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パラミタ・ビューティー・コンテスト

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パラミタ・ビューティー・コンテスト
パラミタ・ビューティー・コンテスト パラミタ・ビューティー・コンテスト

リアクション

 

オープニング

 
 
「それでは始めましょう。第一回、空京大学、パラミタビューティーコンテスト!!」
 マイクを通して、シャレード・ムーンが、大会の開催を宣言した。
 それに合わせて、ダッシュローラーの唸りをあげて重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)が空京キャンパスのメインストリートを疾走してくる。
 左手に持ったパイルバンカーを地面に打ち込み、重攻機リュウライザーが反転急制動をかけた。
 赤と黒にリファインされたボディで、金色のエッジが光り輝く。その異様に張り出した肩の装甲が開き、換装したミサイルポッドから十二発もの花火が発射された。
 ドンと大気を震わせて、観客の頭上で色とりどりの煙が花開いた。
 観客たちから歓声があがる。
「では、学生の皆さんの中から選ばれました、審査員の方々を御紹介しましょう。最初は、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)さん」
 ステージ端に、審査員たちは一列にならんで座っていた。
「ども」
 シャレード・ムーンに名前を呼ばれて、重攻機リュウライザーの打ちあげた花火を満足そうに眺めていた武神牙竜が、軽く会釈して応えた。着流しの下にズボン、上にはコートと、いかにも明倫館らしいファッションを着こなしている。
「続いて、樹月 刀真(きづき・とうま)さんです」
「どうも、ぺこり」
 挨拶をしてから、樹月刀真が横に座っている武神牙竜の方をむいて小声でささやく。
「おい、牙竜、コンテストに出るんじゃなかったのか?」
「どこから、そういう情報を仕入れたんだ?」
 武神牙竜が、あっさりと否定した。最近パワーアップした重攻機リュウライザーを参加させようとは考えもしたが、自分がコンテストに出るなどと言う考えは最初からない。
「刀真こそ、なんで審査員なんかしている」
「いや、うちはコンテストなんかがらじゃないからな。ただ、牙竜が出るって聞いたコンテストのことを受付で問い合わせていたら、いつの間にかこんなことに……」
 武神牙竜に聞かれて、樹月刀真が困ったように答えた。そのわりには、西のロイヤルガードの制服を漆黒に染め直した物をわざわざ着てきている。本当は自身がコンテストに出る気満々だったんじゃないかとも思わせる出で立ちだ。
「続いて、今期、めでたく空京大学に進学なされました立川 るる(たちかわ・るる)さんです」
 シャレード・ムーンが名前を呼んだとたん、立川るるにスポットライトがあたった。どうやら、観客席後ろに突然ドタドタと走ってきたデコトラからの光による物のようだ。
 不思議なことに、デコトラは無人のようである。だが、見る者が見れば、その運転席にフラワシのノーホエアマンの姿が見えただろう。
「おしゃれの基本は足許から。デコトラの似合う、ふわっとした軽い人を期待しています」
 立川るるが軽くお辞儀した。羽織っているショールふうの貫頭衣であるケスケミトルには、綺麗な幾何学模様の刺繍が施されていた。長い髪は三つ編みにして左右にまとめ、前髪は星形のクリップで留めている。
「続いては、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)さんです」
「よろしくお願いしまーす。私に任せて
 スッと椅子の上に立ちあがった小鳥遊美羽が、ふわっとロングコートとミニスカートを翻して美脚を披露した。羽織っている白いロングコートは、西のロイヤルガードの物だ。側面のロンバス模様とスタンドカラーの部分が深紅で、シンプルながらも鮮やかな印象を残す。その下に着ているのが、蒼空学園の新制服で、ワインレッドのジャケットに、チェスナットブラウンのプリーツスカートがベースとなっている。上着が袖を取り外せるのが特徴で、カラーやネクタイの色合いとも相まって、以前の制服よりはシックで大人びた感じの物となっていた。
 スカートはぎりぎりまで短くして小鳥遊美羽なりのアレンジをしているが、ロイヤルガードのコートのおかげで、必要以上にセクシーにはなっていないところで微妙なバランスが取れている。とはいえ、ちっぱいな小鳥遊美羽としては、セクシーという言葉には今ひとつ手が届かないようではあるが。
「続いて、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)さんです」
「よろしくお願いします。頑張って、採点しますので」
 ぺこりとお辞儀して、ベアトリーチェ・アイブリンガーが言った。
 こちらも、パートナーの小鳥遊美羽と同じ格好をしている。とはいえ、大きく前をはだけた小鳥遊美羽が、蒼空学園の制服の方を主体に着こなしているのとは違って、ベアトリーチェ・アイブリンガーの方はロイヤルガードの制服の方を主体にして着こなしていると言えた。高い位置で結んだ長い黒髪を自然な感じで背中へと流していることも相まって、いかにも清廉な女王の近衛というイメージがある。知的に見えるメガネのせいもあって、動の小鳥遊美羽に対しては、静のイメージが強いと言えた。
「次は、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)さんです」
「みんなの衣装を参考にさせてもらうよ! 頑張ってね!」
 カレン・クレスティアが元気に言った。
 こちらは東ロイヤルガードの制服をイルミンスール魔法学校の制服の上に着ていた。明るいエメラルドグリーンのコートは、モヘアで縁取りがされ、左右に大きく紋章状の意匠がプリントされている。きちんと裏地までチェッカー模様となっていて、かなりおしゃれだ。肩から掛けた光沢のあるシルクの赤い帯がアクセントとなり、腰から下がった帯と共に、歩みにつれてふわりとゆれるようになっている。
「続いて、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)さんです」
「ちょっと、なんでテスタメントが審査員席にいるのよ!」
 聞いてないと日堂真宵が叫んだが、ステージ上のベリート・エロヒム・ザ・テスタメントは華麗にスルーした。
「敬虔なれ。美とは、内よりいずるもの。このテスタメントが、それを見てさしあげます」
 いかにも聖職者ですと言いたげな、ローブにふんだんのスカーフやシュールやヴェールなどを組み合わせた姿で、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが上から目線で言った。その背中には、メロンパンの紋章が描かれている。また、聖なる札を貼りつけたメガホンを持ち、大声で批評する気満々である。
「次は、師王 アスカ(しおう・あすか)さんとラルム・リースフラワー(らるむ・りーすふらわー)さんです」
「芸術家としての見地から、皆さんのぉ衣装を描写させてぇいただきまぁす」
 胸元を飾るリボンととおそろいのかわいいリボンのついた薄紅色のベレー帽を被った師王アスカが、画材セットを手に言った。薄紅色のロングベストを品よく着こなしている。ふくらんだ七分袖をリボンで留めたブラウスとスカートは、うっすらとベストの色を映して薄紅色に染まって見えていた。
 その頭の上には、胸元で帯をリボン結びにした、紫袴の巫女装束姿をしたラルム・リースフラワーがちょこんと乗っていた。花妖精らしく左側で三つ編みにした緑の髪の上に赤い花冠を載せており、小さな身体と体重から、まさにちょこんといった感じだ。
「ほわぁ。人がいっぱい……。頑張って審査するね……」
 とりあえずラルム・リースフラワーはおまけみたいなものだが、師王アスカのイラストが追いつかないときはオルベール・ルシフェリアの撮った写真を元にして後日全員を描き下ろすつもりらしい。
「次の審査員は、天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)さんです」