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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~
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リアクション

 
 ちょっとした間章 ファーシーの特徴は……?

「ファーシー様、何やら思いつめていたという事ですし……、心配ですね」
 風森 望(かぜもり・のぞみ)は、空京の街中を1人歩いていた。ファーシーがただならぬ様子で何処かに行ったと聞いて、やってきたのだ。
「さて、まずはファーシー様を探しませんとね」
 聞き込みには特技の捜索を活かすとして、車椅子少女を知っていそうな人にあたりをつけて声を掛けていく。しかし、早々収穫があるものでもない。
「あら? あれは……」
 すると、前方に知った顔を見つけた。褐色でたくましいスキンヘッドの男性が通行人に話しかけている。
「車椅子の少女を見かけませんでしたか? 青い髪をしているのですが」
「車椅子? さあ……知らないけど」
 通行人は彼の輝くようなスマイルに若干驚いているようだった。そこに、望は声を掛ける。
「ファーシー様をお探しですか? 私も心配で探しているのですけれど」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)はそれを聞くと、振り向いて望に笑顔を見せた。
「おお、そうですか! それは頼もしいです。買出しに来て、ファーシーさんもこの空京に居ると知りましたので久しぶりに会いたいと思ったのですが……」
「買出し、ですか?」
 それにしては荷物が少ない、というか無いような。
「はい買出しです。空京といえば買出しですよ! 決して迷ってここまで来た訳じゃありませんからね!」
「…………」
「…………」
 何だか妙な沈黙の後、ルイは携帯電話を操作した。イルミンスール魔法学校から生徒向けに発信された今回の通達内容を画面に表示すると、望に見せる。
「彼女達、思わしくない雰囲気に、最後には喧嘩をしてしまったらしいじゃないですか。喧嘩はよくありません! 2人を仲直りさせなければ!」
「そ、そうですね……」
「もしすれ違いからの喧嘩でしたら、このまま間を空けてしまうのはお互いに気まずいでしょう。特にラスさんは素直じゃありませんから。それで、会いに行こうと情報を集めていたのですよ!」
「特徴がありますし、聞き込みをしていけば見つかるはずです。やっぱり、キーワードは『車椅子』と『青髪』、『む……」
「ねえ、言っとくけど私、ファーシーって子と面識ないわよ!」
 そんな台詞が聞こえ、2人は声のした方を見やった。
「おや、あれは永太さんですね!」
「行ってみましょう」
 同様にファーシーを探しているのであれば一緒に探した方が得策だ。そう考え、望はルイと共に神野 永太(じんの・えいた)達に近付いた。先程の声はミニス・ウインドリィ(みにす・ういんどりぃ)のものである。
「でも、連れて来られちゃったんだし、探すのぐらいは手伝ったげるわよ」
「……ありがとう。なんだかいてもたってもいられなくて……」
「まったく、永太、家に居る時もその子のこと気にしてたしね。しかたないわ」
「……そうなんですか?」
「えっ、い、いや、ザイン……!」
 小首を傾げる燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)に、ミニスは言う。
「ザイエンデが縁側にいる時が多いかもね。酒飲みながらだし。何か、家庭事情まで心配してるのよ」
 ミニスが聞いた時は、何やらこんな事をグダグダと言っていた。
『ファーシーは一人暮らし……? 車椅子での生活をサポートしてくれる人はいる……? 心を許せる家族同然のパートナーいてくれたら……そうか、裕福な生活は無理だけど私がファーシーを養ってあげれば良い……?』
 とかなんとか。今日も、ファーシーに会おうと決めてから永太はかなり悩んでいた。ミニスは、そのうちハゲるんじゃないかと思っている。
「だって、放って置ける訳無い……」
 永太は、少し俯いた。
 なんだろう。久しぶりに会えると思ったら、ファーシーのことを考えすぎて、心配で……
 だから、ファーシーを探す。会えたら、言葉を掛けてあげたい。話を聞いて、励ましてあげたい。
「……大丈夫ですか? 永太」
 ザイエンデが、その顔を覗き込むように見る。ちょっと気遣わしげだ。ミニスは一つ息をついた。
「この調子だと、逆に励まされちゃうんじゃないかしら。ほら、さっさと動くわよ」
「うん、とにかく、街中駆け回ってファーシーを見つけよう」
「……あの、よろしかったら協力してファーシー様を探しませんか? 私達も心配で探しているのですが」
 そこに、望が声を掛けた。永太は望とルイの話を聞くと、二つ返事で頷いた。
「皆で探せば早く見つかりますね。よろしくお願いします」
 そうして、5人はそれぞれの連絡先を交換して確認し合った。それが終わると、望は言う。
「では、捜索を始めましょう。キーワードは車椅子、青髪、胸は小さい」
「「胸は小さい……!」」
 ルイと永太は、それがあったか、と顔を見合わせた。
「へー……、つるぺたねー……」
「つるぺた、ですか……」
 呆れたようなミニスと、自分の胸を心持ち見下ろすザイエンデ。
 そんなこんなで、5人はファーシーの捜索を開始した。