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双子の魔道書

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双子の魔道書

リアクション

 第 3 章

「海くん! もう、急にシャンバラ教導団へ行ってくるって言ってたけど……」
「あ、悪い。詳しい話をしていなかったか、実は……」
 海が杜守 柚(ともり・ゆず)杜守 三月(ともり・みつき)にかいつまんで事情を話すと2人は顔を見合わせて頷いた。
「「私(僕)達も青の書を助けるよ!」」
「そのお話、詩穂達も加わるよ! というか赤の書ちゃんの声を聞いた人達が集まってきてるの」
 柚が開けたままにしていた扉の前に立つ騎沙良 詩穂(きさら・しほ)を始め、イーシャンの声を受け取った契約者達が揃っていた。


 ルカルカが会議室を一つ借りるとそこに全員を集め、早速犯人の追跡と逮捕、及び青の書奪還作戦が練られた。
「これだけの人数なら、作戦を分けても実行出来ると思うの。教導団の人達は犯人の捕縛、海や他校の皆さんは青の書の奪還と保護……もし、異論があれば遠慮なく言ってね」
 互いの顔を見合わせながら、特に意見をする者はなく概ね承諾を得るとまずは持ち去った犯人と青の書の居場所の特定にかかったが、その作業にはカルが立候補した。
「やっぱり、ここは教導団へ手引きしたアジトのヤツがいると思っていいと思うぜ。ジョンと惇、ドリルでありったけの情報を掻き集めて調べてみる、本音を言うと彼にも一緒にいて欲しいんだけど……どうだ、イーシャンさん?」
 カルの指名を受けて、イーシャンも考えるように瞼を伏せる。やがて顔を上げたイーシャンはカルを真っ直ぐに見つめて告げた。
「……危険な目に遭わないように、力を使わせないように、そう言ってくれてるんですよね。ありがとう、カルさん……でも、僕は力を求められればそれに応えるための魔道書です。シルヴァニーを助けるために危険を承知で赴く人達に付いて力を貸したい――」
 はっきり告げたイーシャンに、カルはほんの少しの心配と強い意志を見せた
嬉しさに大きく頷いて「後方支援は任せろ!」と胸を叩く。
「あなたが『力』ならシルヴァニーさんがその『取り扱い説明書』というわけですかね。対での存在ならば常に行動は共に、でしょう……」
「うまいこと言いますね、ジョンさん。シルヴァニーは複雑そうな顔をしそうですが……」
 思わず笑い出したイーシャンを見ながらティーがぽつりと呟いた。
「団長は、イーシャンさん達の事……自分の意志がないって言ってましたけれど、本当はそんな事ないんじゃないかな……変な話かもしれないけれど、この事件をきっかけにお2人の環境が少しでも良くなると良いな……」
 傍らで聞いていた鉄心とイコナだったが、ティーの頭を軽く撫でた鉄心がイーシャンに向かう。
「荒事になった時は俺とティー、イコナがキミを守ろう。カル達もそれでいいか?」
「源が守るのなら心配はいらぬな、頼むぞ」
 惇が頷くとカルとジョン、ドリルもそれに倣って頷いた。間髪置かずに「ハイハイ」と元気よく手を挙げる日高 暁(ひだか・あきら)の声が響く。
「あのさ、俺パラミタに来たばっかりで一緒に救助作戦行っても足を引っ張っちまうと思う。なら、そいつらに付いて俺も一緒に情報収集手伝いたいんだけど、いいか?」
「おう! こういうのは人手があった方がいいしな。来たばかりならまだわからない事多いだろ? 一緒に頑張ろうぜ!」


 ◇   ◇   ◇


 内通者の分析とアジトになりそうな建物の情報収集をカルと暁達に任せると、何気なく九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)がイーシャンへ訊ねた。
「えっと、イーシャン君……ものは試しなんだけど、双子って不思議な力や繋がりがあるって言われてるし、もし出来れば何か直感的なものってないかな?」
「あ、ローズそれは私もさっき訊ねたけど無理みたいで……」
 セレアナが答えるとローズも残念そうに眼を伏せてしまう。何とか大まかな居場所を探れないものかとあちこちから唸り声が出てくると、ルカルカへ通信が入る。
『こちら、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だ。至急報告したい事があるのだが、今は大丈夫かい? ルカルカ・ルー少佐』


 エースからの報告とは、青の書 シルヴァニーが軟禁されている建物がシャンバラ大荒野の辺りではとの報告でした。
『シャンバラ教導団へ向かう途中、【トレジャーセンス】で探ってみたのだが何ヶ所かで反応が出た。青の書が宝と認識されていればだが』
「……わかったわ、人海戦術になるけれどシャンバラ大荒野へ向かって犯人の捕縛と青の書奪還――行きましょう」
 
 カルや暁へシャンバラ大荒野に集中しての照合を頼み、大荒野へ向かう途中も不審な車やシルヴァニーの容姿を訊ね、できるだけの手掛かりを確保しながら進んでいった。


「ふぅ、遅刻したでありますよ」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が先を歩くイーシャン達を見つけ、ある程度の距離を取りつつ後ろから付いていった。
「どこに犯人側の人間がいるかわからないであります、自分はこの辺りから付いていって不審な人物と判断したら狙撃……さて、仕事するでありますよ!」