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第7章 魔女の魂はどちらの手に・・・?

-PM18:00-

「十天君がどっちもこないなんて奇妙だな。何か考えているのか?」
 コウはスコープを覗き、周囲を警戒しながら呟く。
「ありゃー、いないと思ったらこんなところにたむろっていんのかぁ。ぼくたんたちにけっちょんけちょんにされるのにぃ、ご苦労さまぁーじゃん」
 第一人称を変えてわざとらしくぶりっこな口調で言い、柏天君は生徒たちの姿を確認する。
「初めて会ったが、早々に退場してもらおうか」
 漆黒の太刀の形状をした光条兵器を柄を握り、カイはアルティマ・トゥーレの冷気を纏った刃を十天君に目掛けて放つ。
「ひゃー、さむーい。なんちゃって♪」
 柏天君は冷気を火の聖霊で防ぐ。
「一瞬の術がどこまで持つかな」
「あわわっ、何発も飛ばすなんて卑怯だよぉ!」
「今まで卑怯なことばかりしていたのに、何を言っているんですか♪」
 術で圧倒しようとイナはSPリチャージをカイにかける。
「傷の手当てやSPの回復は私に任せてくださいっ」
「ち、うぜぇな。あのガキ・・・」
「イナさんの近くに誰かいるわ!」
 ディテクトエビルで鍬次郎の存在を探知したルカルカが大声を上げる。
「あぶないコトしちゃダメなんです!」
 ヴァーナーはシーリングランスを放ち、ヒロイックアサルトを封じる。
「ありがとうヴァーナーさんっ」
「仕留め損なったか・・・」
「(村人を殺したやつらアルネッ。ここまで来て邪魔するなんて許せないアル)」
 魔女の魂を守る者に害をなそうとしている彼に、チムチムがズダダダァンッと機関銃を撃ち鳴らす。
「くそっ、どこかに隠れているのか」
 銃弾から逃れるだけでいっぱいいっぱいで、光学迷彩で姿を消しているチムチムの位置がまったく分からない。
「時間稼ぎしてくれている間に地下へ逃げましょう」
「そうだね。見つかっちゃったからここに留まっていられないよ」
 敵に気づかれないように、恵那が北都にそっと声をかける。
「俺が先に行こう。少しでも守る盾になれると思うからな」
「我、魔鎧となりて我が主を護らん」
 アストレイアは魔鎧として紫音に装着する。
「あ、逃げるなよぉ!」
 サンダーブラストの落雷をくらわせようと、柏天君が紫音に向かって放つ。
「くぁ!アストレイア・・・耐えてくれっ」
「主・・・っ」
「治してあげます♪結構、無理するですね」
 術をまともにくらってしまったのを見てイナは走り寄り、可愛らしい妖精のチアリングで2人の傷を癒す。
「これくらいはやらないと逃げ切れないからな」
「フフッ。それだけオメガさまを守りたいということですか」
 無理してでも助けたいという思いに、皆で帰らなきゃとルカルカに抱えられている魂へ視線をやりニッと微笑んだ。
「潰れてしまえ!」
 十天君を重たい機材の下敷きにしてやろうとコウは電動ノコギリのような大型の機械下に弾丸を命中させ、バランスを失わせてガガガッと倒す。
「あわっ、危ねぇじゃんっ」
「避けたか、まぁいい。寿命が少し延びただけだからな」
「ねぇ、地下っていってもどこへ逃げるの?」
 廊下を走りながら北都は首を傾げて恵那に聞く。
「ベルトコンベアはどうでしょうか。止まっているようですけど、雷術で動かすことが出来れば、いざという時に逃げやすいと思いますよ」
「この中で使えるのはオレとイナだけか」
「どちらかお願いできますか?」
「うーん、私は皆さんの傷を回復しなきゃいけないですし・・・」
「だったらオレがやろうか?」
「ありがとうございます、コウさん!」
 引き受けてくれる彼にニコッと笑う。
 ゴーストタウンから出られる時は、後数時間後・・・。

