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カカオな大闘技大会!

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カカオな大闘技大会!

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終章 つわものどもが夢のあと

 闘技大会への乱入事件から数日が経って、軽い修復が行われた闘技場では再び大会の続きが開催された。とはいえ結果だけを言うのであれば、リーズは優勝することができなかった。
 それどころか、優勝者は彼女も知らないどこぞかの剣士であり、リーズを破ったサクラコもその剣士にやられたという話だった。
 サクラコに負けてしまったことから、どちらにせよリーズに優勝への道はなかったということだが、結局のところ――世の中、上には上がいるということを痛感させたような気がする。
「おーいリーズー!」
「んー……って、あれ、ルカ? それに、レンさんと…………陽太?」
 ラムール中央広場のベンチで、何か物思いにふけるように空を見上げていたリーズのもとにルカやダリル、レン、その他にも彼女の友人たち……そして影野 陽太(かげの・ようた)がやってきた。
「お久しぶりです、リーズさん」
「なんで……陽太がここに?」
 リーズのもっともらしい疑問に、陽太は苦笑した。
「ちょっとこのラムールまで買出しに来てたんだけど……その途中でルカさんたちと会ったんです」
「あー……だからそんな重そうなリュック背負ってるの?」
「ははは……」
 背中に背負ったリュックを担ぎなおした陽太。なんにせよ、こうして久しぶりに友人に会えるのは嬉しいことだった。そんな嬉しさを表情に見せるリーズに、陽太はそういえばと、なにやらロケットを取り出した。
「なに、これ?」
「このロケットの中に……っと」
 カチャ――と開いたロケットの中に入っていたのは、一枚に写真だった。そこには、陽太と……そして、リーズの知らぬ金髪の女性が楽しげに寄り添いながら写っていた。
「これって……もしかして……」
「はい……あの……あのときお話していた女性です」
「助け出せたんだ!」
 陽太から話を聞いた瞬間、リーズは自分のことのように跳ねて喜んだ。そんな彼女に、陽太は更に照れくさそうに、歯切れ悪く口を開いた。
「そ、それで……その……それだけじゃなくて……えーと……」
「え……もしかして……?」
「そ、その……えっと、恋人に……」
「恋人になったのっ!?」
 どうやらルカたちはすでに聞いていたようで、なんら驚いた様子はない。――とはいえ、からかうようにニヤニヤはしているが。
 終始驚くリーズに、ばたばたと陽太は慌てて手を振った。
「こ、恋人になったって言っても……そ、その、まだ日も浅いし……えっと……」
「でも……すごいじゃない」
 リーズは、そう言って陽太にほほ笑んだ。あれだけ……哀しく、そしてつらく彼女を想っていた彼が、ようやく宝物を掴めたのだ。リーズは、素直にそれを嬉しく思った。
 色恋沙汰は苦手であったが、きっと――彼の想いが強く、純粋すぎたからだろう。いつしかリーズも、彼の心がどれだけ深いところにあるものなのか、それだけは少なくとも、理解できた。
「ほんと……よかったわ」
「ありがとう、ございます……」
 ばたばたと手を振っていた陽太も落ち着き、リーズに感謝の笑みを返した。すると、ふと陽太は何か思い出したように背中のリュックを探り出した。
「あ、そうだ……リーズさんに渡したいものがあったんです」
「渡したいもの?」
「えーっと……あ、これです」
 そう言って陽太が渡してくれたのは、綺麗にラッピングされた箱だった。きょとんとするリーズに、ルカたちも開けてみたら? といった視線を送っている。
 陽太が頷くのを確認して、リーズはラッピングを解いて箱を開けた。そこには……
「うわぁ……」
 カカオな香りが漂う、美味しそうなチョコレートが入っていた。きっと、手作りで作られたものなのだろう。形はリーズの剣の形をしているのが色気のないところだが、リーズにとってはむしろこちらのほうがありがたかった。
「なんか……闘技大会の優勝賞品と比べたら全然だし……僕なんかのチョコでなんですけど……良かったら、もらってください」
 照れくさそうに笑った陽太を見て、リーズはくすっと笑った。
「環菜さん……だったよね……その人があなたのことが好きな理由が、なんとなく分かって気がするわ」
 リーズの言葉によりいっそう真っ赤に顔を染めた陽太を見ていると、みんなの心が穏やかになっていく気がした。
 リーズは、ぱくっと一口チョコレートをかじる。
 なに……旅のお金がなくてもきっとなんとかなるだろう。バレンタインデーは、想いの届く日なのだから。――まあ、もう過ぎてしまったが。
「なあ、リーズ」
「んー、なに? 橘さん」
 ぱくぱくとチョコを食べるリーズに声をかけたのは、橘 恭司だった。
「お金が入り用なんだったら、うちのアルバイトでもしてみるか?」
「……っげほっげほっ! な、なんですって……」
 思いもよらなかったことを言われて、思わずチョコを食べたままリーズはむせてしまった。
「いや、だからアルバイト。バイト代に色はつけるよ?」
「…………」
 そうか、アルバイトか。
 考えてみたらずっと集落暮らしだからそんな概念など頭から抜け落ちていた。なるほど、世の中の人はそうして暮らしていってるわけか。狩で得た獲物を売ったりしてるわけではないわけか。
「…………って、それならそうとさっさと言いなさいよー!」
「……俺のせいか?」
 何かと理不尽事を言われている気がしないではないが、とにかく。リーズ・クオルヴェル、(株)特殊配送行ゆるネコパラミタ――臨時アルバイト採用、であった。
 きっとこれから、色んなことが、色んな出会いがあるかもしれない。バイトも、友達も、仲間も……そして陽太のような、愛する人も。だけど、それを守っていけたら、“強く”なることがそうすることに繋がるならきっと――
「…………うん」
「リーズ? どうかしたか?」
「ううん、なんでもない……行きましょっ」

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
バレンタインデーの大闘技大会、いかがだったでしょうか?

今回、色々な方の闘い方をアクションとして見せてもらい、とても楽しませてもらいました。
こちらの想像を越えるような闘い方も多く……皆さんの思考ルーチンには驚きです。

ちなみに、今作においては基本的に対決形式をとっているのですが……
負けた勝ったの判定は決してステータスなどを緻密に判断した結果、というわけではございません。
あくまでアクションと参加しているキャラクターたちのそれぞれの動き方で、“物語”として勝ち負けが描写されただけに過ぎません。
アクションの良し悪しはほんの少しだけ関係しているところもあるかと思いますが、基本的には不可抗力に近いものだと思っていただければ幸いです。
……勝っても負けても、そこにいるキャラクターは確かに生きています。勝ったキャラクターが良いキャラクターでもなければ、負けたキャラクターが悪いキャラクターでもありません。
少しでもそういったことを心の隅にでも置いておいてくだされば、きっと、もっと『蒼空のフロンティア』の世界は広がるのではないかな……と。

話がずれてしまいましたね。
皆さんの紡いでくださった物語の結末は、リーズがアルバイトを始めるよ! でした。
今後、彼女がどうやってお金を稼いで生きていくのか、私自身も楽しみです。

それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加ありがとうございました。

※03月07日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。