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リアクション

 大混戦の中、見かねた四谷 大助(しや・だいすけ)が舞い降りてきます。
「おい! いい加減にしろよ。お前ら!」
 子供達が一斉に大助に注目しました。
「もうよせよ。無駄な争いすんなよ。それより、みんな仲良く……な」
 できるだけ柔らかい口調で説得しようとする大助を指差して、1人の子供が叫びました。
「レイダーが来たぞ!」
 すると、他の子供達が口々に叫んで飛びかかってきます。
「レイダーだ!」
「捕まえろー!」
「うわ! ちょ……」
 思わず、鳳凰の拳を繰り出しかける大助。しかし、背後からグリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)に止められます。
「子供達に怪我をさせちゃダメよ大助」
「分かってるよ」
 大助は、必死で穏やかに子供達を説得しようとします。しかし、おそろしい形相で向かってくる子供達の姿に思わず一歩あとずさりました。しかし、そこには地面がなく……。

 ズボ!
 
 気がつくと、大助は落とし穴に落ちていました。上では子供達が手を叩いて喜んでいます。
「かかった、かかった!」
「やったー!」
「……」
 大助は、怒りを抑えて地上へと飛んで行きました。
「だめじゃないか。こんないたずらしちゃ」
 必死で笑顔を浮かべようとしますが、笑いが引きつってくるのが自分でも分かります。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん」
 背後から、声がします。大助とグリムが振り返ると、かわいらしい男の子が手招きをしています。
「いたずらしてごめんね。お兄ちゃん達に、このドングリのケーキ上げるよ」
「まあ!」
 心を入れ替えたのかと、二人が歩き出したその時……。

 バラバラバラ!

 頭上から、大助めがけて何かが落ちてきました。
「あいたたたたた!」
 大助は悲鳴を上げました。何が落ちて来たのかと思ってみれば、栗のイガです。
「大丈夫? 大助?」
 グリムが声をかけます。なぜかグリムは無傷です。
「ひっかかった! ひっかかった!」
 子供達が歓声を上げて逃げていきました。
「こ……このクソガキ!」
 大助は、拳を握りしめます。
「ダメよ、大助!」
 グリムは大助を止めました。その、グリムに向かって、ティンカー・ベルがゲーキを投げつけます。
「危ない!」
 大助の声に、グリムは思わず身をすくめました。
 グシャ!
 大助の顔面がケーキだらけになります。
「ふう……」
 グリムは額の汗をぬぐって言いました。
「助かったわ。盾(大助)が無かったら危なかったわね」
「あのなあ!」
 怒り狂う大助。ついに限界に達しました。
「グリム……もう、いいだろ?こいつらに遠慮は必要ない」
 そういうと、大助は目にも止まらぬ早技でティンカー・ベルを捕まえました。
「は……はなしてよ!」
 ティンカー・ベルが大助の手の中でもがきます。しかし、大助は情け容赦なく締め付けます。
「調子に乗るな。これ以上悪ふざけが過ぎるならこのまま握りつぶすぞ」
 ついに、ティンクは気を失ってしまいました。慌ててグリムが止めます。
「す、ストップよ大助! それ以上握ったら妖精さんの中身が出ちゃうわ! それよりも、もっと良い手があるの」
 そういうと、グリムは大助になにか耳打ちをしました。大助はうなずくと、変身の実を口にしました。その途端、大助の体は、子供が見るだけでワクワクするような『金ぴか・装飾ゴテゴテの伝説の剣(笑)』に変わりました。
 案の定、子供達が駆け寄ってきます。
「うわー!」
「すげえ」
「かっこいい!」
「触らせて、触らせて」
 子供達が口々に叫びます。
「いいわよ。ハイ」
 一番大きい男の子に、グリムが剣を渡しました。
「わー! すげえ」
 子供がそれを手にした途端、大助は変身を解き、子供の体を羽交い締めにします。そして、思い切り尻を叩きました。
「おしおきだ! この!」
 何度も何度も尻を叩くと、子供が泣き出しました。
「剣に化けるなんて、卑怯だ!」
 子供達は怒って、ナイトメアに変化します。
 
 そこへ、声とともに誰かがやってきました。
「おいおい。いい加減、喧嘩はやめろよ!」
 見ると、ピーター・パンがスラッシュギターを抱えて浮かんでいます。
「ピーター・パン?」
 アゾートが叫びました。しかし、ウェンディが首をふります。
「違うわ。あれは皐月よ」
 そう。彼はピーターでなくピーターに化けた日比谷 皐月(ひびや・さつき)です。正体を見破りかねないティンカー・ベルが気絶している今を狙って出て来たのでした。
 皐月はその場にいるみんなに向かって叫びました。

「悪夢だろうが何だろうが、痛いのとか苦しいのとか、誰だって御免だろ? 夢は覚めるものだろ? だから。皆で冷めようじゃねーか、なぁ? 夢ならやっぱ、楽しくなけりゃな」

 そして、スラッシュギターを奏ではじめます。その音色に興味をもった子供たちが、皐月に駆け寄ってきました。
「ピーター、それなんだい?」
「おもしろい音だね」
「触ってみるか?」
 皐月は快く子供達にギターを手渡しました。

 ポロローン

 弦を弾いたとたんに響き渡る音に、子供達は狂喜します。

「おもしろーい!」
「だろう? これで、色んな曲が弾けるんだ」
「何か聴かせろよ!」
「いいとも」

 そう言うと、皐月は【幸せの歌】を奏ではじめました。それに合わせて自身は歌を歌います。

 興奮した子供達の中の1人が、木の枝で創った笛を吹きはじめます。他の子供は、島に住むインディアンから借りた太鼓を叩きはじめました。
 何もできない他の子供達は皐月に会わせて歌ったり、踊ったりしはじめます。ウェンディやアゾート、海賊達も駆けつけ、各々得意な楽器を奏ではじめました。ちょっとした、ギグです。

 その音で、ティンクが意識を取り戻しました。そして、何の騒ぎかと皆が歌い踊っているところまで飛んで来て叫びました。

「みんな、何をしているの?」

「ピーターと一緒に歌って、踊ってるんだよ」

 子供達の中の1人が答えます。

「バカね! それはピーターじゃないわよ! その証拠に、耳の裏に痣がないわ!」

 本当に細かいところまでよく見ている妖精です。しかし、歌って踊って上機嫌になっている子供達にとっては、目の前のピーターが、本物だろうが偽物だろうが、既にどうでもよくなっていました。

「どっちだっていいよ。僕ら、今日はこのお兄さん達と遊んでとても楽しかったんだ。だから、この人達のことすごく気に入っちゃった」
「それ、本当?」
 ウェンディが子供達に尋ねます。
「もし本当なら、ピーターに連れてこられた子供達の居場所を教えてくれない?」
「いーよー」
 子供達はあっさりうなずきました。
「あの子達は、きっとピーターと一緒さ。最近、いつもピーターはあの子達とばかり遊んでいるから。でも、ボクたちには居場所までは分からないんだ」
「なんだ……」
 アゾートががっかりします。
「でも、ティンクなら、知ってるよ。ティンクとピーターの心はつながってるんだ。どこにいても、二人は相手の居場所が分かるんだよ」
 その言葉に、一同の目が輝きました。
 ウェンディが立ち上がって言います。

「ティンク、お願い。ピーターの居所を教えて」
「冗談じゃないわ!」
 ティンクはそっぽを向きました。
「教えてやれよ、ティンク」
 子供達が口々に言いますが、
「ピーター・パンを裏切るなんて、できない!」
 といって、ティンクはさっさと逃げ出してしまいました。