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テスタ先生の研究成果

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テスタ先生の研究成果

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5.終結

 ようやく落ち着きを取り戻したイルミンスール魔法学校。

 だが、いろいろな思惑を持っていた生徒たちは、この結果を喜ぶもの、がっかりするものと様々だった。

 まず、テスタ先生の研究室に忍び込んだヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)は、まんまと設計図を盗み出した。

「うまくいったわ♪ さあこれをパラ実の優秀な技術者に見てもらわないと」

 そういって、ヴェルチェは走り去っていった。

 しばらくして、テスタ先生が研究室に戻ってきて、図面がなくなっていることに気づいた。

「あれ、図面がなくなっておる。ま、いいか。あれは我が家のリフォーム予定図だから、なくなっても建設会社にもう一度もらえばいい」

 ・・・・・・パラ実に戻ったヴェルチェ・クライウォルフが、歯噛みして悔しがったのはいうまでもない。


※ ※ ※



 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、本に戻ってしまったロボットの絵を見て残念そうにつぶやく。

「あーあ、このロボットに乗って帰りたかったのになぁ」

 これを聞いた朝野 未沙(あさの・みさ)は、気持ちをぶつけずにはいられなかった。

「ガートルードさんなんか、まだいいほうよ。あたしなんか、30輌も作った戦車がみんな消えちゃったんだから・・・・・・あれを解体して、詳細な記録をつけるつもりだった。それだけじゃなくて、そこから得られたデータを将来のために保存する計画までしてたんだよ。それなのに・・・・・・」

 朝野 未沙をなぐさめるように、白銀 昶(しろがね・あきら)が声をかける。

「おまえも残念だったな。オレだって本当は、プラティコを有効活用したかったんだぜ。あれを開発者のテスタ先生のところに持っていって改良してもらえば、ちゃんと使えると思ったからね・・・・・・で、うまく改良できたら、オレがもらいたかったんだけどね」

 これを聞いたルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)は、白銀 昶に同意するようにうなづいた。

「今回の件では、開発者が泣くかも知れませんが、次はこれを教訓にちゃんとしたものを作っていただきましょう。ね、グレゴリ翁」

「ん? ううん」

 グレゴリア・フローレンス(ぐれごりあ・ふろーれんす)は、いかにも生返事という相槌を打ちながら、チラチラと本に目をやっている。

「もう・・・・・・いつまで他学に居座る気ですか。さ、教導団に帰りますよ」

 ルイス・マーティンはそういうと、グレゴリア・フローレンスの首根っこひっつかんで歩き出した。

「あー! 待て、待て! せめてもう一冊! ううう、良い所じゃったのにぃ・・・・・・」

 サクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)は、これをみて、クスリと笑う。

「かわいいものですねー」


 そこへ、オフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)八神 誠一(やがみ・せいいち)を追いかけて走ってきた。

「待てー」

「うわぁ、なんでこうなっちゃうの? 姿隠しのマントかぶっていたのに、突然見えるようになっちゃうなんてヒドイ」

「さあ、つかまえた。プラティコが破壊されたから、実体化したものたちはみんな本に戻ったんだよ。いざ、俺様の正義の鉄槌を受けてみよ」

「ギャーッ」

 ふたりのやりとりを見て、周りのみんなは笑っていた。


「さあ、一件落着したことだし、みんなでおいしいお茶でも飲もう」

 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)はこういうと、パートナーの仁科 響(にしな・ひびき)熊谷 直実(くまがや・なおざね)と一緒に、柔らかい陽光が降り注ぐ校舎の中庭で、ゆっくりと茶を喫していた。

 おわり

担当マスターより

▼担当マスター

ヴァイオリン弾き

▼マスターコメント

 こんにちは。マスターのヴァイオリン弾きです。

 今回のお話は、本の中身をなんでも実体化してしまう装置、プラティコ。

 最終的にはこれを壊そうか、壊すまいか悩みましたが、やはりイルミンスールの静謐を守ることが第一と考え、破壊させていただきました。

 また、ストーリーの流れの都合から、一部、プラティコへの取り込みを割愛させていただいた本もあります。
 何卒、ご了承ください。

 料理レシピ本を実体化させるという装置のお話でしたが、寒い時節柄、みなさまも食べすぎにはくれぐれもご注意ください。