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【2020授業風景】カオスクッキング

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【2020授業風景】カオスクッキング

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第1章 やらしいやつら

part1 脱ぎすぎ


「私たちの班は、桃のタルトを作るのよね。もも……桃って何か卑猥だね」
 サラダを食べたリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)は、そんなことを言い出した。
「あはは、なんか体が火照ってきたみたい。ねーねーフォンさん、脱がせてえ」
 リースは、フォン・アーカム(ふぉん・あーかむ)にそうおねだりをする。
「全く、甘えんぼさんだな。ほら、もっとこっちにおいで」
 フォンは、そっとリースを抱き寄せた。
 今でこそ料理の効果から気障でいやらしい態度をとっているフォンだが、その実態は女が死ぬほど苦手で、貧乏なため常に飢え死にしかけている男だ。今回の調理実習にも、「タダ飯が食えるから」という他人とは少々異なる理由で参加していた。
「これで少し涼しくなっただろう」
「えへ、ありがとう」
 半裸になったリースは、満足そうに笑った。
「さ、じゃあタルトを作るぞ」
 フォンはバターをボウルに入れ、泡立て器でクリーム状にしていく。
「乙女の柔肌のように滑らかになるように、ね」
 そして、そこに砂糖と卵を加えたところで、わざと泡立て器でリースにクリームを飛ばした。
「きゃっ」
「おっと、すまない」
 フォンはリースについたクリームをハンカチで拭きながら、自然に彼女の後ろに回り込む。そして、後ろからリースを抱きしめるようにして、服の内側、胸元についたクリームを拭き取った。
「まだ首のところに残っているね。少しじっとしていて。すぐ綺麗になるから」
 フォンはそうリースの耳元でささやき、彼女の首筋に口をつけた。
「あん。そんなとこ口つけたらだめだよぉ……あ、でも、気持ちいいかもー。もっとやってもいいよ〜」
 リースはうっとりとした表情を浮かべる。彼女の頬は桜色に染まっていた。
「おや、少し熱があるみたいだな。保健室に行かないと」
 フォンはそう言うと、リースを連れて廊下へと出た。

