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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

リアクション

浮島の一つにおいて、ただ一人で魚人に向かいていたのは、イルミンスール魔法学校のウィザード、ノエル・カサブランカス(のえる・かさぶらんかす)である。
 力技では勝ち目は無い、故に大きく拳を振りかぶれば避けるに徹し、避けては火術を放っていた。水中を生きる魚人にとっても、陸上における火への耐性は皆無であるようで、火術は避けては警戒の目で睨みつけていた。
 ノエルが4度目の火術を放った時、これまで大きく避けていた魚人が火術に向かって突進を始めた。ノエルが大きく瞳を開かされたのは、この直後、魚人が地面を抉って岩と土とを巻き上げたからである。
 無論、それで火術は防ぐ事は出来ない、がしかし、視界を奪う事、またノエルの動きを止めるを成していた。紙一重で火術を避けた魚人がノエルとの間合いを一気に詰める。
 迫る拳、ノエルの体は硬直したままだ…… と見せていた。
 ノエルは小さく笑むと、バーストダッシュを用いて魚人の拳を避わし、そのまま魚人の背後に付いて力一杯に火術を叩きこんだ。
 魚人は悲鳴を上げながら喘ぎ駆けて、一直線に海へと飛び込んだ。
「逃がしません」
 魚人を追いて海へ飛ぶ姿勢を作り踏み込んだ所でノエルは再び瞳を見開かされた。海へ飛び込んだのとは別の魚人が水面の真っ向から飛び出して来たのだ。そして拳を構えている、こちらは、間に合わない、思考と時間一瞬に止まっていた。
 不意にお腹に腕が回って体を引かれた。同時に後方左右から放たれた氷術が、拳を振りかぶった魚人を襲っていた。魚人は海へと飛び落ちて行った。
 氷術を放ったのは百合園女学院のウィザード、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)とパートナーのセシリア・ライト(せしりあ・らいと)であり、ノエルを陸へと引き戻したのは、同じくメイベルのパートナーでローグのフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)であった。
「お体は大丈夫ですか?わたくし、強く引き過ぎましたでしょうか」
「あ、いや、助かりました、ありがとうございます」
「海に飛び込むなんて無謀だよ、僕らは僕らの有利な所で戦わないと。ねぇ、メイベル」
「魚人さんたちも仲間で動いてるみたいですし、厄介ですけど、でも、やりやすくはなったですぅ」
 そう言ってメイベルとセシリアは背中合わせになりて、星のメイスを共に構えた。
「陸に上がってくる困ったさんは私たちが相手になるですぅ」
 笑顔を見せて瞳は鋭く。フィリッパもハンドガンを構えてノエルの前に立った。


 浮島での戦いを組織的に行っているのは波羅蜜多実業高等学校のウィザード、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)と3人のパートナーである。ガートルードは陣形を築いた時点で、辺り一面にアシッドミストを放っていた。視界は霧に包まれていた。
 島の縁、水中から見える位置には、ホワイトアーマーを着たナイトのパトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)が立っていて、水中からの魚人の氷術はパトリシアと、セイバーのシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)がことごとく迎撃する事で効果が無い事を匂わせていた。
 すれば魚人たちは海の中から飛び出して来るのだが、そこへはウィザードのネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)の雷撃が待っている。
 魚人たちも単体ではなく各戦線に集まり始めたようだ。
 陸上に生徒側の本陣があるわけでは無いのだが、突破はさせまいと守るガートルードたち、そして突破する事に躍起になってきている魚人たち。魚人たちの注意を集めるという目的は十分に達している。ガートルードとブレイロックは前衛であるウィッカーとパトリシアにドラゴンアーツをそれぞれ唱えていた。


