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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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リアクション

「ふふ〜ん♪ 今回こそ!! 優劣付けられるわ! だって、ただのゴミ拾いでしょ? 余裕、余裕!」
「エリヌースさん、口を動かさないで、手を……」
 ゴミ袋を片手に持ち、黙々と浜辺のゴミを拾っていたみすみがエリヌースに言う。
「甘いわね!! いいこと、みすみ? 世の中ってのは三角形のピラミッド構造なのよ!? そして、種モミ剣士の頂点に立つのがあたし!! つまり、あたしは指揮するのが仕事なの!!」
 エリヌースの傍には既にうず高く積み上げられたゴミがある。それは、救世主の種もみ戦隊タネモミジャーとイロハが集めてきたゴミである。
 他にもあと二人程ゴミを拾っていた人物が居た気がするが、エリヌースの燃える瞳にはみすみ以外の人物は映っていない。
 エリヌースがみすみのゴミ袋をチラリと見て、
「ふふーん!! まだそれだけなの? あたしがあと百人いたら、海岸のゴミなんて一掃出来るのよ?」
 近くでゴミを拾っていたイロハが戻ってくる。
「エリヌース。さっき、釘踏んづけた傷は大丈夫ですか?」
「……」
 みすみの視線が痛い。
「……イロハ、大した事ないって言ったじゃん!?」
「え……だって、この世の終わりみたいな声で泣いてたから……」
「……」
 主を思いやるタネモミジャーの活躍の元を知るみすみであった。

「おしゃべりはそこまで。あなた達、第二波がきますよ?」
 元気なティーカップパンダのチャンとプルーを従えたイロハが、歴戦の防御術と女王のソードブレイカーで防御の姿勢を取る。
 イロハは等しく種モミ剣士を守っていた。ただ、彼女は激昂し易く、それ故危機に陥りやすい事も事実であった。
「エリヌースにみすみ、大丈夫よ。私が護ってあげるから……私は略奪者を討ち、護る者だから……」
 そんなイロハの決意を無視してエリヌースがみすみに宣戦布告する。
「さぁ、みすみ! この海にある最後の大きなゴミよ!! これを倒した方が種モミ剣士として優れていると言っても過言じゃないわ!!」
 エリヌースの言葉にみすみが静かに頷く。
「せいぜい苗床にならないよう、頑張るのね? 海水じゃ何も育たない……わぁぁ!?」
 みすみに気を取られていたためか、エリヌースは密かに足元に忍び寄っていたクラゲの触手に気づかなかった。
 半透明である触手はステルス迷彩を纏っているのと同じであった。
「エリヌース!!」
 海に引きずり込まれたエリヌースを、イロハとタネモミジャー達が直ぐ様助けに向かう。
「おのれ、よくもエリヌースを!!」
 表情の急変したイロハがパラミタイルカのオリオンを呼び、その背に乗って海へと向かい、暗黒の弓でのサイドワインダー、轟雷閃を駆使して重戦車の如く、襲いかかるクラゲの触手を断ち切っていく。
「どう!? これだけのつもりぃぃ!?」
 イロハの頭に咲いた四つ葉のクローバーが揺れる。
 みすみも、エリヌース救出のために走りだそうとするが、その肩を誰かの手が掴み、止める。

 そこには、パーカー、タンキニスパッツ、パレオで日焼け防止のためかガッチリ肌をガードした鬼崎 朔(きざき・さく)がいた。
「朔さん?」
「みすみ、遅くなってすまない。ゴミ拾いが大変だったんだ」
 みすみに微笑む朔は、周囲の人間を行動予測しつつ、みすみをさりげなく護りつつ、歴戦の立ち回りで素早くゴミ拾いを行っていた。その集めたゴミは、空飛ぶ箒シーニュに乗っている。
 また、他にもゴミ(と呼べる人間)には則天去私に、我は射す光の閃刃で攻撃していた。
 そんな朔に寄り添う様に、妖艶なビキニの水着姿で現れたのはアテフェフ・アル・カイユーム(あてふぇふ・あるかいゆーむ)である。
 今回掃除屋の衛生兵役として参加していたアテフェフは、先程クラゲに刺された少女の応急処置を済ませていた。
 思考と言動はアレだが、医術に優れた彼女を連れてきたのは、朔のお手柄である。
 そのアテフェフの傍には、朔のあどけない子供姿を思わせるアルラウネがいる。
 それを見たみすみが驚いてアテフェフに問う。
「アテフェフさん!? いつ朔さんとの間に子供を!?」
「ええ……ついこの間ね。朔ったら激しく……」
「ち・が・う・か・ら!!」
「……と、なかなか認知してくれないのよ? 自分でまいた種なのに」
「へぇ……」
「そんなの撒いた覚えないよ!!」
 朔達がもめている中に、ルーシェリアがそっと近づき、
「あのぉー、いいんですかぁ?」
「え?」
「何かぁ……大ピンチみたいですよぉ?」


