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リアクション
第4章 美を極めろ! 雪像創作
「こんなに大量の雪があるんだ、何か作るか・・・」
国頭 武尊(くにがみ・たける)は造形の対象を何にしようかと周囲を見回す。
「どうせならあの校長にするか」
静香の雪像を作ろうと彼女たちの方へ近寄る。
「ちょっと携帯で撮らせてもらってもいいか? 雪像を作るイメージ写真を撮りたいんだ」
「えっ、ボクを作ってくれるの? 嬉しいな♪」
携帯のカメラ機能を使ってパシャパチャッと何枚か撮った。
「まずは元を作らねぇとな」
対象の背丈に合わせて削りだすための立方体を作り、完成予想図を頭の中で思い浮かべながら、カラースプレーを使って当たりをつける。
「そんでこいつで大まかな削りだしをっと」
血煙爪でガリガリ削っていく。
「よし・・・細かい部分は彫刻刀を使うか」
烏口を使い慎重に目元を彫りだす。
「あなたなかなかやるわね・・・」
静香の雪像を作ろうとしているアピスが武尊の方へやってきた。
「そうかい、キミも頑張れよ」
「私も負けてられないわ!」
彼の芸術センスに負けていられないと思ったアピスは闘志を燃やす。
大好きな静香校長のために等身大の雪像を作ろうと、雪を大量に集めてドラゴアーツのパワーでギュウゥーッと圧縮する。
削りだす元となる高さ2m縦1m横1mの雪の柱を作り上げた。
「ふふふ静香さんの反応が楽しみだわ」
雪の柱を1.5mのランスの先を使い、静香の姿を思い出しながら彫りだしていく。
「―・・・ふぅ、やっと出来た」
「そんじゃあ呼んで来ようぜ」
「えぇ、せっかく作ったんだから見てもらいたいわ」
武尊とアピスは雪像のモデルの静香校長を呼び、見てもらうことにした。
呼ばれた静香は芸術的に作り上げた武尊の雪像と、アピスが作った氷像になってしまった雪像をじっくり見つめる。
「わぁ〜凄いなぁー・・・上手だね!」
武尊の芸術センスに静香は目を丸くして驚く。
「(どうしよう・・・出来栄え比べちゃうと私の方は・・・)」
グスンと涙目になるアピスの黒い髪を静香がそっと撫でてやる。
「ありがとう嬉しいよ♪」
「ほ・・・本当に?」
「うんっ」
泣き出しそうになっていた瞳を片手で拭いアピスは笑顔になった。
「おっと、蛇足な部分があったぜ」
明らかに静香にない部分を作ってしまい、その箇所を血煙爪で削る。
胸の部分を削り落とし平らにし、“ぺったん ぺったん つるぺったん〜♪”と歌う。
「これでおっけぇだぜ」
「そうだね・・・そんなにないのに変だなぁと思ってたし」
ぺったんこになった自分の雪像を見て苦笑する。
「人物の雪像もいいですが、やっぱり城でしょう城!」
彫刻刀を手に浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は白銀の雪をズビシィと指し示す。
雪像ではなく氷像を作ろうと彫刻刀を握り締めてやる気の炎を燃やす。
「やっぱり翡翠、思いっきりはしゃいでるわね」
北条 円(ほうじょう・まどか)が傍でボソッと呟くが、もはや翡翠の耳には入らなかった。
「作ってみたんだけど、よかったら食べてみない?」
自慢の料理の腕を奮い、オシャレにお皿へ盛り付けたロールキャベルをミルディアが差し出す。
「美味しいですね」
「何か入っているの?」
「フッフフ〜、チーズとピーマンを入れてみたんだよ♪」
あっとゆうまに食べきる翡翠たちの姿に、ミルディアは満足そうに微笑む。
「雪像を作っているの?」
「えぇそうですよ」
「面白そうだけどちょっと難しそう。傍で見てていいかな」
「いいですよ」
「雪ぃーいっぱい持ってきたよ」
円は空っぽのダンボールの中に雪を詰めて持ってきた。
「まず建築の基本は土台ですよね!」
集めてきてもらった雪を土台作りに使う。
「だいたいの形はできてきたね」
「後は細かいディティールですか・・・。この辺は破壊工作を応用して・・・ぽちっと。はぅああっ!?」
「ひゃぁあっ!」
爆音に驚いたミルディアはパイプ椅子からビクッと飛び上がる。
「見事に砕け散ったね」
火力を強すぎたせいで、途中まで作り上げた城が粉々に砕け散ってしまい、きらきらと氷の欠片が飛び散る。
「綺麗〜に散ったねぇ」
「また最初から・・・」
「元気だして、また雪集めてあげるから」
両手を雪についてがくっと肩を落とす翡翠の肩に、慰めるように円がぽんっと片手を置く。
「そうですねっ、また作ればいいんですよね!」
「(立ち直り早っ!!)」
芸術創作に燃える翡翠のために円はせっせと雪を集めてやる。
「―・・・出来ました!」
ちょんまげをゆった殿様が住んでいそうな日本の城を模った氷像が完成した。
城のてっぺんの屋根瓦の上には虎っぽいシーサーが2匹いた。
「すごぉーい上手だね」
出来上がりを見届けたミルディアがパチパチと拍手する。
