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リアクション
一方観客席。
「うーん……CY@Nのポロリは期待できなそう。はむ」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は双眼鏡で選手たちの胸を観察しつつ、ポップコーンを頬張った。
「美羽、そんなことよりも鏖殺寺院の構成員を見つけなきゃ」
ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が呆れた声で言う。本当の目的はそっちだ。
「おとなりよろしいですか?」
美羽に妙齢の女性が尋ねる。中原 鞆絵(なかはら・ともえ)だ。美羽はどうぞと、隣の席に誘った。
「鞆絵さんも天御柱から任務に?」とベアトリーチェが尋ねる。
「とは言っても、老体の身ですので、ことはリカインに任せて見物です」
そう言いながらも、観客席から《ディテクトエビル》で警戒をしている鞆絵。
「ところで、その双眼鏡には何か細工でも?」
「ん? なにもないよ? 監視用に蒼学の売店で買ってきたものだもん。どうして?」
と否定する美羽。カメラ機能を搭載しているとは言えない。
「いえ、最近妙なカメラが出回っていると聞きましたので。それに観客に賊が紛れ込んでいることはよくありますし」
「妙なカメラですか?」
「例えですよ。でも、何かにカモフラージュした武器を誰が持っているかわかりませんし。あたしが鏖殺寺院工作員なら銃を加工して、プールにいる邪魔者を消そうかと思います」
なかなかに物騒なこと言う老女。しかし、あながち間違ってはいない。
声優として潜り込んだ構成員をCY@Nに近づかせるにはそういった、アシストが必要になってくる。歌合戦の時を考えるにCY@Nへの護衛の壁は固い。なら、その壁を削ぐことに思い至るのは道理。
「そう、あそこの輩のように――」
鞆絵が北側の観客席を指す。《ディテクトエビル》の反応する場所を。
「ベアトリーチェ!」
「わかっています。――、見つけました!」
美羽に言われる前に《ディテクトエビル》で敵の位置を感知する。熱気で蒸せる会場には似合わない長袖の男が一人、階段を下りていく。その右袖が不自然だった。仕込み銃だ。
美羽とベアトリーチェは鞆絵を残して、男へと走る。おそらく騎馬の組合に乗じて、騎手を撃つ気だ。そうはさせない。
男に近づくと、美羽は靴に仕込んだ暗器【ファイアヒール】で男のふくらはぎを踏むようにして撃ちぬいた。男の足が崩れる。
「おい何事だ!」
暗器とは言え、銃声の破裂音は誤魔化せなかった。誰か不審に思ってこっちに来たかと思うと、エースとメシエだった。彼らも《ディテクトエビル》でこの工作員に気がついていた。
「フーセンが割れちゃった」
と美羽が嘘をつく。そんなもの持っていないのに。
「ちょっと大丈夫ですか?」
プールサイド周辺を警備していたアルメリアも来る。足に怪我している男のほうを心配した。
「大丈夫なわけが――」
「大丈夫ですよ。足を躓いただけのようです。おや、おまけに貧血でしょうか?」
男の口を塞ぎ《ヒプノシス》をかけるメシエ。抵抗する間もなく男は眠りに落ちた。
「仕方ない。俺らで医務室に運ぶよ」とわざとらしくエースが言う。
「そう、でしたらお願いします。しっかり面倒みてあげてよ」
意訳すると、しっかりと尋問して聞き出せ。とアルメリアは言って警備に戻った。
工作員の男はエースに担がれて、退場となった。
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