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【2019修学旅行】京料理バイキング

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【2019修学旅行】京料理バイキング

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第四章 宴会場でのバトルロワイヤル


「どうやら無事に料理は出来たようね。他校の生徒たちもゲストに来てるんだから、まずかったりしたら明日はわかってるでしょうね」
 そんな環菜の挨拶で幕を開けたバイキングの夕食会。
 環菜の隣にはガードするようにパートナーのルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)が付き添っていた。
「理事長、もう食べていいですか?」
 花魁衣装で仮装したリュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)が環菜の前に立った。
「好きにしなさい」
 環菜は興味なさげだが、ルミーナは見事なリュ―スの花魁姿に感心していた。
「ステキな衣装ですね」
「みんなに仮装させられてしまって」
「リュースさん、これ左之助兄さんたちとつくったんだ」
 真が【揚げレンコン餅の椀物】をリュースに差し出した。
「これを。じゃ、早速いただきまーす」
 レンコン餅を美味しそうにほおばるリュースを見て、京子や左之助も満足だった。
「この田楽、すげぇいい匂いがしてるぜ」
「ふむ……これが日本の。いや、京都の食文化か」
 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)とパートナーのアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)は目の前で焼かれる生麩田楽に興味津々だった。
「もう少しまっててください。アツアツのを出しますから」
 炭火の上で田楽をあぶる義純も手ごたえを感じてまんざらでもなかった。
「はい、どうぞ」
 壮太はラルクにカレー味噌田楽の乗った栗麩を手渡した。
「うまい、うまいぜ」
「カレー味噌か、これはアイデアだな」
 ラルクとアインの褒め言葉に、手伝いをしていたアリスやミミ、エマたちは手を取り合って喜んだ。
「やったね、エマ」
「喜んでもらえてなによりです」
「それ、僕も手伝ったんだ」
ラルクはミミの頭を撫でた。
「たいしたもんだぜ」
「うん、これはなかなか。おかわりいいですか?」
 いつの間にか田楽を食べていたリュースは遠慮なくおかわりを頼んだ。
「いい食べっぷりだな、花魁」
「まだまだいけます」
 リュースに刺激され、ラルクも火がついた。
「俺にも頼むぜ」
「勝負といくか?」
 なぜかアインも参戦してのフードバトルが始まってしまった。



 和気藹々とバイキング料理を楽しむ生徒たちだが、給仕担当の清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)はのんびりも構えていられなかった。
「目が回る忙しさだねぇ」
「さすがにこの人数では無理でございます」
 琳 鳳明(りん・ほうめい)も思わず文句をもらした。
「だって食べる人がこれだけ多くちゃしょうがないわよ」
「それだけ喜んでくれてるってことだよねぇ」
「みんな笑顔でございます」
「だって料理おいしそうだし」
 つまみ食いしようとした鳳明を、北都が制止した。
「ご褒美に料理長が特別の賄いを作ってくれるって」
 鳳明は渋々納得したが名残惜しそうな顔だ。
「現在の作戦進行率は60パーセントであります」
 比島 真紀(ひしま・まき)は敬礼しながら鳳明たちに報告した。
「あ、うん。お疲れ様」
「でも、見てるだけってお腹すくな」
 弱音を吐いたパートナーのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)に真紀の叱責が飛んだ。
「貴殿、泣き言を言っている暇があったら手薄な東へ回るぞ。自分たちにはやるべきことがあるのだ」
「でもさぁ、お腹すいて」
 サイモンは料理が気になって仕方なかった。
「作戦が遅れる、行くぞ」
 真紀は強引にサイモンを引きずっていった。
「休憩したら?」
 鳳明の言葉を真紀は丁重に辞退した。
「戦場では一瞬の油断が命取りであります」
「がんばってねぇ」
 北斗は真紀たちに手を振って見送った。
「北都くん、ゆっくりしてる暇はないみたいだぜ」
 会場をまわっていた如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は、下げてきたグラスと新しい飲み物を交換した。
「じゃ、私もいってきます」
 鳳明も北都やクナイたちに短い挨拶を交わすと、生徒たちの間をかいがいしく世話して回った。
 彼らは給仕だけが仕事ではない、会場でハプニングが起こらないように目を配るのも仕事だった。
「どうしたんだ、しょんぼりして」
 佑也は【うずみ豆腐】を前にしょげかえるセルファとファルチェに気がついた。
「失敗してしまったの……」
「どうも申し訳ありません」
 彼女たちのおかげで一部スパイシーな出汁になってしまった【うずみ豆腐】はまったく人気がなかったのだ。
「……もっと自信を持ったらどうだ?作った本人がその様子じゃ、出来上がった料理に対しても、それを食べる相手に対しても失礼だろう」
 佑也は【うずみ豆腐】のお碗をトレーに載せると、配ってきてやるよとセルファの肩を叩いた。
「よし、私たちもがんばろう」
 そんな二人のがんばりによって被害者がわずかに増えたことは言うまでもなかった。
「しまった・・・・・・」
 生徒たちの反応で佑也は失敗を悟った。
「これは・・・・・・かなり個性的だな」
 自らも味見した佑也は冷静を装いながらも口のヒリヒリが収まらなかった。