「記念に携帯のカメラで撮りましょう」
「撮ってどうするの?」
円が首を傾げて聞く。
「もちろん・・・待ち受け画面にするんです!!」
力いっぱい上げる声のエコーが森中に響いた。
「アングルはこの辺がいいですね」
決めポーズをつけパシャリと撮る。
「いい感じですね」
満足そうに言う翡翠の姿に、円は温かい眼差しで見つめた。
「見て楽しむのもいいけど、ボクは遊べるやつにしようかな」
スリル満点の雪ソリコースを作ろうとカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)はせっせと雪を集める。
「ただの滑り台にするわけではないのであろう?」
カレンの傍にいるジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が設計図を見ながら聞く。
「アップダウンのある超〜絶叫系にするんだよ」
「ふむ・・・。(気絶する者がでなければいいが)」
「ここでくるくるーっと2回転して・・・100度くらいの角度で落ちていく感じにしようかな」
「それだとアールの丸みをつけないとな。でないと自爆するようなものだ」
「ちゃんと考えてあるわよ。エリザベート校長たち、涙が出るほど喜んでくれるにちがいないよ!」
喜びの涙よりも恐怖の涙が多くなりそうだと、ジュレールは深くため息をついた。
「2方向で滑る感じにしようかな。こっちだとパーティー会場・・・そっちだと学校方面にしようか」
パーツを作り雪と水を混ぜた接着剤でくっつけていく。
重いソリをゴーレムに運ばせ、ジュレールの加速ブースターをつけた。
「うん、こんなもんかな?雪ソリコースを作ってみたんだ、一緒に遊ぼうよ♪」
静香と一緒に滑ろうと声をかけた。
「スイッチ入れるぞ、準備はいいか?」
「おぅけぃ〜・・・って早っ!」
3秒程度でスタートするかと思いきや、1秒でスタートした。
時速60kmのスピードで進むソリに、静香はきゃぁきゃぁと悲鳴を上げる。
「(あともうちょい・・・)」
カレンが静香の胸へ手を伸ばす。
「怖いよぉおお〜!」
「うっぐふぁ!!」
振り回す静香の拳がカレンの顎にガツンッと当たった。
「うぁあん〜怖かったよぉー」
ゴールにつくと静香は泣きじゃくってしまい、カレンの方は拳をくらった衝撃で気絶していた。
「どれも美味しいね〜」
ルーナ・フィリクス(るーな・ふぃりくす)はシチューを食べながら雪像鑑賞をしていた。
「人物は両方とも静香校長ちゃんだね」
弥十郎が作った海鮮あんかけ炒飯をむしゃむしゃと食べ、セリア・リンクス(せりあ・りんくす)はエリザベートの雪像がないか探す。
「見てみて、お城があるよお城!」
「えぇ、どれどれ!?」
パートナーに呼ばれてセリアが駆け寄ると、日本的な城の雪像が堂々と立っていた。
「作ってみたんですが、どうでしょう?」
鑑賞しているルーナとセリアに気づいた翡翠が声をかける。
「凄いねぇ〜ここの窓とか細かい・・・」
「中をよく見てみてください」
「何かあるの?」
ルーナが小さな窓をじーっと見つめると、そこには小さな殿様がいた。
「ちょっと触ってみたいな・・・」
「崩れちゃったら大変だよ!」
「むぅそうだね」
雪像に触れてみようとするルーナの手をセリアが止める。
「あっちにも何かあるよ」
セリアの指差す方へ行ってみると、絶叫ソリコースがあった。
「ちょっと滑ってみない?」
カレンは笑顔で彼女たちに乗ってみるように勧める。
「安全だから大丈夫なのだよ」
「スリルがあって楽しいよ」
「―・・・セリアもう一度お城の方見てこようかな」
「私も・・・・・・じゃあねっ」
逃げるようにお城があった方へ駆けていく。
「楽しいのに・・・」
カレンとジュレールはぽつんと取り残されてしまった。
「ねぇねぇ食べ物もらってから行こうよ」
「そうだね。セリアあれ食べたい!」
「クレープね」
「いらっしゃぁ〜い、どれでも好きなのどうぞ」
雪像をもう一度見に行く前に、彼女たちはナナとズィーベンのクレープ屋へ立ち寄った。
「セリアはね、このイチゴとメロンと・・・グレープアイス、そんでクリームは生クリームのほうがいいな♪」
「どーぞ、落とさないように気をつけてね」
クレープの生地に包んでもらい、受け取ったセリアはさっそくパクつく。
「甘くて美味しい♪」
「私はね・・・グレープフルーツ。他は・・・どうしようかな。あっ砂糖漬けのレモンがあるんだね!それとバニラアイスとスポンジケーキ。クリームはカスタードにしようかな」
「はぃどうぞ」
「ありがとう!はむはむはぐ・・・」
ルーナはあっという間に食べきってしまった。
「食べるの早いねぇ。まだまだいっぱいあるから沢山食べてね」
「じゃあもう後2つちょうだい」
クレープを両手に持ち、ルーナとセリアは雪像鑑賞に戻っていった。
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