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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

リアクション



プロローグ
「ついに山葉 涼司新校長就任のお祝いパーティ開催当日を迎えました! 会場にはぞくぞくと生徒達が集まってきています。野外パーティということで、お天気の心配もありましたが、素晴らしい晴天に恵まれました。剣戟試合会場は、立食コーナーからも見える場所に舞台として作られているようです。蒼空学園の女子たちを魅了した弓削 理さんの姿はまだ見えない様子…登場が待たれます! 藤野真言さんの到着ももうすぐだとか…!山葉 涼司(やまは・りょうじ)校長がどうやら迎えに出てきました。開催の時が刻一刻と近づいています! 「六本木通信社」こと六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)がお伝えしております! なお、今撮影中の画像は後日webにて公開いたします! ご期待下さい!」

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は私服で会場の警備に当たっていた。
「おや、あれは藤野 赫夜(ふじの・かぐや)じゃないのか…?」
「ほんとだわ、赫夜ちゃ−ん!!」
 何かの包みを抱えて人目を避けるようにして、校舎の方へ向かう赫夜にロートラウトが声をかける。
「あ、エヴァルト殿にロートラウトさん…」
 どこか挙動不審の赫夜は包みをさっと後ろに隠してしまう。
「それって何?」
「あはは、なんでもないんだ、気にしないで」
 なんとかはぐらかしてしまおうとする赫夜に、二人はそれ以上追求するのはやめておくことにした。赫夜の顔が赤くなったり青くなったりしているからだ。
「そういえば赫夜さん、弓削 理(ゆげ おさむ)のことだが…俺から見るとよくいる自信過剰なタイプだな。百歩譲っても、硬派な赫夜さんとは合いそうにないと思うのだが、赫夜さんはどう思っているのだ? …まぁ、赫夜さんが恋愛したり、恋の病に浮かれている…というのも想像が難しいんだが…」
「もう、エヴァルトったら! 赫夜ちゃんに失礼よ?」
「おっと、冗談冗談。すまない」
「いや、その、私自身もそう思っているんだ。昨日も祥子さんと総司殿、周殿にも理さんについて言われたよ。…私は、このとおりの性格だろう? 確かに理さんはいい人なんだけれども…」とまた口ごもる赫夜。
「わ、私にはあの理さんのキラキラオーラがどうしてもダメなんだ!」
「わ! しょっぱなからダメだし!」
 二人は思わず声を合わせて叫んでしまう。
「しかし、試合は剣か…拳でないのが残念だ。いつかは、赫夜さんと剣と拳で手合わせしてみたいところだが」
「そうだな。ぜひお願いしたい」
「こういったジャンルの話になると、いつもの赫夜ちゃんに戻るわね」
「はは。私のこういうところが理さんのキラキラオーラが駄目な原因かもしれないな」
 赫夜はそういうと、包みを大事そうに抱えて、二人と別れた。


【第1章】


――パーティ前日に時間は戻る。

「お爺さまもいらっしゃるのね…」
 と放課後、ひとりで不安を抱えて真珠は立ちすくんでいた。
(お爺さまと何を話したらいいかわからないし、私はまた、自分に迷っている…。お爺さまは、こんな私のことを「弱い人間」って思うのかしら…強くなって自立しているところを見せたいのに、私ったら…)
 そこにエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)イアラ・ファルズフ(いあら・ふぁるずふ)が声をかけてきた。
「何か悩みごとかい?」
 見事な赤毛のエースが微笑むと、その場がぱあっと明るくなるように真珠は感じられた。
「あ、ええ」
「ねえ。真珠さん、当事者じゃないから差し出がましいことを言うつもりはないよ。かけがえのない人生をこれからどう生きていくかは、横から色々と口出しするものじゃないとも思うんだけれど、今居る学校を卒業するまでに、毎日の暮らしから色々と感じてゆっくり決めていったら良いんじゃないかな。何か熱中できる事がきっとある。俺の場合は園芸だったりするけれど。今無くても、きっと見つかると思う。そんな楽しい事をおじいさんにメールで伝えることで、ちょっとずつ距離も縮められるんじゃないかな? これは俺からのアドバイス。それと『笑顔で過ごすと、後から良い事もついてくる』は俺の座右の銘なんだ。これからの生き方を考える貴女の旅立ちを祝して、プレゼント」
 華やかな彩りの花束を渡す。
「わあ…こんなもの、もらって良いんですか?」
 真珠の頬がぱあっと明るく桃色に輝く。
「エース、お前のやってる事って、いわゆるナンパな行動だと……もがもが。もがもが…」
「ああ、パートナーのイアラのいうことは気にしないでくれ。俺は美しい人の笑顔がみたいだけなんだ」
「ちっ、そういう事にしてやるぜっ。…てか、お嬢は、じーさんとぎくしゃくしてるんだって? 合コンパーティが名目とは言え、せっかくのチャンスなんだからじーさんと何か一緒に食ってみなよ。少しぐらい距離も縮まるかも知れないぜ? 地球で言うらしいじゃん。『同じ釜の飯を食った仲』とか何とか……。ま、これはただの一案。一緒に食うかどうかはお嬢が決めるといいぜ」
「そうですね。美味しいお料理を食べたら、お爺さまとも喋りやすくなりそう。…エースさん、イアラさん! ありがとう! 凄く嬉しい」
 真珠は花を抱えて二人にぺこっと頭を下げると、帰宅の途についた。
 その後ろ姿を見つめながら二人は
「…感じの良い子じゃねえの」
「あのピュアさはかけがえがないものだよ…守ってあげなければね」
「下心があるのかと思ったぜ」
「そんなものはないよ。きれいなお嬢さんが悩んでいるだけで、この世の損失だってだけさ」

 夕刻。食事時を過ぎた頃を見計らって、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は藤野家を訪れた。
「こんにちは〜宇都宮です」
「あら、あなたはお嬢様がたのお友達の」
 婆やが玄関で応対する。
「赫夜さんと真珠さんはいますか?」
「どうしたの? 婆や…あら! 祥子さん。いらっしゃい!」
藤野 真珠(ふじの・まこと)が祥子の顔を見て、にっこりと微笑む。
「真珠、元気そうじゃない」
「ええ」
 笑顔を浮かべながらも、少し浮かない表情を見せる真珠に祥子は気がついていた。
「赫夜は?」
「もうすぐお風呂から上がってきます。さっきまで庭で素振りをしていたので」
「さっすがねえ」
「あ、噂をすれば。姉様、祥子さんがいらっしゃってるわ」
「祥子さん、どうしたんだ、こんな時間に」
 まだ湿り気を含んだ黒い艶やかな髪と、仄かに石けんの香りを漂わせて赫夜があらわれた。