「ふむ、わしは別になんともないのう……?」
 15歳以下の少女に目がないファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)も、校長の用意したものなら喜んで食べなくてはっ! と、適当に選んだサラダを食べていた。
「まぁ、気を取り直して料理を始めるとするかね。夏も近づいてきたことだし、夏バテ防止に魚料理でもしようかの。……と思ったら、なんだかわしも暑くなってきたぞ……」
 ファタはどんどん服を脱いでいき、あっという間にスッポンポンになってしまった。持っててよかった『光学モザイク』。
「シンプルに刺身といくのもアリじゃが、インパクトに欠けるかねぇ。そうじゃ、刺身といえば、日本には女体盛りという俗文化があったような……? そういうのもアリかも知れんな」
 ファタが料理の案を練っていると、気持ち悪いほど丁寧な口調で話す橘 カオル(たちばな・かおる)の声が聞こえてきた。
「お客様の中に、吸血鬼や氷の精霊など、体の冷たそうな種族の方はいらっしゃいませんか?」
 某有名老舗メーカーの刺身包丁を手に尋ねる彼に、レライア・クリスタリア(れらいあ・くりすたりあ)がおずおずと手を挙げて答えた。
「あ、あの……わたしは氷結の精霊ですが」
「それはこの上ない好都合です。是非、オレの捌いた刺身を盛りつける器となっていただきたい」
「わたしでよろしければ……」
 サラダのせいで変な気分になっていたレライアは、カオルの提案に合意した。今も既に半裸状態である。パートナーの十六夜 泡(いざよい・うたかた)は、そばを食べた途端、「ちょっとまっててね」と言い残し、バーストダッシュで家庭科室を飛び出していた。
「む、同じことを考えるやつがおったか。負けておれんの。キャロル、脱げ」
 カオルにライバル心を燃やしたファタは、キャロライン・オブ・ラーズグリーズ(きゃろらいん・おぶらーずぐりーず)にそう命じた。
「はい? ええ……にょたいもりのうつわ? 分かりました、お姉様」
 普段なら決してこのようなことをしないキャロラインだが、今日の彼女はカレーを食べたためにお馬鹿なのだ。楽しくなってきて、ファタのリクエストにノリノリでお答えしてしまった。
 やはりスッポンポンになるキャロライン。持っててよかった『光学モザイク』。
「ナイススッポンポンですわ! ちなみに、私が得意なのはすっぽん料理ですわ!」
 そこに、再びミナがズサーッと床を滑って現れた。ミナは、デジタルビデオカメラで女体盛りの器となる美少女たちの痴態を激写し始めた。
「ミナ、何やってんだ! そんなもん撮るな!」
 ミナのパートナー泉 椿(いずみ・つばき)は彼女を止めようとしたが、騒ぎを聞きつけてセシリアとフィリッパがやって来た。
「またあなたなの。今度は許さないよ。……って、そこの二人! なに全裸になってるの!」
 ミアの後ろのファタとキャロラインに気付き、純情なセシリアは思わず顔を背ける。
「全裸とは失礼ですね。この光学モザイクが見えないのですか? 肝心な部分はしっかりと隠れています」
 キャロラインはずいとセシリアの前に歩み出る。
「隠れているのじゃ」
 ファタもずずいと歩み出た。
「うーん、これをアウトにするのはかわいそうな気がしますわ」
 フィリッパがセシリアに言う。
「分かった! 分かったからこっちこないで!」
 セシリアは迫ってくるファタとキャロラインを制し、仕方なく引き下がった。
「わ、わたしも……」
 レライアは、カオルが刺身を盛りつけやすいよう、自分も服を全部脱ごうとする。しかし、彼女は光学モザイクをもっていなかった。これでは、管理局もとい百合園の白い撲殺天使、セシリアとフィリッパに摘発されてしまう。
「あんなアイテムさえなければ……文明のばかーっ!」
 レライアは理不尽な怒りを光学モザイクにぶつけると、その場から走り去った。
「お、オレの器さん!?」
 刺身を盛りつける場所がなくなり、カオルは絶望した。 
「カオル、気を落とすな。俺が刺身に合う赤だしを作ってやるよ!」
 親友のピンチに、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が立ち上がった。
「お、なかなかのイケメンじゃん? あのそばを食べてから、なんだかイケメンに擦り寄りたく……いや、これはいつものことだったぜ」
 やはり、パートナー同士は似るのだろうか。端正な顔立ちの正悟に惹かれ、椿は「電話番号とメルアド教えてください♪」と彼に近寄っていく。しかし、彼のとった行動を見て、その足を止めた。
「まずは本だしをとらないとな。あ、ファタさんでいいや」
「わしか?」
「ここに入ってくれ」
 正悟に促され、ファタは湯を張った大きな鍋に浸かる。
「お湯をこぼさないようにな……っと、悪い。触る気はなかったんだ。多分」
「よいよい。ふー、いい湯じゃ」
 そのとき、正悟の携帯電話が鳴った。
「リースさんから着信? ……もしもし。え、フォンさんとのイチャラブ記念写真を撮って欲しい? いいよ、今から行く。体育倉庫だね」
 正悟は通話を切ると、ファタを放置して体育倉庫へと向かった。
「……駄目だ、あいつは心がイケメンじゃない」
 椿は、残念そうに正悟の背を見送った。
 体育倉庫から帰ってきた後、正悟は、家庭科室に広がるエロティックな光景を収めた写真をみんなに配ることになる。椿はそれによって更に幻滅するのだが……そのことはまた別のお話。


part2 女の戦い


「もう我慢できないわっ! あたしの愛を受け止めて!」
どりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)は、あふれ出る激情を抑えきれず、襲いかかるべき女の子を探していた。
 それは、どりーむの友人、姫野 香苗(ひめの・かなえ)も同じだった。素肌に全身生クリームを塗りたくった香苗は、どりーむを見つけるやいなや、彼女に抱きついた。
「ご飯にする? お風呂にする? それともか、な、え?」
 香苗は、もじもじしながら言う。
「生ものだから早く食べて欲しいけど……お持ち帰りで食べてもいーよ」
 目の前に現れたこの格好の獲物を、どりーむが逃そうはずもなかった。
「今すぐいただくわ」
「きゃんっ」
 どりーむはその場に香苗を押し倒すと、自慢のテクニックで彼女を執拗に責め立てる。香苗は、すぐに力尽きた。
「香苗を……味わい……尽くし……て……」
 しかし、香苗顔はどこまでも幸せそうだった。
「まだよ……まだ足りないわっ」
 次なる獲物を求めて目を光らせるどりーむは、かすかに聞こえてきた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)の独り言を耳ざとく拾った。
「これを口移しで……」
 サラダの効果でキス魔となった祥子は、コーンポタージュを作り、目当ての審査員に口移しで試飲してもらおうと考えていたのだ。
「口移し!? あたしが相手になるわ!」
 どりーむが早速祥子に迫る。しかし、祥子はこれを拒んだ。
「駄目!」
「あら、なんでかしら」
「私はキスがしたいだけなのよ。あなた、絶対それ以上のことをしてくるでしょ」
「なるほど、それじゃあ仕方ないわね……とでも言うと思ったか!」
 どりーむは突如身を躍らせ、祥子に飛びかかろうとした。
「やむを得ないわね」
 祥子はどりーむに対抗し、しびれ粉をお見舞いした。これは、唇を奪いたい相手が抵抗した場合に備えて用意しておいたものだ。祥子必死である。
「ぐ……まさかこのあたしが痙攣させられる側になるとは……」
 ともかくしびれ粉は効果を発揮し、どりーむは地に伏した。
 
