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決戦 天沼矛!

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決戦 天沼矛!

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05:第一次防衛ライン1 北


 黒のショートヘアに同じ色の瞳のかっこいい美少女茅野 茉莉(ちの・まつり)は今日も今日とて罰掃除として機体を使用しての天沼矛掃除を行っていた。
「今日も天沼矛掃除だわ。いいかげん飽きてくるわね、こうも続くと。だいたい、あれくらいで怒ることないじゃん。機体の限界知らなくちゃいざってときに困るのあたしたちなんだから。はぁ、教官たちはいいわよね。もう帰還できて」
 そう彼女がぼやいていると、教官機が飛び立っていった。
「……あれ? 教官たち、さっき戻らなかったっけ?」
 そうつぶやいたところにスクランブル命令がかかる。
「って、ちょっとスクランブル!? ああもうっなんで気づかなかったのよ? 【パンプキンヘッド】より管制へ。このまま出るわ」
「こちら管制。【パンプキンヘッド】は授業の装備のままだろう、どうする気だ?」
「なんとかするわよっ。時間稼いでおくからさっさと増援よこしないよねっ」
 そして同じように罰掃除をしていた玉風 やませ(たまかぜ・やませ)に通信を入れる。
 やませは銀のロングヘアに青色の瞳、胸が小さいがかわいい少女だ。
「【ウィッチ】より【バンシー】へ、このまま出るわよ。とりあえず【北】の敵に向うわ。とにかく墜とされないように逃げ回って敵をかき回して。
 数が多いしお互いフォローしていきましょ。もしチャンスがあったらペイント弾でカメラ狙ってみて。まあ、ペイント弾って知ったら怒るかもしれないけど」
「【バンシー】了解。【バンシー】、出ます」
「【ウィッチ】でるわ」
 こうしてふたりだけのスクランブルが始まった。

 ちなみにやませの罰掃除の理由は「授業中に海京で発売される『時間限定&個数限定のパン』を買いに抜け出そうとしたため(しかも複数回)」
 しかも、掃除(イコン操縦)を白虎に任せてパンを買いに行こうとも企んでいたためだった。
「せ〜っかく海京限定ピロシキを買うチャンスだったのに〜。この代償は高くつきますよ〜!! ……あ、でも掃除をしなくて済んだから、その点はありがと〜♪」
 そんなカンジでマイペースなやませは、ペイント弾装備でのスクランブルでもわりと気楽だった。