 バイキングが最大のチャンスと狙っていた涼司たちは、食事を楽しむふりをしながら環菜との距離を計っていた。
 もちろん環菜を狙うのは彼らだけではない、他校のカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)とパートナーのジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)もチャンスを待っていた。
「ぜったいに恋の文字を書いてやるんだもん」
 おでこタッチの噂はカレンに間違って伝わっており、恋のかなうおまじないと彼女は信じ込んでいた。
「カレン、どうやらライバルは大勢いるみたいだな」
 ジュレールは料理を取るふりをしながら、さりげなくカレンに目配せした。
「服の下に光学迷彩を着てるってことは、教導団ね」
 気配に気づいたのか、国頭 武尊(くにがみ・たける)はカレンに振り返った。
「気のせいか……メガネ野郎と面識があればよかったんだが、まぁなんとかなる。こまけぇこたぁいいんだよ」
 単独で行動するだけあって武尊も隙がない。
 彼もまた勇者になるチャンスを狙っていた一人だった。
「独りで挑戦なんて、自信ありってとこ?」
 カレンは武尊に正面から近づいた。
「宣戦布告のつもりか」
 対峙した武尊とカレンの間に見えない火花が散っていた。
「宇都宮さん、こっちです」
 夏樹からの応援要請を受けた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は夕方になってようやく会場に入れた。
「ごめんね、夏樹。準備に手間取って」
 祥子は光学迷彩対策にと用意した鈴付きの紐を見せた。
「でも、この会場だと全部に仕掛けるわけにもいかないわ」
「そこはもう人海戦術ですぅ」
 百合園女学院の制服を着たメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が祥子の前に立った。
「環菜様の背後の警備は、わたくしが守りますわ」
「絶対に書かせないんだもん」
 メイベルのパートナーフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)もやる気充分だった。
「とにかく警戒を怠ってはいけませんですぅ」
「そうね、最善の手をつくして守りましょう」
 祥子もメイベルも環菜を守れるようにと適度なポジションへ散っていった。
「大丈夫ですか?」
 刀真は月夜にねぎらいの言葉をかけた。
「刀真こそ油断しないで」
 顔が判明している総司や悠の警戒に当っているので緊張が続いていたのだった。
 そんな一触即発の空気の中を、飲み物を取りにバイキング会場へ来た愛美と未沙が環菜のすぐ近くへやってきてしまった。
「あれ、環菜さん。さっきお茶席にいたはずじゃ」
 環菜が愛美の言葉に振り返った瞬間、ついにおでこタッチバトルの幕が切って落とされた。
「正面から行くぜ!」
 マジックを隠さずに握ったベアが正面から環菜に走った。
「そうはさせないですぅ」
 メイベルはセシリアと共にベアの前方に立ちふさがった。
小娘たちか、お前らから肉と書いてやるぜぇぇ」
「正義の名にかけてそうはさせん」
「後にもいますわ」
 牙竜とフィリッパがにバックを抑えられ、ベアは容易に動けなくなった。
「今だ!」
 会場が騒然となり、チャンスと見た武尊が光学迷彩のスイッチを入れた姿を隠した。
 カレンも騒ぎに乗って、環菜の背後へと走った。
「夏樹、油断しないで」
 祥子は指示を与えながら、環菜のすぐ脇を固めた。
「ここから先は通さないんだもんね」
「ここは通しません」
 警戒していたルカルカや刀真の動きも速かった。
「またお前らかよ」
「そろそろ決着つけますか」
 コースをふさがれた総司や悠との間で小競り合いが始まった。
「いけ、ベルナデット!」
 チャンスを窺っていたトライブがパートナーのベルデナットを環菜に投げつけるが、若干方向がずれた。
「キャ! あなた、誰?」
 ベルデナットをキャッチしたのは愛美だった。
「肉と書くのじゃ」
 間違ったと気がつかないで愛美のおでこに【肉】と書いてしまうベルデナット。
「いやーん」
 武器や魔法を使用し始めた者がいたために、会場はもうメチャメチャだった。
「危ない、ミサ」
 レイディスはひっくり返ったテーブルから美沙をかばった。
「レイちゃん……」
 料理を食べにきただけの生徒たちも防戦しないと身に危険が及ぶような状況になっていた。
「いかせないわ」
 鈴付きヒモにかかった武尊を祥子は見逃さなかった。
「ち、いいところで」
 カレンはチャンスとばかりに出し抜こうとするが、夏樹がコースを塞いだ。
「ボクだってこれくらいはできます」
「あぁ、邪魔しないでよ」
 最大のチャンスに涼司は環菜に向かって走った。
「環菜、すまん」
「待ってそれは」
 ルミーナの叫びも涼司にはもはや届かなかった。
「く、先を越されたか」
「あぁん、私の恋が!」
 敵味方の視線が注がれるなか、涼司は国頭とカレンの間をすり抜けてった。
「みんなの協力は忘れないぜ」
 涼司は環菜と交差する一瞬、油断しきっていた彼女のオデコに【肉】の一文字を書ききった。
「勝った……」
 勝利を確信した涼司を裏切るかのように、突然全てのドアが外から閉められた。
「な、何? どうなるの?」
 不安げに周囲を見回す愛美にスプリンクラーから放水が浴びせられた。
「キャー!」
 会場の天井にある全てのスプリンクラーから放水が始まり、生徒たちの悲鳴が会場にこだました。
「どうなってるんだ、環菜」
 振り返った涼司は床に落ちている人型の紙片を拾い上げた。
「式神……やられた」
 すべて環菜の手の上で踊らされていたと知った涼司は、冷水で頭を冷やすしかなかった。



