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【2019修学旅行】のぞき部どすえ。

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【2019修学旅行】のぞき部どすえ。

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第4章 神様はじめます

「先輩。ここは俺に任せて休んでてくれよ」
 キリン隊の新人、風祭隼人は、ようやくやってきた菅野葉月をゴッド・アイから追い返す。
「いいんですか」
「大丈夫大丈夫。お菓子でも食べててくれよ」
 菅野は食べたかった生八つ橋を差し出されて、
「それならお言葉に甘えて……」
 とゴッド・アイにつながる客室でくつろぎ始めた。甘いものには弱いのだ。
 隼人は窓を閉めるとゴッド・アイの隅に潜み、様子を窺っていた。

 と、上空から何者かが飛び降りてきた。

 太極図のマークの柄が施された風呂敷を巻いて、昔ながらの泥棒スタイルという出で立ちだ。いかにものぞき部的なオーラを出している。
「のぞいちゃうぞ〜い!」
 このおバカな発言、太上 老君(たいじょう・ろうくん)に違いない。
 そして老君は月を見上げると呟いた。
「秋の月、湯煙の向こうに、桃源郷……字余り。なんつって……ぐふふふふ。ついでにパフパフもたっぷりしてもらうんじゃ〜い」
 隼人は何か策でもあるのか、ただ微笑みながら見守っていた。
 と、すぐ後からご存知ケンリュウガーが下りてくる。キリン隊の特攻隊長だ。隼人はケンリュウガーの登場がわかっていたのだろうか……?
「待てエロジジイ! ケンリュウガーが現れたからには、勝手なことはさせん!」
「おぬし……牙竜じゃろ」
「ち、違う! 正義の味方ケンリュウガーだ!」
「だから……牙竜じゃろ」
「違う!!! とにかくキリン隊として、のぞきだけは断じてやらせねえぜ!」
 ケンリュウガーは身構えた。
「どうしてものぞくと言うのなら、この俺を倒してからにしな」
「くっくく。のぞきを目の前にしたわしは英霊界でも敵なしじゃぞ……」
「うるせえ! 行くぞ!」
 ケンリュウガーはカルスノウトに付属するカードスロットに、何やらカードを入れている。
「かったるいのう」
 老君は耳クソをほじくりながら待っていた。
「馬鹿めエロジジイ、見ろ! 八卦の爻を象った紋章を!」
 隼人は目を細めてカルスノウトの指すあたりを見るが、……何も見えない。
「何言ってんだろ。ま、いっか。さあ武神。なんでもいいから、ほれ。あと一歩前に出てみ」
 と何かをひゅっと投げた。
 ケンリュウガーは何も気づかず、
「食らえ! ライジング・ザンパ−!!!」
 一歩前に出て轟雷閃を放った――
 そのとき!

 ぬるぬるるんっ。

 バナナの皮に足を滑らせてしまった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! そんなバナナァァァァァアアアアアアア!!!!!」
 ライジング・ザンパ−はあらぬ方向へ飛んでいき、ケンリュウガーはそのままゴッド・アイを滑り落ち、男子風呂に……どっぼーーーん。
「ガガボガボガボ……」
 溺れた。

『ケンリュウガー、戦死』

 隼人は、何故か睨みつけてくる老君に近づいて、
「太上老君だね。俺、実はのぞき部なんだ。だからもう安心してくれ。俺たちは……仲間だ」
 と握手を求める。
 が……バシーン!
 老君は隼人の手を叩いた。
「どこが仲間じゃ! せっかく牙竜に攻撃させて楽に穴をあけようと思ってたのに。ばかもんがぁ〜!!」
「ちょ、ちょっと待てよ。そんなの知らねえよ。そういうことは先に言ってくれなきゃ〜」
「おぬしのせいで、せっかくのパフパフが台無しじゃ〜」
「なんだって! 俺だって新入部員として命賭けてやってんだ! 勝手な行動しといてよく言うぜ、エロジジイが!!!」
 仲間同士による醜い痴話喧嘩が始まった。

「順調ですね」
 のぞき部副部長のクライスは、キリン隊特攻隊長の死を目の前で認めると、ニヤリと笑った。
 その側で、レイディス・アルフェインは、月を見ながらのんびりと男湯に浸かっていた。
 すると、女子風呂からセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)の声が聞こえる。
「レイー、そっちの湯加減はどうじゃー?」
「ああ、たまに何か落ちてくるけど、いい湯だぜー。そっちはどうだよ」
「おお。こっちもとっても良い気持ちじゃぞー! ひゃっひゃっひゃ」
「おいおい。あんましはしゃいで溺れるんじゃねぇぞー」
 そんなことを言いつつ、レイディス自身もふらふらと泳いでいた。

 ケンリュウガーのライジング・ザンパ−は、菅野のいた客室にまで届いていた。
 菅野は、無念の死を遂げた仲間の分まで戦う覚悟だ。
 そんな菅野が、内輪もめをしてる2人をいっぺんに片付けるのは難しいことではなかった。
「仕事させてもらいますよ」
 菅野はチェインスマイトであっさりと2人をぶっ飛ばす。
「し、しまった! わしとしたことがーーー。パフパフーーーーーー」
 まずは老君が男子風呂に……どっぼーん。溺れた。

『太上老君、戦死』

 泳いでいたレイディスは、突然落ちてきた老君を避けるように潜って……
 ゴツッ!
 女子風呂との境の壁に激突した。
「ガボガボ。あいたーっ!」
 ボロッ……
 このとき、微かに壁が剥がれたのをクライスは見逃さなかった。ここは壁が弱っているようだ。うまくやれば穴があけられるかもしれない……!!!
「にゃん丸さん」
「ああ、わかってるよぉ」
 にゃん丸はまだ動かない。冷静に様子を窺いながら、さりげなく秋葉つかさにメールをした。
 その間に、クライスはレイディスを勧誘する。
「レイディスさん。のぞきには運も大切です。はっきり言って、レイディスさんはかなりの素質を持っているようです。どうです。のぞき部に入りませんか」
「だ、だから、のぞきしないって! バカなこと言うなよっ!?」
 レイディスは顔を真っ赤にして答えた。
「無理にとは言いませんよ。いつでもお待ちしてますから」
「なんなんだよ……」

 ゴッド・アイでは、隼人が菅野の攻撃に耐えていた。ボロボロの体で、ゴッド・アイの縁に残っていた。
 しかし、菅野にはまだまだ余裕がある。
「裏切り者は徹底的にやらせてもらいます。覚悟はいいですね」
「くっそー! まだまだ戦いはここからだぜ! 奇跡を起こしてやる。奇跡を起こしてこそ、真の男だぜッ!!!」
 隼人は菅野に向かって走り出す、そのとき!

 ぬるぬるるんっ。

 自ら用意していたバナナの皮に足を滑らせてしまった。
 ひゅーーーー。ドガッ!
 隼人が落ちたのは、レイディスの上だった。
「ぐあああ。いったたたたー」
 隼人は、意識はしっかりしているものの、強打してぎっくり腰。老君よりも老人だ。

『風祭隼人、戦死』

 セシリアに溺れるなと忠告していたレイディスは、隼人の下敷きとなり……溺れていた。
 ゴガボゴガボ……

 のぞき部に勧誘されただけだけど、『レイディス・アルフェイン、戦死』