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●第12章 イルミンの午後 その2
 イルミンの寮の部屋にて。
 セーフェル・ラジエール(せーふぇる・らじえーる)は女性化してしまった。
 恥ずかしくて胸を隠していたところ、和原 樹(なぎはら・いつき)が怪訝そうにこっちを見ている。
「…なぁ、セーフェル。お前ちょっと変じゃないか?」
「いえ、その…なんでもないです。本当に」
「んー…いや、でもさ…。えっと、なんか小動物でも拾ってきたなら遠慮せずに出せよ。別に怒らないし。
 セーフェルの様子に樹は小動物でも隠しているのではないかと思っていた。
「あれは生き物を匿っているふくらみではないと思うぞ、樹。セーフェル、隠し立てしても仕方がないだろう。ちょっと見せてみろ」
 フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は言った。
 フォルクスはセーフェルの上着を剥いだ。
「ひぃっ! 何するんですかフォルクス!」
「…ふむ、なかなかのものだな。魔法薬か?」
 とか言いつつ、フォルクスは胸を揉む。所詮は同性だし、親しい相手なので遠慮はない。
「そんで、何やってるんだフォルクス。俺もちょっと触ってみたい…あ、いや…冗談っ、冗談だからっ!」
「…ええと、マスターならいいですけど」
 照れながらセーフェルは言った。
「でも何で誤魔化そうとしたんだ。それは、まぁ…一緒に風呂行ったり同じ部屋で寝たりはできないけど…」
「えっ!」
「とりあえず落ち着け。捨てたりしないから」
 そう言った樹は寂しがりの大型犬みたいで可愛いなぁとセーフェルを見て思った。
「まぁ、なっちゃったものは仕方ないし、元に戻るまでショコラちゃんと一緒に…」
「樹兄さん、それは無理。だって私、今男の子だから…女の子のセーフェルと一緒の部屋にはなれないの。嘘じゃない。…見る?」
 片付け物をしていたショコラッテ・ブラウニー(しょこらって・ぶらうにー)が応えた。可愛いアリス・リリだ。
「んなっ!? ショコラちゃんまで、そんな…嘘だろ。…た、大変だ…!!」
「私、気にしてない」
 ショコラッテは淡々と言った。

 そして、イルミンスールの長閑な午後は過ぎ行く。

 今日も平和なり。