蒼空学園

リアクション

「さて、これからが本番ですわ」
　ジュリエットとマッセナは歩哨たちを身ぐるみはがして、アサルトカービンなどの武器も取り上げてしまう。
　武器は全て商人たちに売り渡し、換金するつもりだった。魅世瑠やフローレンスも同様。また、ラズは歩哨たちが持っていた携帯用の兵糧を手に入れて、喜んでいた。
「やめましょうよ、みなさん」
　ジュスティーヌのみが、みんなを止めようとする。最初からジュスティーヌだけが、この戦闘に対してパラミタを建国したい、そういう誠意を持って参加していたのだった。しかし、誰も耳を貸さなかった。
　それどころか「こいつら縛り上げて、シャンバラ教導団の親分や、蒼空学園の校長んところに持って行こう。んで、報酬をたかっちゃおう」と意見が一致したのである。その状況を見て、ジュスティーヌはまたしても、頭を抱えるのであった。

第３章

　レイ・ファネス（れい・ふぁねす）とルカ・クロフォード（るか・くろふぉーど）、楠見　陽太郎（くすみ・ようたろう）とイブ・チェンバース（いぶ・ちぇんばーす）の二組は、森の中にいた鏖殺寺院の構成員を捕まえてたところだった。
　この四人は情報源として、鏖殺寺院の構成員を捕縛することを目的として行動を共にしていた。
　レイが地雷トラップにかからないよう、索敵をし、森を進むうちに鏖殺寺院の構成員二人を発見し、戦闘となったのだ。
　レイは持ち前の俊足を活かし、アサルトカービンで敵の足を打ち抜き、ルカは火術でレイをフォローした。陽太郎はカルスノウトで敵のアサルトカービンを叩き斬る。
　どおっと倒れる鏖殺寺院の構成員をレイが取り押さえると、ルカが銃を取り上げた。
「雑魚は情報を聞き出すために必要だ」
「ええ。その通りございます」
　ルカはレイの言葉に相づちを打った。
　イブは捕縛のために用意してきた猿ぐつわやロープを取り出すと、陽太郎に渡す。
「しっかり縛ってるわねえ、もしかして陽太郎ったら縛るのが好きなの？　あ、そうだ、ルカさん、虫除けスプレーいる？　森の中だから、虫に刺されちゃうかと思って持ってきたんだけど」
「ありがとうございます。使わせていただきます」
「女の子だもんね、虫さされの後とかついたらいやじゃない？」
「素晴らしい気づかいですわ、イブ様」
　きゃっきゃとはしゃぐ女子ふたりを尻目に陽太郎が構成員二人をそれは丁寧に、かつ、頑丈に縛り上げていく。
「随分と嬉しそうだな、陽太郎」
　陽太郎が嬉々として構成員たちを縛る姿を見て、レイは少し引いたようだった。
「レイさん、そんなことはないですよ…一応ね。俺にはこんなことくらいしか出来ませんから…さて、猿ぐつわもしっかりと噛ませました。捕縛は完了です。あとはみなさんにこの『情報源』をお届けしましょう。シャンバラ教導団の尋問のプロ、皇甫　嵩がお待ちかねみたいです」


☆　　☆　　☆



　清泉　北都（いずみ・ほくと）と、クナイ・アヤシ（くない・あやし）は、葉から許可を受け、ドラゴニュートの赤ちゃんがさらわれているポイントを探し出そうとしていた。
「ある程度人数が居るのならば、自ずと潜伏場所は限られてくるはずだよねぇ…」
　そこに、皇甫　嵩からの無線連絡が入った。レイや陽太郎が捕縛した鏖殺寺院の構成員たちが口を割り、ドラゴニュートの赤ちゃんの居場所の目処が付いたのだ。
「…ウィリアム・リリーがどうやらドラゴニュートの赤ちゃんを連れているみたいだねぇ。檻に監禁されていたけれど、どうやら今のシャンバラ教導団と蒼空学園の勢いに押され、リリー自身が赤ちゃんを身体にくくりつけていることまでは判ったそうだよ」
　北都はパートナーのクナイに告げた。
「そうですか…そのような状況では、ドラゴニュートの赤ちゃんもさぞ、不安で苦しい思いをしているでしょう。早く救出しなければなりませんね」
「沼の近くにいるようだねぇ。僕らも『禁猟区』を使って奴らを探し出そうかねぇ」

　影野　陽太（かげの・ようた）は皇甫　嵩からの連絡を受け、元々目をつけていた沼地の探索に力を入れはじめた。森に入る前から学園内で聞き取り調査をし、沼地が怪しいと踏んでいたのだ。
「蒼空学園にドラゴン襲来の危険をもたらすわけにはいきません！　カンナ様に認めて貰うチャンスでもあります！　…ん、これは？」
　陽太は沼地の近辺で、足跡を見つけた。まだ、真新しいもので、土が乾いていないのだ。次の瞬間、陽太はじっと身体を硬直させ、耳を澄ませた。キュウっと言うかすかな声が聞こえてくると共に人間の気配がした。
「…ドラゴニュートの、鳴き声…？」
　しかし、その声は次第に遠ざかって聞こえなくなる。
「こうしちゃいられない！！」
　陽太は無線を使い、蒼空学園本部に連絡を入れた。
「ドラゴニュートの赤ちゃんらしき声を確認！　沼地近くにウィリアム・リリーおよび策士紀　君祥（ジー・ジュインシャン）、その部下が数名いる模様！　至急、向かわれたし！」