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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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3-02 謝罪

「??? これ なんのあそびー?
 あんまりおもしろくないー……」
「ルー。いいから、ルーもほらちゃんと、こう」
「るっ るー……」
 デゼルに頭を抑えられ、隣で同じくそうしているデゼル、ルケトと一緒に土下座するルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)。ルーの隣では、「クッ? クッ?」やっぱりよく意味がわかっていないが、皆が頭を下げているので、と自分も同じようにしているクー・キューカー(くー・きゅーかー)
「本当に、申し訳なかった」「申し訳なかった」「るー もうしわけなんだ」「キュ、キュー……」
「サージュ・ロワ殿……」サージュ・ロワとは、デゼルのこの地での潜伏時の偽名であった。「まぁ、頭を上げて下され」
「……」
 デゼルは、自らの考えが甘かったとばかりに、共に立ち上がってくれた勢力の者達に、合わす顔がないといった表情である。
 ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)も、またそうであった。
 ――……負けた……だと? ……蜂起の夜、劣勢になり、退かざるを得なくなった状況下でそう思っていた。ルケトも、戦い方を伝授しつつ、周辺の各勢力を回っていた。
「サージュ・ロワ殿。あなた方の気持ちはようわかった。
 ……じゃがな、再起は難しかろう。皆、今や黒羊郷の力を恐れとる。わしらは甘かったのじゃあ。
 蜂起に参加した勢力への追及が始まっておる。こぞって、黒羊郷から離れていく勢力もあるほどなのじゃ」
「……そうか」
「デゼル! ……いや、サージュ、オレは、まだやれるぞ」帰りの道で、ルケトはデゼルを励ますように、言う。「今度は勝てるように。もし負けても逃げおおせて、必ず今度は勝ってやるという気概が出るくらいの強さを求めて、シゴいてやる。鬼軍曹の心とやり方で」
「……ああ」
 デゼル……落ち込んでるなァ。ルケトも少しシュンとなってしまう。
 それも致し方なかった。先日の戦いに負けたこともあるし、すでに幾つかの勢力に謝罪して回ったが、どこも返答は同じで、再度の蜂起は難しかろうという者がほとんどであった。それに、皆の言うように、今度は敵が蜂起に関わった勢力を狩り始めている。
「……」「……」
 無言になる二人。
「るー るー!」
 ぱしぱし、ルーがデゼルを叩く。
「クッ、カッ。カッ!」「あ、い、痛いな! クーも……」ルケトの頭の上に乗っかって飛んだり跳ねたりするクー。
「な、なんだクー、ルーも。オレ達を励ましてくれてるのか? ……デゼル、ほら、オレ達が落ち込んでちゃ仕方ない。
 まだ、謝罪行脚は始まったばかりだぜ。行こう」

 そして、デゼルは、友イレブンとの再会を果たすことになるのだが……。



 敵にとって見逃せない蜂起であっただけに、痛手もそれなりに大きいものであった。
 先の謝罪の中でわかったように、再度の蜂起は難しいものと見て、ここを離れていく勢力も多い。
 一勢力として成長しながらも、(位置的に遠かったこともあって)同じ教導団のイレブン・デゼルらの蜂起との示し合わせも叶わず、孤立してしまったプリモも、そんな中の一つであった。
 黒羊郷が、周辺勢力の掃討を始めている。
 プリモ国王を僭称し、プリモ国王ともなったプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)は、それを察知すると国軍全軍を率い、黒羊郷を離れ、南へ大移動を始めていた。
 プリモはこのまま、ブトレバを攻め落としそこに居座るつもりでいた。ブトレバの兵力は、半数以上が水軍戦に向けられており、水軍では歴戦であるが陸戦に持ち込まば……
 勿論、黒羊郷はこれに気付き、追手を差し向け、民間人?や物資を連れた長蛇の列の後ろから横から攻め、その数を削らんとしていた。
 黒羊の水上要塞を横目に見ながら(水上要塞は改築中で、襲っては来なかった)、砂漠地帯に入り、南へ進むプリモ。
「はぁはぁ……わらわはもう駄目じゃ。蜂蜜水……」
 指揮官のジョーカー・オルジナ(じょーかー・おるじな)がプリモを励ます。
「プリモ。負けフラグを立てる心意気(?)はわかったが、まだちと早いぞ」