「は〜い☆ かわいい子大好き! 『朔お姉さん』よ♪ フフフ……」
 鬼崎 朔(きざき・さく)はサラダの影響を強く受け、裏人格であるかわいい子専門のエロエロ女帝『朔お姉さん』が目覚めていた。彼女も、しびれ粉の力を借りてでも欲望を満たさんとする肉食系乙女だ。
 朔が最初に捕食……かわいがる対象として選んだのは、赤羽 美央(あかばね・みお)だった。普段友人として接している分、朔には美央がかえって色っぽく見えたのだ。
 彼女は裸エプロンに背中はブラックコートという上級者向けの格好で、颯爽と美央の前に現れた。
「安心して。初キス以外の大事なモノは無理矢理奪わないから」
 朔は、艶めかしい手つきで美央の体に指を這わせていく。ところが、美央の反応は至極淡泊なものだった。
「朔さん、どうしたんですか? 私の体なんか触って。ちゃんとお料理しないと、校長先生に怒られちゃいますよ」
 それもそのはず。美央にはこの手の知識がないのだ。抵抗しないので、朔はしびれ粉を使うまでもない。
「つ、つまらない……私は女の子が喘ぎ泣く姿を見たいのよ!」
 小首をかしげる美央を置き去りにして、朔はその場を走り去った。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 家庭科室では随所で女同士が肉体的戦いを繰り広げられていたが、料理による腕の競い合いこそ、この場に相応しい戦いである。
「エリザベート校長を満足させるッスよ〜」
 サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)は、意欲を見せて料理道具に向かっていた。
「新鮮なパラミタ鶏の卵と、パラミタ牛のミルク。これでプリンを作るんスよね。トッピングにさくらんぼも用意するようにって言ってたッスけど、どう使うんスか?」
 サレンの問いかけに、パートナーのヨーフィア・イーリッシュ(よーふぃあ・いーりっし)が答えた。
「お椀型のプリンに乗せて、より完成度を高めるのよ。それから、カラメルソースはいらないわ」
「お椀型? ソースはいらない? そういうものッスか……」
 サレンは疑問に思いながらも、ヨーフィアの言う通りに準備を進めていく。
「あとはぷるんとした質感が必要よね。これは、本物に触れながら考えないとダメだわ。ふふふ……と言うわけで、サッちゃんのその立派なおっぱいを揉ませてもらうわよ!」
 ヨーフィアは、悪戯に笑いながらサレンの巨乳を鷲掴みにした。
「ヨーさん!? 急に何をするんスか!」
「これはりょーりのため! 仕方の無いことなのよ、観念なさい。うふふふふ」
「な、なんか今日はいつもより体が敏感な気がするッス。だ、誰か助けて欲しいッスよぉ〜……あーれー」
 自分のパートナーにしか手を出していない分、ヨーフィアはまだ良心的と言えるかもしれない。
「あれ、多分作る料理が被ってるよ! これはクオリティで差をつけないと」
 サレンたちの様子を見て、芦原 郁乃(あはら・いくの)の負けず嫌い魂に火が付いた。
「桃花、おっぱい見せて♪」
「!? ああ、おっぱいの質感が知りたいのですか」
 郁乃に言われ、秋月 桃花(あきづき・とうか)はごく自然にぺろんと胸をさらけ出した。
「いいですけど、あまり弄らないで下さいね、郁乃様。いけない気が起きちゃいますから」
 桃花の名誉のために言っておこう。桃花は控えめで礼儀正しく、容姿も端麗な淑女だ。暴走する郁乃のフォローをするのが、普段の彼女の役目である。悪いのは彼女ではない。彼女の食べたサラダ、いや、それを作ったエリザベートだ。
「ふむふむ……」
 郁乃は、しばらくの間桃花の胸をじろじろもみもみつんつんする。そして、最後に桃花の胸の大きさに合うお椀をチョイスした。
「……郁乃様、データ収集は終わりましたか?」
「うん、ありがとう桃花」
「では作業に入りましょう」
 桃花はかき混ぜた卵を茶こしでこし、温めた牛乳を入れた後、甘さを整える。そしてそれを器に流し込むと、蒸し器にかけた。
「私は乳首作るよ!」
 そうシュールな発言をした郁乃は、まず、小さなボールにクランベリー果汁とレモン汁、粉ゼラチンを入れてふやかす。次に、水あめ、グラニュー糖 、サラダ油をそこに加えたところで、彼女は手を止めた。
「大事なことを忘れてた。桃花、もう一回おっぱい出して」
 郁乃は超感覚をフルに使用して桃花の乳首と乳輪の大きさを記憶すると、木片を削りだして乳首と乳輪の型を作成する。その型に油を塗り、先ほど作った液体をボールから流し込んだ。
 そうこうしているうちに、桃花の料理が蒸し上がる。郁乃は、自分の型と桃花のお椀を冷蔵庫に入れた。
「さ、あとは冷えるのを待つだけだね」