-PM19:00-

「死者の匂いがするぜ・・・。気をつけろ、また襲撃されるぞ!」
 顔を顰めながらも昶はゴーストの匂いを嗅ぎとり、生徒たちに警戒するように言う。
「砲撃で一掃ー♪」
 銃口から噴出す紅十字の砲撃で、レキが亡者の群れを燃やす。
「消しきれてないアルッ」
「ありゃりゃ、ごめんっ」
 手元を明かりで照らしながら銃弾を詰めいている彼女は、へらっとチムチムに謝る。
「まだ動くアル!?」
「ふぅー、気が抜けないな」
 彼女たちが倒し蹴れなかった亡者を、昶がアルティマ・トゥーレの冷気で凍てつかせ破壊する。
「交代で見張りどころじゃないようだな」
 泉のように涌く死者に、カイは思わず眉を潜める。
「潰しても潰しても涌いてきますね」
 ため息をつきながらも、リュースはグシャッと踏み潰す。
「まるで雑草を潰しているような感じですよ」
「ゴーストがそんななりでも油断はするな」
「分かってますって!」
「―・・・言っている傍からこれか」
 尖った爪を突き立てようとする亡者から、コートとなっているロイがリュースを守る。
「もう潜んでいなさそうだが、仮眠はしないで休憩をとる形がいいだろうな」
「そうですね。オレたちが来てからだいぶ経っていますし。向こうもやっきになって魂を奪おうとしてくれるでしょう」
 カイに頷きリュースも仮眠はせずに、ドアの傍に待機する。

-PM22:00-

「死体が見つかっていないとしても、やっぱりもうこの世にはないんですよね・・・」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は保健室にいた医者が生きているかもしれない期待を持たされながら、いっきに悲しみのどん底に落とされ酷く落ち込んでいる。
「えぇ、さすがに嘘をついているってことはないわ」
 廃病棟を出てた後に小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、彼はもうこの世にいないのだと確信するしかなかった。
「(あの場所で看護師の遺体をゴースト兵器の材料に使われたことが気になるけど、ベアには黙っていたほうがよさそうね)」
 嫌な予感を巡らせるが、まさかそんなはずはないと心の中で呟く。
 戦意を喪失しかかるベアトリーチェの背を優しく撫でる。
「(出て探すにしても、外に酸性雨が降っているんじゃ出られないし・・・。―・・・誰の足音かしら?)」
 1階のフロアにブーツの足音が響き、柱の陰に身を潜める。
「見たことない顔だわ。どこかの生徒じゃなさそうね・・・」
「美羽さん・・・術に反応が!」
 ディテクトエビルの術で相手が邪念を抱く存在だと察知し、ベアトリーチェは思わず声を上げてしまう。
「そこに誰かいるのかよぉ?」
「見つかってしまったようですね。近くに何人かいるようですけど、姿を隠しているみたいで正確な位置が分かりません・・・」
「おれっちたちが憎いか?殺してみなよ♪」
「挑発でもしている気?お望み通り、封神してあげます!凍えると灼熱をその身に受けて絶えなさいっ」
 バーストダッシュで間合いを詰め懐へ飛び込み、柏天君に向かって凍てつく炎を放つ。
「フッそんなものかぁ?」
 炎の聖霊に弾かせ、テーブルを倒して盾代わりにする。
「秦天君の姿がありませんが、どこへ行ったんですか?」
「さぁ?逸れたんじゃないか。ていうか本当、あんたら笑えるな」
「どういう意味ですか・・・」
「他のやつらが近くにいないみたいだしぃ。こっちからしたらラッキーじゃん♪あのバカ男に固執したのがそもそもの過ちかもなぁ」
「私たちのことなら聞き流してあげますけど、死んだ人をそんなふうに悪く言うなんて許せません!」
