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コンビニライフ

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コンビニライフ

リアクション

 店の駐車場の一角に儲けられた警備員達のイコンの簡易ハンガーから姿を現しているのは、志方 綾乃(しかた・あやの)ラグナ・レギンレイヴ(らぐな・れぎんれいぶ)ツェルベルスと、和泉 猛(いずみ・たける)ルネ・トワイライト(るね・とわいらいと)の乗るネレイドである。
「初撃が外れたか……ルネ、目標の分析は済んだか?」
 コクピットの猛の言葉を受けて、ルネがコンソールを手早く操作する。
「はい、猛さん。敵のイコンは恐らくシュメッターリング。それも部分的にカスタマイズされたものと推測されます。でないと、あの一撃で撃墜出来ましたから」
「パラ実イコンではないのか……射程まではどれくらいだ?」
「目標の武器はマシンガン。予想攻撃範囲まであと100秒です」
「俺の読みが当たったな」
「と、言いますと?」
「普通に警備をするならば朝の方が都合がいい。また、夜も店員が店員な為多分とんでもないことが起こりそうではある……が、敢えて中間の昼の警備をした、という選択だ」
「そう……でしょうか?」
「最も、昼の店員のバイトはみすみだが……まぁコンビニ内部で問題があっても多分何とかなるであろう」
 猛がやや嬉しそうな声で話す中、ルネの手前のモニターに点滅するマークが出る。
「猛さん、ツェルベルスの綾乃さんから通信です」
「繋いでくれ」
「はい、サブモニターに回します」
 パッとモニターに綾乃の顔が映る。
「いきなり攻撃ですか? 猛さん?」
「近づいてくる前に少し位破壊した方が良いだろう?」
「でも、もしお客さんだったら……」
「完全武装のイコンでコンビニに来るのは客であるはずがなかろう?」
「俺もそう思うぜ!」
 イコンの操縦を任されたラグナの声が回線に割り込んでくる。
「私達の仕事は敵を倒す事ではなく、コンビニを守る事です! ラグナ?」
「てことは、賊のイコンを破壊する事と同じだろう?」
「ああ……」と頭を抱える綾乃にルネが「わかります」とフォローをする。
「おっと、んなこと言ってる間においでなすったぜ?」
 モニターに映る敵影を見たラグナが操縦桿を力強く握る。
「二体か……一体は任せよう」
 そう言って猛も通信を切ろうとするが、綾乃がそれに待ったをかけた。
「あの……攻撃は、まずは私が外部スピーカーを使って警告を実施してからでも遅くないはずです」
「綾乃、何を呑気な事言ってるんだ?」
 ラグナが綾乃に口を尖らせる。
「よく口癖で言ってるだろう? 志方ないって」
「それは、説得の末、戦闘になった時の言葉です」
「ふん、俺はやるぜ……」
 カチャッと操縦桿の射撃スイッチを目標に合わせるラグナ。
 だが、反応がない。
「あー、おまえ、コントロール返せ!!」
 ラグナの抗議を無視して綾乃が猛にも同意を求める。
「よろしいですね?」
「俺は構わん。ルネ、ネレイドを少し後退させるぞ。様子を見守りつつキャノンのチャージをしておけ」
「了解しました」
 ツェルベルスと並んでいたネレイドがやや後退する。
 マシンガンを抱えた二体のシュメッターリングがツェルベルスの前方で停止する。
 綾乃が外部スピーカーを使って呼びかける。
「止まりなさい。ただコンビニにお買い物に来るだけでしたら、イコンから降りて下さい」
と、ガトリングガンを持つ腕で降車するよう指示を出す。
「うるせぇ!」
 敵のイコンから野太い男の声がする。
「俺達はここに、唐揚げ……かりあげ……アレ?」
「カツアゲだ」
 もう一人の男の声が響く。
「そう、カツアゲしに来たんだ」
「カツアゲカツアゲって、そんなにカツ揚げが欲しいなら、レジの人に50G持ってメンチカツを下さいと言いなさい!」
「バカヤロー! それじゃ商品と引き換えに俺達の金が減るじゃねえかッ!!」
「当たり前だ……」
 コクピットで様子を見ている猛が静かに突っ込む。
「コンビニを正しく利用するのであればお客様として遇するけど、そうでないのなら全力で阻止しますよ?」
「ならば話は早いな。お前たちを排除した後、コンビニを襲う」
「綾乃、向こうはやっぱりやる気マンマンだぜ?」
 ラグナの声に、綾乃ががっくりと肩を落とす。
「志方ないですね。こっちだって仕事なんです。普通にお買い物するより高い代償を払いなさい!!」
 言葉と共に綾乃のスキル【死刑宣告】がスピーカー越しに行われる。
 殺気を含んだ言葉に、敵のマシンガンの発射が一瞬遅れる。
 その隙を見逃す猛ではない。
バシュウゥゥゥンッッ!!
 敵の腕を肘関節を狙って放たれるネレイドのビームキャノン。