「片付けはあたしがやるから、ミナはいい加減ちゃんと料理を作れ!」
 椿は、美少女ばかりを追いかけるミナを調理場へと連れてきた。前述の通り、ミナは色だけでなく食の道も探求する者。料理となればさっと頭を切り換える。
「エリザベートちゃんを満足させるには、子供受けするケーキが一番ですわ」
 ミナはケーキ作りに精を出し始めた。
 それを見て椿はイケメン探しを再開したのだが、その途中で彼女が目撃した女性陣の料理といえば、それは酷いものだった。
 メイド服を脱ぎ捨てて裸エプロン姿の朝野 未沙(あさの・みさ)は、おいしいギャザリングヘクススープ作りに挑戦していた。薬草や調味料を入れた鍋をぐつぐつ煮込んでいる。
「うーん、ちょっと物足りないなあ」
 スープの味見をした未沙は、しばし考え込んだあと、ぽんと手を叩いた。
「そうだ、興奮で体に滲んでるこの汗を隠し味にしたらどうかしら? そうと決まったら、あたしのだけじゃなくて、かわいい子たちのを集めなきゃ」
 こうして未沙は、計量カップ片手に美少女の汗集めに走ることになったのである。
「裸エプロンに決まってるよねぇ」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)も、裸エプロンで料理に勤しんでいた。パートナーのミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)にも同じ格好をさせている。
「この格好じゃないと駄目なんですか……?」
 南国生まれで脳天気なレティシアは裸エプロンに一切抵抗がないようだが、肌を露出することに慣れていないミスティは、腰をくねらせて恥ずかしそうにしていた。しかし、それが逆にエロい。
「審査員さんたちの反応が楽しみですねぇ」
 レティシアたちは、鍋を作っている。昆布だしをベースに鶏肉、豆腐等の食材を入れるところまでは普通なのだが……何やら目を覆いたくなるようなものまで投入している。言わば仕組まれた闇鍋である。
「是非、校長本人にも食べてもらおうじゃないか」
 毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)に至っては、エリザベートに対する人体実験返しを企てている始末だった。
「作るのは……カレーでいいや」
 大佐は(自称)小麦粉と一緒にカレー粉を炒めると、隠し味に(ナラカの)果物や(テロル)チョコ、そして色々と誤魔化す為に各種スパイスを加えた。最後に、調理場までもってきたいやらシーザーサラダをフードプロセッサーでペースト状にして混ぜ込み、チーズを乗せて完成だ。
「うむ、結構辛くなったが問題無い」
 大佐はカレーを味見して、頷いた。
「匂いも色も味もカレーだから、問題ない」


part3 男の料理!


