「残念ながら」
「じゃ、行こうぜ」
 ヨシュアと一緒に歩いてみればナンパの成功率も上がるのでは、と羅儀は踏んでいる。
(目つきの悪い白竜よりも、絶対女性ウケがいいはず……!)
 また実際に、ヨシュアが女性を口説けるのかどうかという興味もあった。
 まあ無理だったら二人で美味しいものでも食べに行けばいい。
「えーと、すみません、今日は……」
「あたしと約束してるのよね」
 毛皮のコートに胸元の深いVカットのラメシャツ、レザーパンツにヒールブーツ、ブランドバッグにサングラス、といったいつもの普段着で現れたのは、ニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)だった。
「……相変わらず、派手な普段着だなあ……」
 羅儀が苦笑する。
「ヨシュア、久しぶりねぇ。
 それじゃ行きましょうか。あなたも一緒にどう?」
 ニキータは、羅儀も誘う。
「何処へ?」
「いいトコよ♪」

 ニキータがヨシュアを連れて行ったのは、携帯電話のショップだった。
「携帯ですか?」
「今キャンペーン中らしいしアドバイスしたげるから、じっくり選びなさい」
と、戸惑うヨシュアの背中をぽんと叩く。
「そうだな。空京に住んでるんだから、携帯持ってた方が色々便利だぜ」
「ほら、これなんかどう?」
「いや、それはヨシュアにはデザインが派手すぎないか?」
 羅儀も混ざって、三人でアドバイスしながら携帯選びをする。

 時折、ニキータは目に付いたパンフをいくつか手にする。
「どうするんだ?」
「トオルに送ろうかと思って。あの子、携帯壊してたしね」

 そういえば、とふとニキータは思い出す。
 イデアに聞いた話があった。
 イスラフィール達が神の力を持っていたのは、神の亡骸から作り出されたからだと。
 結局、それを口にする機会は無かったが。


 ヨシュアは終始よくわからない様子ではあったが、とにかくアドバイスに従って、ひとつの携帯を選んだ。
「さて、それじゃ、食事にしましょうか。
 まだ、就職祝いをしてなかったのよね、遅くなっちゃったけど、ご馳走するわ」

 食事に向かう途中、ニキータはトオルに携帯のパンフを送る。
『修理するのか新しいのを買うのか分からないけど、良いお店があったからパンフ送るわね』
と、メッセージを添えた。

 そして、手紙はもう一通。
「ちょっと待ってて」
と、道中路地裏で、怪しげな運び屋に手紙を託す。
 所在不明な「かわいい傷」の人物に、念写で作った、別れる寸前の女の写真と、キスマークのついた便箋を一枚。


 路地裏から出てくるニキータを迎えながら、羅儀が
「ヨシュア」
と声をかけた。
「来年もよろしくな。絶対生き残ろう」
「……はい。こちらこそ、来年もよろしくお願いします」
 新しい年は、きっと明るいばかりではないだろうけれど。