 マシンガンを持ったまま落下するシュメッターリングの右腕。
「このぉッ!!」
「綾乃! 一体は無力化した。もう片方を頼む!」
「ラグナ! 武器のロックは解除しました!」
「待ってました!! おりゃあァッ!!」
 ガドリングガンを乱射すると、即座にもう一体のシュメッターリングが回避運動に入る。
「こいつ!? 結構デキるみたいだぜ!」
と、ラグナは即座に腰に付けていたプラズマライフルに腕を伸ばす。
その傍を先ほど、片腕を落とされたシュメッターリングが駆け抜けていく。
「猛さん、こちらに来ます!!」
 ルネが接近するシュメッターリングを見て猛に叫ぶ。
「キャノンの再チャージがまだか……アサルトライフルで迎撃しながら回避するぞ」
 だが、機動性においては大型ビームキャノンを持つネレイドよりシュメッターリングの方が優れていた。
 猛はそれを見越して、間合いを一瞬で詰めるシュメッターリングにアサルトライフルを構える。
「射撃型だと甘く見たようだな」
「何ッ!?」
 シュメッターリングの手が背後に回り、ビームサーベルが煌く。
「イーグリットの!?」
 ルネの短い叫びと同時に、アサルトライフルが真っ二つにされ、爆散する。
「やるな……」
「こっちもこれで飯食べているんでね。学生のバイトとは違うんだよ」
「ほざけッ!」
 猛が操縦桿を思いっきり前へと突き出す。
「ルネ! パワー勝負でカタをつける、ブーストだッ!!」
「了解。パワーブースターを使用します。限界まで90秒!」
 駆動音が獣の咆哮の如く、荒野に響き、ガシンッl と真正面から組み合うネレイドとシュメッターリング。
 重量に勝るネレイドがシュメッターリングを押していく。
「ほう……やるな、だが!」
 シュメッターリングが足払いをかける。揺れるネレイドの巨体。
「!?」
「重心をずらせば、どんな巨体だろうとコケるのさ!」
 ズズンッ、と尻餅をつくように倒れるネレイド。
「トドメだッ!!」
 ビームサーベルを振り上げる
「待っていたぞ? チャージが終わるまでな」
 猛が口の端を歪める。
「ルネ、キャノンだ!!」
「はい!!」
「しまっ……!?」
 至近距離から放たれた光がシュメッターリングの肩口を吹き飛ばす。
「まだまだ!!」
 続けてネレイドのパイルバンカーが、ビームサーベルを持ったシュメッターリングの腕に打ち込まれる。
「くっ……これ以上は無理か……おい! 撤退するぞ!?」
 呼びかけられたもう一体のシュメッターリングは、ツェルベルスのガトリングガンとプラズマライフルの猛攻をかいくぐりつつ、マシンガンで応戦していた。
「綾乃! プラズマライフルでコクピットごと吹き飛ばさないと埒が明かないぜ!?」
 ラグナが抗議するが、綾乃は何時になく厳しい声でそれに応対する。
「忘れたの? 私達はコンビニの防衛を第一義にしてるんですよ?」
「けどよぉ……おわっと!?」
 ツェルベルスが小さく跳躍しビームサーベルを避ける。
「くそ……相棒が重傷を負ったみたいだな。まぁ、いい。偵察はこの程度で十分だ」
「偵察……?」
 綾乃がその言語にピクリと反応する。
「とりあえず、次来た時に入りやすいようにはしておくかッ!?」
 シュメッターリングがマシンガンの照準をツェルベルスから外し、コンビニに向ける。
「いけないッ!?」
 ツェルベルスが即座に飛び出し、コンビニの前に立ち塞がる。
タタタタタタタタッッ!!!!!
 身を呈してコンビニの盾となるツェルベルス。
 装甲が傷だらけになっていく。
「もういい。退くぞ!」
 ネレイドと戦っていたシュメッターリングがそう声をかけ、二体は踵を返して撤退していく。
「待ちやがれっ!!」
 ラグナが叫び、ガドリングガンの引き金を引こうとする、が。
「チィ、弾切れか!? ならば!! フレイムスロワーで消毒だ!!」
 火炎放射器から巻き起こる炎、
 その中をシュメッターリング達が、道中に落ちていた腕を持って退却していく。
「ラグナ、もう射程外です」
 綾乃に止められたラグナが悔しそうに奥歯を噛み締める。
「逃がした……」
「いいえ、コンビニを守りきった私達の勝ちです」
 綾乃はそう言ってこちらにやってくるネレイドに向き直る。
「猛さん、ルネさん、ご無事ですか?」
「そちらほど被害は大きくない。腰のアクチェーターに少々のダメージがある程度だ」
「こちらもそれ程ダメージはありませんよ?」
「フッ、強がるな。外から見るとわかる」
 綾乃と猛が会話する最中、ラグナがコンビニの前にいるセルシウスを見つける。
「あいつもは俺と同じエリュシオン人か……さっき、地球にはコンビニが五万軒以上あるって吹き込んだけど」
 ラグナは「奴がこの戦いを見た後でどう解釈するかが楽しみだぜ、嘘は言ってないからな」と内心ほくそ笑むのであった。