「こちら【バンシー】。敵二個小隊が接近中。取り敢えず敵より足が早いのを活かして逃げます」
 やませはパートナーの東風谷 白虎(こちや・びゃっこ)とともに敵から逃げ回っていた。白虎は白の髪をオールバックにしていて金色の目を持ち、大人びていてかっこいい女性である。
「【ウィッチ】了解。こちらも逃げまわるわ。今レオナルドが軌道計算しているから少し待ってて」
 茉莉のパートナーレオナルド・ダヴィンチ(れおなるど・だう゛ぃんち)はかつての万能の天才の英霊である。薄茶色のロングウェーブの髪と茶色の瞳をもった知的な美形である。
「茉莉殿、やませ殿、ランダム機動をとりつつ相対位置を縮めてくれ。ペイント弾を撃とう」
「了解」
「了解」
 そして二人は逃げ回りながら速度を殺し相対距離を縮める。敵の射程範囲に入るがかなりでたらめに高機動な動きをしているためロックオンされることはない。
「よし、一時停止だ。ペイント弾、発射」
 レオナルドの指示で【バンシー】と【ウィッチ】は急制動し見た目ビームライフルのペイント弾発射装置からペイント弾を発射する。
「ペイント弾は実際のビームライフルと違って連射が効く。そこを有効に活用しよう。白虎殿、敵のカメラに向かってペイント弾連続発射だ」
「了解だぜ」
 そして二人はペイント弾を5連発で撃つ。
 二個小隊の敵のイコン全てのカメラにペイント弾が付着する。
 敵機からマシンガンの弾が飛んでくるが見当違いの方向に発射されている。
「向こうはこちらがペイント弾だと知って怒っているようだね。こちらを墜とそうと躍起になっているよ」
 レオナルドがくすりと笑う。
「さて、計算結果が出た。茉莉殿、やませ殿、白虎殿、このルートで飛行してもらえるかな? あと少しだけ耐えて」
「了解よ」
「了解です」
 茉莉とやませが返事をする。
 そしてレオナルドの示した飛行ルートのとおりに飛んでいく。敵はこちらを目視出来なくなり、レーダーだけで懸命に追いかけてくる。ちなみに随伴飛行歩兵はすでに30人ほど侵入済みでこの空域にはいない。
「うん、計算通りだ。敵が伸びきってるところに騎兵の到着だよ」
 そう。敵の隊列が盾に伸びきっている横合いに、味方が三機到着していた。イーグリットが2機にコームラントが1機。【デルタ小隊(ペア?)】+1の到着だった。
「こちら【パンプキンヘッド】敵のカメラにはペイント弾が付着している。マニュアル通りの機動をしていれば敵の攻撃はおそらく命中するまいよ」
 レオナルドが【デルタ小隊】+1に通信する。
「こちら【リッパー】了解だ」
 銀のショートカットの髪に青い瞳、精悍で顔に傷のあるエレム・ロンジェット(えれむ・ろんじぇっと)だった。
 パートナーは綺麗な金髪のロングに青い瞳でかわいいアリスのエミサ・シールエル(えみさ・しーるえる)である。
「エミサ、準備はいいか? 教練通りにやれば問題はないから落着いてやるんだぞ。敵機を引き付けて機動範囲に入ったら突撃するんだ。それまでは防衛線を維持しつつ回避に専念するんだ」
「りょ、了解っ」
「あと、下がる敵機は追撃せず、味方のコームラントに任せるんだ。あくまで突破してくる機体に突撃だ」
「目標をセンターに入れて突撃……目標をセンターに入れて突撃……ブツブツ」
「お、ぉぃぉぃ」
 二人はそんな会話をしつつも戦闘の準備に入る。
「敵は混乱している模様だよ。撃つなら今だね」
 クローディア・アッシュワース(くろーでぃあ・あっしゅわーす)が管制室から通信を入れる。
 クローディアは天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)のパートナーで金髪を頭の横で一本に束ね青い目を持ち、胸が大きい美少女のアリスだ。
「こちら【アックス】。了解! おまえたちの好きにやらせはしない……!!」
 森上 将矢(もりがみ・まさや)がその通信に答える。
 将矢はボサボサの茶髪に茶色の瞳顔立ちが端正で大人びている少年だ。
「マナ、行くぞ!」
「了解!」
 マナ・メイヤ(まな・めいや)はショートの銀髪に赤い瞳を持ち八重歯があって子どもっぽい機晶姫である。
「あんたたちが居たらマーサが悲しむ! だから消えてなくなれっ……!」
 マナはそう叫ぶと機体を突撃させる。
 それに対抗して敵はマシンガンを打ってくるがマニュアル通りのランダム機動をしている【アックス】には当たらない。
「エミサ、俺達も突撃だ」
「了解!」
 それを見て【リッパー】も突撃していく。
「敵はパンプキン小隊によってカメラを潰されている模様です。沙耶さん、突入する味方の支援を!」
 白のロングウェーブに赤い瞳、知的で胸が大きい剣の花嫁のシャーリー・アーミテージ(しゃーりー・あーみてーじ)がクローディアとともに管制から通信を入れる。
「それはチャンスだね。【アックス】、【リッパー】、指揮官機から潰しましょう。精密射撃でキャノンを当てるからその後に攻撃してね!」
『了解!』
 ポニーテールの黒髪に茶色の瞳、色っぽくて胸が大きい沙耶はそう味方に伝えるとシュヴァルツ・フリーゲを撃った。
 砲撃が命中してボロボロになったシュヴァルツ・フリーゲに、2機のイーグリットがビームライフルを命中させる。
 敵は火花を走らせて小爆発を起こしたあと大きな爆発を起こして四散した。
 前に出てきたイーグリットに、敵はレーダーだけを利用してマシンガンを射撃するが命中はしない。
 さらに右翼後方から急速に機体が接近しつつあった。
「クローディア、あれは敵? 味方?」
 まだ敵味方識別信号の働かない状況で、沙耶のパートナーでコームラントに同乗しているアルマ・オルソン(あるま・おるそん)が尋ねた。
「味方だよ。東を防衛していたアルファ小隊。敵を全滅させたから救援に来てくれたみたい」
 青のセミロングに緑の瞳、小柄で子どもっぽいアルマはその報告に胸をなで下ろす。
 そしてコームラントのビームキャノンを操作するとシュメッターリングに狙いを定めた。
「左端から潰していくよ、沙耶!」
「了解。こちら【Drakkhen】左端の敵から順番に砲撃していきます。右翼から来ている機体は味方です」
「【アックス】了解」
「【リッパー】了解」
 そしてビームキャノンが発射される。
 それとタイミングを合わせてビームライフルが放たれ、圧倒的な火力を前にシュメッターリングは崩れ落ちる。
 そしてほぼ同時に味方が到着した。
「こちら【アルファ1】。援護する」
 そう言って晴人が通信を入れてきた。
 あとは簡単だった。
 目視でのロックオンができない敵機を敵の火線を避けながら砲撃していく。
 6機のイーグリットの連携攻撃により敵は為す術もないままに次々と撃墜されていく。
 全部で10機いた敵も残り3機。
 2機ずつに別れたイーグリットが敵のジェネレーターにじっくりと狙いを定めてビームライフルを当てる。
 直撃を受けた敵機は激しく誘爆を起こして次々と海の藻屑になっていく。
 こうして、北方面の敵はすべて居なくなった。
 【ハロウィン小隊】は撤退し、【デルタ小隊】と【アルファ小隊】は西方面の援護に行くことになった。


 そして舞台は敵イコン奪取を目論む天御柱学院の生徒たちへと移る。