「社、やってるな」
 家庭科室を徘徊していた椿は、の姿を認めて声をかけた。
「おう。オレの作るモンはフランスパンや! それもめっちゃカチンコチンのやつをな!
 フランスパンは作るのが難しい……だが、それをやってのけるのが俺や!」
 フランスパンマンと呼ばれたこともある社は、力を込めて生地をこねる。と、不意
にその手を休めて椿の前にやってきた。そして、はだけたシャツのボタンを更に外し
た。
「何してるんだ?」
「いやあ、パン作っとったらまた暑くなってきて」
「そうじゃなくて、なんでわざわざあたしの前でやる。まあいいや、じゃあな」 
 椿は適当なところで話を切り上げ、社に別れを告げた。
「あれも料理のせいなのかねえ……ん、ラルクの兄貴じゃないか」
 椿が次に見つけたラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は、脱ぎたい衝動と必死に戦っていた。
「……なんかこの部屋暑くね? いや、待て。この感じどっかで!? くそっ! オレはまた全裸になるのか!? 流石にこれ以上醜態をさらすわけにはいかねぇ!」
「バーロぃ! 漢だったら黙って脱ぐのが礼儀ってぇもんでぃ!」
 対照的に、パートナーの秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)は躊躇せず全裸になっていた。
「さっさとババロア作りを始めるぜぇ! きびきび手伝いやがれぃ!」
 ラルクは味覚がおかしいため、二人は闘神の書がメインで料理を行い、それをラルクが手伝うという形をとることにした。
「さっき牛乳に入れてふやかしといたゼラチンを取ってくれぃ」
「おう、これだな」
「こいつを鍋に入れ、木べらでかき混ぜながら、弱火でゼラチンを煮溶かすぅ」
「俺は、卵黄とグラニュー糖をボールの中で混ぜておけばいいんだな?」
「ああ、泡立て器でよーく混ぜんだぞぉ」
 この巨漢コンビ、見た目に似合わず手際よく作業を進めていく。
「うっしゃあ、そのボールをよこせぃ。焦りは禁物だぁ。まずはカップ2分の一! それから少ぉしずつゼラチンを加え、混ぜていくぜぇ」
「じゃあ、今度は生クリームを泡立てておくか」
 ラルクが生クリームのパックを手に取ると、闘神がそれを奪い取った。
「なぁーんか、我ぇいやらしい気分になってきたぜぃ! ラルク、腹出しな!」
 闘神は、脱げかけたラルクの上着を問答無用で剥ぎ取ると、ラルクの腹部に生クリームをたっぷりと塗りつけた。
「何すんだ!?」
「美味い菓子を作るためでぇ。大人しく協力しろぃ!」
 闘神はそのまま泡立て器をラルクの腹筋に当て、生クリームを泡立て始めた。
「どわ゛わ゛わ゛わ゛わ゛わ゛わ゛っ!」
「筋トレにもなって一石二鳥だぜぇ! 生クリームが飛び散らないように抑えてろぃ!」
 ラルクの硬い腹筋のおかげで、生クリームはすぐに角が立つほど泡立っていく。
「声はかけないでおこう……」
 異様な光景が繰り広げられている横を、椿はそっと通り過ぎた。セシリアフィリッパがラルクたちに近寄れなかったのは、言うまでもない。
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)には、他の生徒たちとは別方向に料理の影響が出ていた。彼は女物の服を着てウィッグをし、胸パットも仕込んで女装をしていた。エプロンにはかわいらしいフリルつきだ。
「なんか、本格的だな」
 椿が言う。
 涼介の前には、ズッキーニ、ナス、カボチャ、玉ねぎ、ベーコン、ホールトマト、ドライバジル、カペッリーニといった素材に加え、塩、あらびき胡椒、レモン汁、オリーブ油などの調味料が並べられていた。
「料理には少々こだわりがあるんでね」
「何を作るんだ?」
「夏野菜の冷製パスタだ」
 涼介は、野菜とベーコンを食べやすい大きさに切ってオリーブ油で炒め合わせ、塩、胡椒、潰したホールトマトを加え弱火で煮込み始めた。
「15分〜20分煮たら、粗熱をとった後レモン汁とバジルを加えて冷蔵庫で冷やす。その間にたっぷりのお湯でパスタを茹でるんだが、目安より1分長く茹でるのがポイントだ」
「手が込んでるねえ」
「茹で上がったパスタは、流水で洗った後氷水で締めて水気を切る。最後に冷やした具とパスタを合わせてお皿に盛り、オリーブ油をかけて完成だ」
 できあがった料理を想像した椿は、ごくりと喉を鳴らした。
「なあ、あとでちょっと味見させてくれよ。洗い物手伝うからさ。ついでにアドレスも教えてほしい。感想送りたいし」
 椿は自分の携帯アドレスを紙走り書きすると、涼介に渡した。
「よかったら、パラ実にも遊びにこいよ。復興中のイリヤ分校なら、料理できるところもあるから。あたしは料理ド下手だけど、パートナーのミナが腕をふるってくれるぜ!」