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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

リアクション

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 石化したホイップが窓から入った月明りに照らされている。
 床に転がるじゃわも氷漬けにされて痛々しい。
 皆がその姿に一瞬息を飲む。
「アハハ! いらっしゃ〜い。戦えなさそうな人発見だね」
 隠れ身で姿を消していたマッシュが突如現れた。
「ぐあっ!」
 まだ完治まではいっていないレンの首筋に口を持っていくと吸精幻夜を発動させたのだ。
 徐々に脇腹の傷が回復していく。
「誰が戦えないなんて言った!? 蹴るぞ」
 自分にくっついているマッシュへと蹴りを繰り出そうとする。
「ごちそうさま〜」
 それを見て、マッシュはさっと身を引いてかわした。
 マッシュはホイップの側へと行き、ニタリと笑った。
「あたしも交ぜてもらえるかしら」
 最後に部屋に入ってきたのはメニエスだ。
「星杖を奪いにきたわ」
 メニエスはすぐにエルへと攻撃を仕掛けようとするが、阻まれた。
「よぉ、初めましてイルミンから放逐された寄生虫女」
 メニエスの前に立ちはだかったのは陣だ。
「誰が寄生虫ですって?」
「寄生虫やろ? 余所様の血を吸って生きるクソだろうが。あぁ、ゴメンもっと適した単語あったから言い直す。蚊やね、蚊」
「やだやだ、吸血鬼こそ至高の種族っていうのが分からない奴と話すのは……流石にちょっとむかついたわ」
 メニエスがファイアストームを陣へと放つと、戦闘は開始された。

「オラッ! 食らいなっ!」
 武尊は光るモヒカンをマッシュに投げつけた。
 それをマッシュは手で払う。
 その隙に武尊は距離を詰め、ライトブレードで腕を切り付けた。
 しかし、傷は浅い。
 武尊はマッシュの側を離れ、元いた位置へと戻っていった。
「武尊さん、怪我はありませんか?」
 シーリルが聞くが、武尊に怪我は見当たらない。
「やってくれるじゃん」
 マッシュは武尊目がけて銃を撃った。
 弾は武尊の左頬を通り、後ろの壁にめり込んだ。
「こっちからも攻撃ですよ!」
 クロセルは武尊に気を取られてるうちにマッシュの横に移動していたのだ。
 横から投げつけたのは水風船。
 マッシュは当たる前にリターニングダガーで水風船を切り付けた。
 中から出てきたのは水ではなく、スライムだ。
 スライムはマッシュに少しかかり、魔力をほんのちょびっと吸収し、その役目を終えた。
「今度はこっちから行くよ」
 マッシュは天井へ一発撃つと何かのスイッチに当たった。
 天井からは槍が大量に降ってきた。
 マッシュやホイップの周りにだけ降らないだけで、あとはみな、必死に避けたり払ったりして対処した。
 槍の雨がおさまると、今度出てきたのはエルだ。
「いい加減ホイップちゃんから離れろ!」
 エルは光術を放ち目をくらませる。
 その後、直ぐにホワイトが加速ブースターで突撃してきた。
 まだ目が回復していないマッシュは避けられず、そのままホワイトの轟雷閃を受けた。
「やってくれるじゃん」
 ホイップの側を少し動いただけであまり変化がない。
 攻撃は受けているのでダメージは食らってはいるのだろうが。
 まだ目が完全に回復していないのを見て、終夏が氷術をマッシュの足元に放った後、火術をそこ目がけて放ち、水溜まりを作った。
「みんな、感電しないように気を付けて」
 そう言うと、水たまりにむかって雷術を放ち、マッシュに電気が走る。
「白バラの一撃を喰らえっ!」
 攻撃はまだ続く、ララが先端にホイップの石化薬を塗ったエぺでマッシュを突いた。
 石化にはならなかったが、腕に傷を負わせることに成功した。
「大切な友達を誘拐した罪は重いんだから!」
 カレンは槍で前回受けていた脇腹を刺す。
 ジュレールも援護でレールガンを撃ったが、目が回復した為か、弾を避けられてしまった。
 カレンは急いで下がる。
 なかなかホイップの側を離れようとしないマッシュ。
(ホイップ殿……)
 ホイップを見つめていたのは黎だ。
(秋……一緒に行楽に行ったときの笑顔が今は……)
 そう思い、胸が締め付けられている。
(じゃわ……必ず助ける)
「貴殿は不幸だな。こんな物が美しいというのだから!」
 黎はマッシュへ向かって言葉を投げる。
「石化こそ素晴らしいのに、それが分からない? ま、わかってもらおうとも思ってないけど」
 マッシュは銃を構え、黎に向かって撃って来る。
 撃ったと同時にマッシュは黎へと向かってダッシュし、払いのけようとした腕に噛みついた。
「何をするっ!」
 腕を払うとマッシュはまたもホイップの側へと戻って行った。
 先ほどまでの攻撃を少し回復されてしまったようだ。

