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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

リアクション


■乗船開始


 ジャタ港。
 17時になると、次々と人がやって来て、蝶子達の用意した豪華客船に乗りこんでいく。
 乗船の入り口では、招待状を確認する警備員の人が2人立ち、チェックしている。


「鼻探偵とツッコミ助手ちゃん、早く、早くー!」
 紅いスッキリとした瀟洒なドレスを見に纏った小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がぴょこぴょこ跳ねながら、歩いている火焔と橙歌とベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)を手招きする。
 跳ねる度に短いスカートと腰の左側についた大きなリボンがひらりひらりとして、中が見えそうになっている。
 美羽は招待状が届いたのを確認すると火焔達に連絡を取り、一緒に行こうと誘ったのだ。
「鼻探偵……」
「ツッコミ助手ちゃん……ですの」
 2人はいつの間にか自分に付けられたあだ名に軽くショックを覚えているようだ。
 ちなみに、火焔は黒いタキシード、橙歌は薔薇のコサージュが胸に付いた黒い体のラインが出るシンプルなミニドレスを着ている。
「すみません、すみません! 美羽さんが失礼な発言を!」
 美羽とお揃いの形ではあるが、こちらはオフホワイトのロングドレスを着たベアトリーチェが2人に頭を下げる。
「ああ……良いんですよ……かまいませんから」
「全然大丈夫に見えなくて、うざい……ですの」
「何してるのー!? 追いてっちゃうよー?」
 美羽の手招きに答え、3人は少しだけ歩くスピードを上げた。
「……橙歌くん、大丈夫ですか?」
「別に……ですの」
「無理しちゃダメですよ?」
「うざい……ですの」
「そうですか……」
 火焔と橙歌は美羽とベアトリーチェに聞こえないくらいの小声でそんな会話をしてから、乗船したのだった。


「はぁ……」
 財布の中身を確認して大きな溜息を吐いたのは桜葉 忍(さくらば・しのぶ)だ。
(自分の分は念のために持ってたタキシードがあったから良かったけど……まさかドレスのレンタルが出来なくて、買わされる羽目になるとは……)
「はぁ……」
 今月の旅の支度金は工面出来そうにない事を思うと大きな溜息が出ざるを得ない。
「しーちゃん、お待たせ」
「待たせたのぅ」
 声のする方へと振り向くと、そこにはドレスアップした2人のパートナーの姿があった。
「しーちゃん、私のドレス似合ってるかな? 変じゃない?」
 東峰院 香奈(とうほういん・かな)は純白の大き目リボンが首のところに付いているひざ丈のドレス。
「香奈のドレス姿すごく綺麗で可愛いし凄く似合ってる」
 さっきまでの暗い表情はどこにいったのか、テンションが上がっている。
「えへへ、買ってくれて有難う!」
 香奈は嬉しそうに笑う。
「忍よ、私にも何か言うことがあるじゃろ」
 スリットのある黒いロングドレスを着た織田 信長(おだ・のぶなが)が忍に催促をする。
「あーそうだな、信長はなんか大人な雰囲気で馬子にも衣装だな」
「うむ、そうか」
 かなり適当な棒読みで言われたにも関わらず、信長はかなり満足そうだ。
「じゃ、行こうか」
 忍は香奈のドレスを見て、ご満悦な様子で乗船していったのだった。


「何!? このままでは参加出来ないのか!?」
「いや! そんな魔法少女戦闘服を着てきて何を言ってるんだ!」
「なんだとう!?」
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は乗船をしようとしていたのだが、船に掛かっている桟橋の下にいる警備員に服の事で止められたのだ。
「そっちもアイドルコスチュームじゃないか!」
「あ、やっぱりダメ?」
 リリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)はある程度、わかっていたらしい。
「入れてくれーーっ!!!」
「はいはい、行くよー」
 リリィは牙竜の首根っこを掴んで、ずるずると引きずり、下がっていった。
「どこまで連れて行くんだ! 俺はパーティーに参加をする為に来たのに!」
「分かってるけど、このままじゃ入れないでしょ」
 リリィは暫く、歩き、港の近くにある建物の影に隠れた。
「これからどうするつもりだ?」
「あたしに考えがあるの」
 それから船を見つめ、時計を見、読書を始めたのだった。


「これでよし、と」
 新調したばかりの紫のマーメイドドレスを着た美緒の背後でフォン・アーカム(ふぉん・あーかむ)の声がしたが、美緒の耳には何も聞こえていないようだ。
 そして、フォンの姿もない。
「美緒、今夜は1人なのか?」
 前方から声を掛けてきたのは毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)だ。
 瀟洒なメイド服を着て、ホワイトブリムも付けている。
「はい。今日は1人で来てみようかと思いまして」
「そうか……なら、今宵のパーティーの護衛役をやらせてもらえないか?」
「まあ、ありがとうございます」
 剣と盾と短刀まで装備している大佐にツッコミを入れることもなく、すんなり受け入れた。
 大佐が護衛として張り付いたまま、美緒は乗船をした。
 大佐に関しては、止められるかと思ったのだが、何も言われることもなく、すんなり通されてしまった。
 チェックしているのは招待状を持っている事と、服装だけのようだ。
 かなり問題がある気がするが……青太の指示なので、抜けていても仕方ないだろう。


「すみませーん! 今日、この船で料理人として雇ってもらったんだけど、この服のままで良いの?」
 普段着のままやってきた霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が警備員に訊ねる。
「ああ、問題ないと伺っているが……名前を聞こう」
 警備員は雇われた人のリストを手ポケットから取り出し、促す。
「霧雨 透乃と緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)です」
 陽子が名乗ると、リストの名前を上から探していき、真ん中辺りで指が止まった。
「あった、あった。通ってよし。ああ、そうそう。今回作ってくれる料理にちなんだ衣装を用意したと、運営会社の方から聞いている。従業員用の控室に置いてあるそうだから、確認してくれ」
「了解! 行こう、陽子ちゃん」
「はい」
 2人は桟橋を軽い足取りで登って行った。


「ドレスはないからせめて従業員としてパーティーに参加と思ってやってきましたが……ドレス……綺麗です」
 色とりどりのドレスを着た人々を咲夜 由宇(さくや・ゆう)はうっとりと眺めている。
「そうですわね。さ、わたくし達も乗船しましょう」
「はいっ!」
(本当は綺麗なドレスも着てみたいのです……)
 一緒に来たアクア・アクア(あくあ・あくあ)に促される、桟橋に近づいて行く。
「お疲れ様です。えっと、従業員として登録した者です」
 名前を名乗るとすぐに通してくれた。
「ああ、従業員用の控室にウェイトレス用の制服が用意してある。自分のサイズに見合ったものを着てくれと言われている」
 警備員はアクアの大きな胸に視線を落としながら、そう告げた。
「わかりましたわ。それと……わたくしの胸に釘付けになるのは分かりますが、もっと自然にやらないと他の女性から気持ち悪がられてしまいますわよ」
「う……気を付ける」
 アクアはその返答に満足そうにし、そのやり取りに驚いていた由宇の腕を取り、桟橋を上っていった。


 開始時間となると、もう乗って来る人がいないか、周りを見渡し、警備員が他の乗組員に合図をし、船は港を離れた。