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グリフォンパピーを救え!

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グリフォンパピーを救え!

リアクション

 駐屯地とその付近に設置された強力な照明が無数の光の束となって、虚空に伸びている。暗闇へと傾斜していく時間は、攻防いずれにとっても危険な時間帯だ。
 それは、黒乃 音子(くろの・ねこ)もじゅうぶん承知していたはずだった。にもかかわらず、不測の事態は生じた。
金住 健勝(かなずみ・けんしょう)とともに、洞窟上部の岩盤めがけて突っ込んできた敵機の翼上に、照明を頼りにふたりの駆る軍用バイクが見事な運転で飛び乗る。ぐんぐん巨大な岩壁が近づく中、音子の手にした光条兵器が輝きをはなつ。
「このパイロットたちが自殺願望者の集まりなら、ボクの目的は彼らの願いをかなえるために、破壊や殺人をしてもいいということなのかな」
 音子が自問のように呟く。
「音子殿は、そうしたいでありますか?」
 健勝は、そう言う音子の古傷のある横顔を微笑みながら見つめる。音子は、首を横に振る。
「見てよ、パピーが無事に洞窟に入った」
 嬉しそうな音子の声に、等質の表情の健勝が頷く。
「優梨子、あのパピーは、本来ならまだ飛べない月齢だって言ってたでしょう。でも、あの子は飛んだ。なにも食べられず、生死の境のなかを飛び続けた。野生動物とはそういうものだって言っちゃえばそれまでだろうけど、学ぶことは、意外に多いのかなあって思ってたのよね」
「野生動物は、どんなときでも生をあきらめないと聞きます。したがって、パピーは、墜落したのではないように、自分には思えるのであります」
 アサルトカービンを持ち直す健勝を、音子は見つめる。
「苦しい状態の中、飛び続けた。そんなとき、授業を受けている自分たちが見えた。パピーは、ほっとしたのではないでしょうか。ああ、あの人たちのところに行ってみよう。あの人たちなら、自分を助けてくれる。よかった、もう安心だな、と」
 死ぬことで頭がいっぱいのパイロットたちを、自分は、いちど、パピーに会わせてやりたく思うのであります。
 死ぬということ、生きるということ、その両方を照らし合わせて、なお自殺を選べるのか。それを、パイロットたちに訊きたいのであります。
 そこまで言って、ガラにもないことを言っていることに気付き、健勝は頭をかく。
「そのためにも、パイロットは殺しちゃいけない、か。教導団も間口が広くなったね、こんなロマンチストも入れるんだから。ね、角刈りくん」
 その声に赤面しつつ、きりりと敬礼するなり、
「金住 健勝、攻撃を開始します!」
と叫びながら、ライフルを乱射し、窓ガラスを破壊する。暗天に飛翔した音子の光の剣が、コクピットだけを寸分の狂いもなく斬り落とす。
 が、機体は、突入角を浅くしただけで、浮力を失ったことで、落下速度は逆に加速したようなのだ。
「音子殿ッ!」
 叫びながら、健勝は、銃を捨て、光条兵器を長大な剣に変えた。
「わかってるッ!」
 ふたりが同時攻撃で、回転を続ける4基のプロペラごと両翼を切断する。しかし、ダメだ。銃弾を大量に抱え込んだまま、胴体は、岩盤に迫る。