 メニエスの放ったファイアストームは陣の代わりに真奈が受けた。
「無理すんなよ」
「はい。そんなことよりご主人様」
「ああ、わかっとる」
 陣と真奈はアイコンタクトをとると、今度は真奈がメニエスに言葉を投げつける。
「可哀相な人ですね……強欲で、自己中心の塊で……いえ、本当に可哀相だと思っているのですよ? そうやって駆け抜けた先には、孤独と虚無感しか残らないでしょうから。誰とも繋がる事無く、独りになるだけです。寂しい方ですね……」
「さっきの奴もそうだけど、会話の通じない相手と話すのはストレス以外の何物でもないわね」
 メニエスは真奈に向かって氷術を放つ。
 真奈はそれを避け、メニエスの懐へと入った。
 懐へ入ると同時に轟雷閃をぶっぱなす。
 メニエスも負けじと近距離から光術を真奈へぶつける。
 互いに後ろへ飛び、離れると膝をついた。
「あ〜ら、もう終わり?」
 メニエスは立ち上がると真奈へと言う。
「いえ、そちらこそやせ我慢されているのではないですか?」
 女同士の火花が散っている。

「ホイップ女史から離れたらどうだ?」
 恭司はマッシュの足元に奈落の鉄鎖を使用し、すこしだけ足をすくい体勢を崩した。
「勝機は今です!」
 ブラックコートで姿を隠していたリィムが小人の小鞄を使用し、小人をマッシュとメニエスの両方に向かわせた。
 2人とも動きが鈍くなる。
 マッシュへは泡がバーストダッシュで移動しながらホイップとじゃわを確保。
 ミレイユがサンダーブラストをマッシュへ向けて放ち、その後シェイドが実力行使を使用し、ナラカの蜘蛛糸で攻撃。
 猛攻はまだ続き、デューイがクロスファイアで狙いを脇腹に定め、撃ち抜いた。
「主様」
「……ああ」
 エレーナがヒロイックアサルト『幻惑の霧』で一瞬アシャンテの姿をぼやけさせ、マッシュが見失ったところで、アシャンテが背負った雅刀で腕を切り付けた。
「ホイップちゃんや皆にひどい事したの、ボク、すっっっっっっっごく怒ってるんだからねっ!!!」
 同時に繭螺も雷術をマッシュへと放った。
 マッシュの傷は深くなった。
「……やってくれるじゃん。ホイップは惜しいけど……じゃあね」
 マッシュは近くにある窓から飛び出し、空飛ぶ箒で逃げた。
 どこに居たのかシャノンも一緒だ。
「情報は集まりました?」
「十分だ」
 2人は夜の闇へと消えて行った。

 メニエスの方も、最後の攻撃となるだろう。
「星杖は渡さへんぞ、とっととカエレ!」
 戦闘を真奈と交代していた陣の準備が整った。
「爆ぜろ!」
 魔力を放射し、メニエスの体で固定し、爆発した。
 一瞬の隙が出来る。
「退いてもらいます」
 真奈はその瞬間にハウンドドックで攻撃を入れた。
「くぅっ!! ロザっ!!」
 悔しそうに天井を見上げ、大声を出す。
「は〜いっ! 待ってたよ〜!」
 屋根裏に隠れていたロザリアスがウォーハンマーで天井をぶち壊し、泡が確保しているホイップの頭上へとそのまま落ちてくる。
「きゃはは、壊れちゃえ〜!」
「ホイップちゃん!」
 エルは急いで駆けより、氷術で氷の盾をホイップの頭上に作った。
「ホイップ殿! じゃわ!」
 黎は泡の体毎ホイップの上に覆いかぶさり自分の身を盾にした。
 ロザリアスのハンマーは氷の盾を破り、黎の体に嫌な音をさせたが、ホイップを壊すには至らなかった。
「いつか必ず目に物見せてやるわ!」
「おねーちゃん待って〜!」
 2人も窓から逃げたのだった。
 こうして無事にホイップとじゃわの救出に成功した。