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リアクション
ヨシュアの誘拐事件は、無事に解決したらしい。
「よかった」
話を聞いて、シャヘル・アシュヴィン(しゃへる・あしゅう゛ぃん)は安堵する。
「詳しくは解らないけど、そのゴタゴタで、新しく契約者になったとか何とかあったらしいぜ」
「……契約……」
ふと、シャヘルは、昔のことを思い出した。
記憶を失って行き倒れていたところを空京の病院に収容され、病院で偶然、瓜二つのシャレムと出会い、弟だ、と言われたのだ。
「どうした? シャヘル」
沈んだ様子のシャヘルに、シャレムが訊ねる。
「……僕は、本当にシャレムの弟だろうか」
「は? 何言ってんだ」
「……時々、悪夢を見るんだ……。
お前はシャヘルじゃない、だって何も覚えてないじゃないか、って言われる夢……」
自分がシャヘルであることを、証明するものなど何もない。
いつも、答えられなくて目が覚めるのだ。
「何言ってんだよ、俺達そっくりじゃんか」
「……うん」
でも、もしも、別人だったら……本当は、本物のシャヘルが別にいて、いつかシャレムの前に現れるのではないだろうか。
そうしたら、僕はどうしたらいいんだろう。
シャレムは、シャヘルを見て苦笑した。
「そうしたら、その時は三つ子ってことにすればいいじゃん」
「……」
けろりと。
その言葉に、シャヘルはぽかんとシャレムを見た。
どっと肩の力が抜ける。
(そうか……僕は、シャレムと一緒にいてもいいんだね)
「ありがとう、シャレム」
礼を言ったシャヘルに、シャレムは朗らかに笑ってみせた。
「ヨシュアを、よろしくね」
そう言ったニキータに、ナージャは頷いた。
「彼を紹介してくれてありがとう。
上手くやっていけたらと思ってる。まずは友人から、かな」
「うちの天使達、ヨシュアにとてもよく懐いているのよ。
ナージャの子も、きっと好きになってくれると思うわ」
家で待っているだろう天使を思い出して、でれっと笑いながら、ニキータは言った。
剣の花嫁であるタマーラは、ナージャの幼い頃の姿を写している。
「だといいけど」
ナージャには、五歳になる子供がいる。
言えばヨシュアは驚くだろうが、きっと優しく受け入れるだろうとニキータは知っている。
「お待たせしました」
事情聴取を終えて、ヨシュアが戻って来た。
「お疲れ様」
「じゃあ、帰ろうか」
迎えたナージャが微笑む。
もうすっかり夜も更けていたが、ニキータや美羽達は、誰も帰らず、待っていた。
「ねえ、仕切り直し、しようよ」
「そうね。空京大学は、24時間営業よね?」
皆でわいわい、ヨシュアやヨシュアのパートナーと、色々な話をしたり、聞いたりするのを楽しみにしていたのだ。
夜になっても構わない。
美羽が提案すると、ニキータも頷いて、ナージャを見る。
「まあ、どこかしらに徹夜組はいるしな。食堂も開いているだろう」
ナージャが了承して、ニキータはにっこりとヨシュアを見た。
「今夜は寝かさないわよ☆」
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