「秦天君じゃないけど、おれっちも武器は持っていないからさぁ。素手で殴っていたぶるしかないなぁ♪」
「くっ、聖霊を使えるのはあなただけではありません」
 殴りかかろうとする柏天君を阻む。
「ふぅんそう?」
 相殺させて今度はこっちから仕掛けてやろうとする。
「聖霊は一瞬の術。頼りすぎるとそういう目に遭っちゃうじゃん?感電死しちゃいなっ、サンダーブラスト!」
「きゃぁあっ!」
 シールドやエンデュアでも落雷を防ぎ切れず、片足にくらってしまう。
「このままじゃベアがっ。仕方ないわね・・・」
 美羽は柏天君にグリントライフルの銃口を向け、的を心臓へ合わせようとする。
「―・・・あぁっ!?どこから狙撃が!」
 ベアトリーチェが美羽から離れてしまったことで、新兵衛の存在を察知出来なかった。
 腕を狙われカタンッとライフルが手元から落ちてしまう。
「あんたらと遊んでる暇なんてないじゃん。オメガの魂を探さなきゃいけないからさぁ」
 ケタケタと笑い柏天君はその場から去っていった。

-PM23:00-

「だいぶ冷え込んできたな。このまま朝まで現れないでくれればいいが、そうもいかないだろう・・・」
 コウはエースからもらったクッキーをかじり、スコープを覗きドアの向こうに銃口を向ける。
「まったくだいぶ探したじゃんっ。倒れた機械を退かすのにめちゃくちゃ疲れたしぃ。倒してやつ、出て来いよぉ!」
 入り込むなり柏天君がぎゃぁぎゃぁと怒鳴り散らす。
「出て来いって言って、出てくるとでも思っているのか?まったく幼稚な言葉だな」
「(また十天君か!)」
 争いごとを見せないように、エースは顔を伏せさせ耳を塞ぐように抱きかかえる。
「貴様が柏天君か」
 侵入者に対してリュースがギロリと睨みつける。
「貴様は殺す。グチャグチャにしてやるよ」
「ずいぶんと威勢がいいガキだなぁ?おれっちが返り討ちにして、てめぇをカラスの餌にでもしてやるよぉ♪」
「炎の聖霊かっ」
 拳が光の尾を引き柏天君の腹を掠める。
「たった一瞬の術でも使いようによっちゃ便利だからさぁ♪落雷でバーベキューにしてやるのもよさそうじゃん。ハンバーグも捨てがたいなぁ」
「そうか。だったらオレは貴様をミンチのように殴り潰す。その肉片で妖怪の饅頭にでもしてやる」
「物騒な殺し方ばかり叫んでいると思ったら、リュースさんですか」
 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は暴言を吐き捨てている友人を見つけて嘆息する。
「彼女を庇おうものなら、八つ裂きにしかねませんね」
 どこかに隠れているハツネたちに向かって呟く。
「リュースさんでも隙をつくってあげなければ、相手に逃げられてしまうかもしれません。あなたたち、あの女の腕と足を狙いなさい」
 アンデットに命令して体勢を崩したことをたたみかけてやろうと考える。
 しかしスケルトンの方は近づく間もなく新兵衛に狙撃され、撃たれた痛みでギィーギィーと騒ぐ。
「骨折り損、ご苦労様だな」
 刀の刃をぺろりと舐め、鍬次郎が遙遠に近づく。
「近くに来られたらさすがに殺気看破じゃなくても分かりますよ?」
 柱の陰から襲撃しようとする彼をディテクトエビルで察知し刃を弾く。
 ディッグルビーとぶつかり合う金属が空気を振るわせるかの如く響き渡る。
「そしてこの暗闇・・・目の利かない者には不利ですからね」
「ちくしょうっ」
 壁際へ飛ばされた鍬次郎は、衝撃に耐え切れなくぺたんと床に手をついてしまう。
「誰も使ってない場所と考えたら、明かりなんて点くはずないですからね。いくら目が慣れてきても、ダークビジョンで視界を確保出来なければどうなるか・・・ということですし」
「だがな、外から入ってくるちょっとの光さえあればそれほどでもないぜ」