 びしょびしょの濡れ鼠になった愛美をお菓子作りのメンバーが心配して取り囲む。
「どうしたの、その格好」
 驚く優斗たちだが、何が起きたかわからない愛美も説明の仕様がなかった。
「タオルで身体拭いてください」
 ウィングはタオルを愛美に渡した。
「あれ、零さんは?」
「逃げました……じゃなくて、用事を思い出したとかで」
 葉月の説明に愛美はがっかりした。
「そうなんだ……今日は濡れるし、肉って書かれるし散々ね」
 実は零は気になって戻ってきていたが、愛美の様子に物陰から出るタイミングを失っていた。
「で、出れん・・・・・・」
「でも、マナ。一生懸命作った栗茶巾があるもん。今夜出会いがあったらチャンスだよね」
 マリエルの励ましに気を取り直そうとする愛美を、まだ不幸は襲った。
「なかなか美味しかったわ」
 環菜が栗茶巾の最後の一個を口に入れた。
「あ、それ最後だから取り分けてあったやつです……」
 踏んだり蹴ったりの出来事に愛美はとうとう泣き出してしまった。
「ボクもそれはひどいと思います」
 ヴァーナーの最もな指摘に周囲も同調した。
「置いてある方が悪いんでしょ」
 環菜は堂々と開き直るが、みんなの視線はかなり冷たかった。



 翌日、座禅堂には蒼空学園の生徒たちが居並んでいた。
 結局、ホテルの宴会場をメチャメチャにしたこともあり、午前中だけ座禅を組むことになったのだった。
「カンナ校長先生、これが日本スタイルの反省ですか?」
 どこか勘違いしたヴァーナーはいたく感動しているようだった。
「体験よ、体験。生徒会長なんだからしょうがないでしょ」
 やりすぎて愛美を泣かせた環菜は反省してないと言いつつ、一緒に座禅を組んでいた。
「隙あり!」
 警策の担当になった如月 玲奈(きさらぎ・れいな)は大張り切りしていた。
「玲奈、隙があるとかどうかではありません」
 パートナーのレーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)は玲奈がやりすぎないよう気が気でなかった。
「君も油断してるよね」
 ショウを見つけた玲奈はもう叩きたくて仕方なかった。
「なんだ、油断って」
「問答無用だもん」
 ショウは玲奈の警策を真剣白刃取りで掴んだ。
「あ、掴むのは反則だもん」
「ふざけんな」
「こうなったら・・・・・・二刀流」
 玲奈は反対の手にも警策をもった。
「それのが反則だろ」
 ショウは思わず逃げ出した。
「待て〜」
「いけません、玲奈」
 玲奈はショウを追いかけて座禅堂を走り回った。
「すいません、ショウが」
 アクアから頭を下げられ、レーヴェは余計に頭を痛めた。
 精神修養を営むはずだったのに、なんだか目的はすでに大きくずれてしまっていた。
「なんか違うよな……」
 涼司のつぶやきが山間の静寂の中へと小さくこだまして消えた。

担当マスターより

▼担当マスター

一生

▼マスターコメント

 みなさん、はじめまして。今回リアクションを書かせていただいた一生です。
参加していただきまして本当にありがとうございます。皆さんのアクションのおかげで、楽しくリアクションを書くことができました。
至らない点もあったと思いますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
 今回はみなさんにアクションに応じて【料理長のおほめ】や【おでこタッチまでもう少し】などの称号を出さしていただいてます。
他にも、人によっては何かの称号が付いているかもしれません。
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。