 生徒たちの本陣からも見える浅瀬の先で、何やら暴れているのはイルミンスール魔法学校のウィザード、ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)のようだ。彼は縄で縛られていた。
「おい! 待て! 止めろ、上手く行くはずが…… がっ」
 ブレイズのパートナーで、ナイトの成田 甲斐姫(なりた・かいひめ)がブレイズの口に含気錠を押し込み飲ませた。
「よし、完了じゃ、ロージーや、頼んだぞ」
「了解です、飛ばします」
「んなぁっぁぁあぁぁあ」
 セイバーのロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)はハンマー投げの如くにブレイズを海へと投げ飛ばした。ブレイズが沈んでゆくのを見てから、二人は網の準備にかかった。
 しばらくは動きを止めて漂い沈んだ。無茶な指令通りなのだが、それだけではない、ブレイズ自身、魚人に見つからなければ良いと思っていたのだ。それなのに。
「ん? うぉっ、魚だけに? って、止めろ、来るなぁ」
 心の中の大絶叫も虚しく、集まりて移動していた魚人たちがブレイズに気付いて寄って来たのだ。
 人質? リンチ? それとも愛してくれる?
「くそっ…… 、やってやるぜ」
 ブレイズは雷術を放った、海の中で、己が身を守る為に、海の中で。道連れを狙った放電のようで、ブレイズ自身も白目をむいていた。
 水中での放電が3度目になった時、浅瀬の2人は20メートル四方の網を海へと投げ放った。沈み、一帯を包んだ網を2人は一気に引き上げた。
 網の中にはブレイズを始め、6体もの魚人がかかっていて、一様に白目をむいていた。
 ロージーがブレイズにSPリチャージをかけている所で、ふとブレイズが目を覚ました。
「ん? ロージー、あれ? 僕は何をして……」
 すぐに思い出して、ロージーの行動からも読みを成した。
「SPリチャージって事は、またやらせる気か!! もうやらないぞ!!」
「含気錠は、あと2つある。大丈夫じゃ」
「大丈夫じゃない! ようし待て! 大丈夫じゃない!!」
 縄に縛られたまま抵抗を見せるブレイズを2人が取り押さえようとした瞬間の隙が余計であった。魚人たちが目を覚ました事に気付くのが遅れたのだ、故に本陣に向かって魚人たちが襲いかかるのを止められなかった。
 ウィザードの七尾 蒼也(ななお・そうや)は、いち早く本陣の前に立ちはだかると、氷術を放って氷の壁を作り上げたが、拳の一撃で粉砕された。しかし粉砕した魚人は先頭で来る事になった訳で、突進してきた所に蒼也のパートナーであるラーラメイフィス・ミラー(らーらめいふぃす・みらー)がホーリーメイスを振り降ろしていた。
「グレッグ!」
「了解です」
 イルミンスール魔法学校のセイバー、姫神 司(ひめがみ・つかさ)がパートナーのグレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)の名を呼ぶと、その一言でグレッグは司にパワーブレスをかけた。エペを構えた司は魚人の一人にツインスラッシュを放つ。鋭く素早い閃撃は深い傷を負わせる事は出来なかったが、魚人の一人を引きつけるには十分役割を果たしていた。
 ウィザードのセレンス・ウェスト(せれんす・うぇすと)は火術を放って魚人の一人の足を止めたのだが、パートナーのウッド・ストーク(うっど・すとーく)がロングスピアを振りかぶったまま、直前で動きを止めてしまっていた。どうやら魚人の威嚇に委縮してしまったようだ。
「ウッド、どうしたの? 攻撃しなよ!」
「いや、それが…… 、怖そうで……」
 魚人はウッドの腕を掴むと、グルグルと振り回してアリシアとルファニーの方へと投げ飛ばした。
 魚人が2人、本陣へ辿り着こうとしていた。急に起こった戦線発生と混乱、そして迫ってくる魚人が目に入り、ウィザードのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)は眉をヒクヒクと引き攣らせていた。
「こんなの、こんなの全然、ファンタジックじゃなぁぁぁい!!」
「ウィル、それは待って……」
 パートナーのシルヴィット・ソレスター(しるう゛ぃっと・それすたー)の制止も間に合わず、ウィルネストはサンダーブラストを放っていた。辺り一面に雷撃が降り注ぐ。シルヴィットがウィルネストを抱き止めたが、そこへ魚人に投げ飛ばされたウッド・ストーク(うっど・すとーく)が突進してきて…… 。
「んなぁぁぁぁぁあ!!」
 ウィルネストは完全に我を失い、所構い無くサンダーブラストを放っていった。雷の雨が落ちてくる、砂は舞い上がり、戦闘どころではない、混乱、避難、追撃と迎撃、待機と回復。それぞれに取る行動は違えども、混乱に乗じて、ルファニーが一人、森の方へと隠れ向かっていた。その事に気付いたは、蒼空学園のシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)を含めて数名いたのだが、ルファニーの様子があまりにも不自然だと、みなが一様に思ったのだろう、誰もがそっと後を尾ける事を選択したのだった。


 遂に浜辺でも戦いが起こったか、大変だねぇ。
 蒼空学園のソルジャー、閃崎 静麻(せんざき・しずま)は岬の先で釣り竿を握っていた。その後ろではパートナーでセイバーのレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が落ち着かない様子で静麻に投げ掛けた。
「あのっ! こんな時に呑気に釣りをしている場合では無いと思うのですが! 私、何か間違っていますか?!」
「あれ?俺が魚や魚人を釣ろうとしている、とでも思ってる? ん、まぁ、釣れるなら、それでも良いけどね」
 首を傾げるレイナに静麻は表情を変えずに続けた。
「釣るのは騒ぎの中で動く奴、それから動く事で得をする者だ、それを見つけたり見極めるには、現場に居ながらにして客観的な分析をする必要がある、だから……」
 不意に静麻は言葉を止めて、体も止めて。離れた岩場を見つめたまま、ゆっくりと笑みを浮かべていった。
「ほら、釣れたみたいだぜ」
 レイナが静麻の視線を追った。2人の視線の先で、一つの人影が岩場の奥へと消えていった。