「そうでしょうか?遙遠たちがさらに地下へでも行ったらどうなるんでしょうね。下水路だと水で匂いが消えるだけじゃなく、音も聞き取りづらいですよ」
「(くそっ、ここまでか)」
 鍬次郎は柏天君と逃げようとドアへ視線を移す。
「おい、逃げるぞ!」
「目の前にあるもんとらないで逃げるなんてありえないじゃんっ」
 ベルトコンベアに飛び乗った柏天君が、エースたちの方へ走りる。
「オメガさんの魂はあげないよっ」
 迫る柏天君に綺人は、冷気で凍結させようと平突きで足を狙う。
「おれっちだけに気を取られていいのかよぉ?」
「何だって?」
「周りをよく見てみればいいじゃん?」
「こんな時に悪霊が!」
 綺人にとり憑こうと身体の霊がひたひたと近づき彼の腕を掴む。
「まったくいやなタイミングで出てきますね」
 命を貪り食らおうとする亡者を、瀬織がバニッシュの聖なる光でナラカへと送る。
「黒焦げにしてやるじゃん、きゃっははは♪」
 サンダーブラストの落雷の餌食にしようと、綺人の頭上を狙う。
「アヤ!うっ」
 クリスは綺人を床へ押し飛ばし、オートガードで自らの身を盾にする。
「術でガードしなければ危なかったな・・・」
 2撃目が来る前にとユーリはすぐさまグレーターヒールでクリスの傷を癒してやる。
「(コウさん・・・ベルトコンベアを!)」
 フロアの奥にいるコウへ視線を送った恵那が、術で動かすように伝える。
「(十天君がそこに乗っているというわけだな)」
 コウが雷術で電力を供給すると、ガコンッと動き始める。
「な、何だぁあ?」
「転んじゃえ!」
 レキは柏天君の足元を狙って銃弾を撃ち込む。
 ズッと足を滑らせた女はどたんと尻餅をついてしまう。
「そこにいますよリュースさん」
「もう逃げられないな?」
 遙遠に場所を教えてもらったリュースは冷酷に呟き女を見下ろす。
「貴様をその辺りにつないで、悪霊に憑かれてじわじわ死んでいくのを見るのもいいんだが。この手で潰してやらなきゃ気が収まりそうにない」
 無慈悲に柏天君の片手をぐりっと踏み潰す。
「うっ、くぁあっ!」
 ベキャッと骨が砕ける音が響き、激痛に表情を歪ませる。
「このぉ、くそガキの分際で・・・っ」
 火の聖霊の炎でリュースを囲み、焼き尽くそうとする。
「―・・・っ!」
「そんなところで別の意味で燃えないでくださいよ」
「(本当にバーベキューにされるところでしたね・・・)」
 ブリザードの吹雪で遙遠と瀬織が炎をジュァアッと消す。
「お仕事の邪魔されたから、お兄ちゃんのせいで褒めてもらえない。次、また邪魔したら狙うよ?」
 その隙に姿を隠し忍び寄るハツネに柏天君を連れて行かれてしまう。
「柏天君がいない!?」
 目の前にいたはずの柏天君に逃げられてしまい、工場の外に出られたらアウトだとリュースたちが追いかける。
「あのチビ・・・。よくも妨害したな」
 ぶっ殺してやろうかと殺意に満ちた目で探す。
 その頃、弥十郎と響は術を解かせようと、出口でずっと待ち構えている。
「―・・・あれが柏天君?どうして中にいるんだろうね」
「他の仲間たちだけじゃ魂を奪えないと思ったんじゃないかな」
「まあいいや、術を解かせることが目的だし」
 弥十郎は驚きの歌を歌い、酸性雨を止めるために術者の心をかき乱そうとする。
「お坊ちゃん、おれっちにその歌を歌ってどうする?」
「あれ?解けない・・・」
 術が解ける気配はまったくなく、ザァーッと降りしきっている。
「フンッ。何をしようとしたのか知らないけど、術は本来の用途に合わせるもんじゃん?」
「まぁ、あまり期待はしていなかったけどね」
 空に向かってアルカリ性の薬品を詰めた袋を響が放り投げる。
 サンダーブラストで落とし、雨の中に落ちた袋ごとジュァアッと溶けてしまう。