 イロハは襲いかかる触手を払いのける事に手一杯であり、今まさに食されようとしているエリヌースの救出まで手が回っていない。
「放っておきましょう?」
 アテフェフが素っ気無く言った。
「どうして? エリヌースさんが、このままじゃ……」
「だって、クラゲって体の90%以上が水分なのよ。どうせ浜辺に上がって来ないわ」
「じゃあ私は、イロハだけ助けてこようかな」
「駄目です!!」
 みすみが朔とアテフェフに叫ぶ。クラゲに捕まっていた種モミ剣士の「そうよ!」と同意する声がやや遠くで聞こえる。
「だって……クラゲを倒さないと、海でみんな泳げなくなります!」
 ルーシェリアの耳に、「そっちかよ!」という叫びが聞こえた気がした。
「みすみ……強くなったね……」
 朔が潤んだ赤い瞳を拭う。
「朔さん、私が集めたゴミを依り代にして、フラワシのエンリルを降霊させて下さい!! 私が、エリヌースを助けます!!」
「みすみ……残念だけど、私とみすみが集めたゴミだけじゃ足りないんだ」
「クスクス……」
 アテフェフが笑う。
「あら、あそこにうず高く積まれたゴミ山があるじゃない?」
 ルーシェリアも手を挙げる。
「はいはぁい! 私のぉ、集めたゴミも有りますよ?」
 朔が皆の顔を見回す。
「みんな……ありがとう!!」
 天から「あたしのゴミを使わないでぇぇ!」と抗議の声が聞こえたが、朔達の団結の前には有ってないようなものである。
「降霊!! エンリル!!」
 海岸で拾った多量のゴミを依り代として、イコン用のフラワシ、エンリルが降霊される。
 バーストダッシュで降霊したエンリルに乗り込む朔。
 みすみがエンリルの手に捕まり、
「朔さん! 私が注意を引きますから、その間にエリヌースさんの救助を!!」
「わかった!」
「朔? 膝位迄ならともかく、エンリルでは水中戦闘は不利なのよ? 水に引きずり込まれないようにしなさい」
 アテフェフの助言に朔が頷く。
「良いチームですねぇ」
 ルーシェリアが言うと、アテフェフが彼女に顔を向け、
「当たり前でしょ? だってあたしは朔に後で性的なスキンシップ……もといマッサージしてあげる為だけに来てるだけなのよ? 正直、他はどうでもいいわ」
「……」
「だから、応急手当にリカバリ、治療……蘇生術で溺れようがクラゲの毒で死のうが、鮫に体半分喰われようが苗床になろうが生かしてあげるもの」
 そう言いつつ、朔の援護のため、クラゲに向かってサイドワインダーを放つアテフェフであった。


 アテフェフの援護を受けた朔のエンリルが巨大クラゲに対し、マジックカノンやグレネードで総攻撃をかける。
 ……まるで、エリヌースはいないかのように。
「朔ーー!! あたしを助けるのか殺すのかハッキリしなさいよぉぉ!!」
「当然、助けます」
 悲痛な叫びにみすみだけがそう応える。
 エンリルのマジックカノンがクラゲの触手をまとめて吹き飛ばし、海面に巨大な水しぶきが上がる。
「きゃああぁぁぁーーッ!!」
 ついでに、エリヌースも空へ舞い上がる。
「エリヌースさん!!」
 みすみが力一杯手を伸ばし、落下してきたエリヌースの手を掴む。
「ふ、ふふーん!! ようやくあたしを認めたようね!」
 半べそをかきながら気丈に振る舞うエリヌース。
 それを見届けた朔がエンリルの踵を返す。
「朔さん? 戻るのですか?」
「みすみ、このままじゃ私達もクラゲの餌食だ。イロハも回収して一旦陸に……うぁ!?」
 突如エンリルのコントロールを取られた朔が悲鳴をあげる。
「もう、一匹だと……!?」
 その隙に、朔への恨みとばかり、仕留めそこねた巨大クラゲが体当たりをかける。
「このぉ、ゼラチン質の分際でぇぇ!!」
 怒りつつも、朔の頭には、何故このタイミングでもう一匹の巨大クラゲが現れたのか? それを考える余裕があった。
 浜辺に現れた掃除屋の応援部隊を見た時に、朔の口から「あ、なるほどね」と漏れる人物がいたためである。