「えぇええ、そんなぁあ」
 雨が途切れるどころか水蒸気すら発生しないことに驚き目を丸くする。
「術に効くわけないじゃん。酸の魔法のアシッドミストまで効くことになるからなぁ」
「うぅ、そうかぁ」
 作戦が失敗していまい、響はしょんぼりと項垂れる。
「柏天君、そこから出さないよ」
 鎌鼬が雨の中にいる彼女を指差す。
「てめぇ、裏切り者のくせにおれっちを封神しようていうのかよぉ」
「出来れば封神はしたくないよ。他の十天君にも伝えて、魔女を館から出してくれればいいだけだもん」
「ざけんじゃないよ。おれっちたちが解くはずないじゃんっ。死んでもごめんだよぉ」
「そうか、じゃあ死ね」
 逃げようとする柏天君に追いついたリュースが女の脇腹の骨を殴り折る。
「ち、レイス・・・氷のボウヤもいるのかよ」
 アンデットがドラム缶の傍で監視するようにじっと見つめている。
「また来るからな覚えろよぉ」
「今度という日は来ない。放っておけばまた犠牲者が出そうだからな!」
 術を放って逃れようとするが、カイにスパッと左手首を斬り落とされる。
「おれっちにはまだ、やらなきゃいけないことがあるんだ。―・・・っ!?」
 銃声が轟き的にされた柏天君からボタタッと鮮血が流れ出る。
「(その足で逃げようというんだかな)」
「ガキにやられるわけにいかないじゃんっ。ちぃいっ、あいつ以外に外に誰かいるのかよぉ!」
 ズルズルと這い逃げようとするが、工場の外に隠れているアレンのサンダーブラストに阻まれてしまう。
「逃がさないように頼んだの」
「あのアマァッ!」
 妖怪の少女に仕返ししようと落雷を放つ。
「鎌鼬ちゃんは傷つけませんっ」
「ありがとう、ギター引きのお姉ちゃん」
 由宇の風の鎧に守れニコッと笑う。
「1人をなぶってさぞかし愉快な気分だろうなぁ?」
「それはちょっと違うです。おねえちゃんたち、オメガちゃんをいじめたじゃないですか。それもたくさんの人数で・・・!」
 彼女の物言いにさすがにムッとしたヴァーナーが怒る。
「オメガちゃんだけじゃなくっていろんな人たちと傷つけたです。皆をこまらせるわるいひとはゆるさないですっ」
「その正義感がいつまで持つか見物じゃん?お譲ちゃんを落雷の餌食にするのも面白そうじゃん」
「えっ?きゃわぁあ!?」
 ふと天井を見上げるとサンダーブラストの落雷がヴァーナーの脳天に迫る。
「ヴァーナーさん、伏せてくださいっ」
 オルフェリアが少女の身体を抱えて床へ転ぶ。
「ち、避けられたかぁ」
「どんな処方箋を与えてもその性格は治りそうにありませんね」
 遙遠はまだ諦めず生徒を攻撃しようとする妖怪を見下ろしはぁっと嘆息する。
「うるさい、おれっちに近づくなぁあっ」
「それくらい痛くありませんね。何年も館に閉じ込めらて孤独感に怯えて暮らしていたオメガさんに比べたら」
 空瓶をいくつも投げつけられるが、痛みを知らぬ我が躯で痛みは感じない。
「これでもう術は使えないでしょう?」
 もう片方の手首をゴトンッと斬り落とす。
「(銃弾が貫通するライフルで心臓を狙えば死ぬだろ。魔法よりも確実にな!)」
 スコープを覗き大量出血で動けなくなったターゲットの心臓へ向ける。
 ズダァアンッ。
 一発の銃弾が心臓を貫通し、コンクリートへ滑り落ちる。
「終わったな」
 棚から飛び降りたコウは、徐々に死を迎えようとする女を見下ろす。
「永遠に閉じ込められる恐怖を自らの身で感じるといい。学習したところで、もう何も変えることは出来ないがな」
 柏天君に1000年以上も魔女を館に閉じ込めたという過ちの業を持たせて葬る。
 魂はトンネルの傍を死に迷うように飛び周り、朝方の6時に封神台へ向かって飛んでいく。
 オメガの魂と共に光のある場所へ帰ろうと念じ館へと戻ったが、秦天君を