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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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潜入 奉行所 2

「さあ、皆さん。お縄につくデース」

 ゼニガタは、そう言うと手にしたロープをブンブンと回しながら、じりじりと一同に詰め寄って来た。
「やろうってのか? おもしろいじゃねえか」
 ハヤテが身構える。が、しかし
「Wait!」
 突然ゼニガタが叫んだ。
「戦う前に、今、鍵を持ってるのは誰デスかー?」
「俺だよ」
 ハヤテが懐を叩きながら答えた。
「ここにあるぜ。で、どうしようってんだ? 奪い返そうってか?」
「さあ、どうしましょうね? お蝶」
 そう言って、ゼニガタが後ろを振り返ると、黒髪の美しい女が答えた。
「すいません! 私が全部悪いんです!」
 そう言うと、お蝶は泣きながらハヤテに突進して来た。
 そして、ハヤテの手を握り、その顔を覗き込みながら言う。
「ごめんなさい。こんな争いをしなくてはならないのも、私が全部悪いんです」
「はあ?」
 キョトンとするハヤテ。その間に、お蝶は走り去っていく。
「なんだあ? あいつ? わけわかんねえ」
 つぶやきながら、ハヤテは懐に手を入れ、そして青ざめて叫んだ。
「ああ! 鍵をとられた」
「えーー?」
 驚く一同。
「すいません、ごめんなさい」
 謝りながら、竜胆の居る牢の鍵を閉めるお蝶。何と、鍵はお蝶にすられていた。こうして話は振り出しに戻ってしまった。
 ゼニガタは勝ち誇ったように叫んだ。
「はっはっは。驚いたですか? そのお蝶は腕利きのスリでーす。釈放を条件に竜胆の守護をしてマース」
「ふざけろ! 鍵を返せ!」
 お蝶に駆け寄ろうとするハヤテ。しかし、その前に立ちはだかるどでかい女がいた。
「うわ! 山かと思ったらなんだ? お前は」
 と、ハヤテが女を見上げると、
「わたいはお富士と言います。ドスコーイ」
 巨大な女が答える。
「お富士?」
 名は体をあらわしているようだ。ゼニガタが言った。
「その女は、もと女横綱デース。相撲賭博がバレて捕まってマース。お蝶と同じく釈放を条件に竜胆の見張りをしてマース!」
「その通り! 竜胆は渡さない、ドスコーイ」
 お富士はシコを踏む。
「ちっくしょう! こいつ……」
 ハヤテは飛びかかったが、あっさりと突き飛ばされてしまった。
 すると、
「ここは、私にまかせてよ!」
 と、緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が飛び出して来た。
 そして、蹲踞の姿勢でチャージブレイをして一気にお富士にぶつかっていく。
「突っ張りー!」
 お富士は叫ぶと、平手で思い切り透乃をついていく。
「突っ張り、突っ張り、突っ張りーーー!」
 お富士は平手を連打で繰り出す。そのあまりの力と、見かけに寄らぬ素早さに、透乃は抵抗する事もできなかった。それでも、隙を見て拳を入れている。しかし、その拳はぶよぶよの腹にあえなく埋もれてしまう。透乃が再び拳を繰り出すと、今度はお富士は透乃の肩をつかみ、手前に引いた。透乃はバランスを崩して前に倒れる。
「引き落としー!」
 お富士は叫ぶと、さらに透乃の体を逆さ羽交い締めにした。
「そして、これが禁じ手五輪砕き!」
「く……」
 両腕を締め上げられて苦しむ透乃。その体を持ち上げると、お富士は思い切り投げ飛ばした。
「大丈夫ですか? 透乃さん」
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が駆け寄る。
 すると、透乃は起き上がって答えた。
「大丈夫だよ。とりあえず、元横綱の力を味わいたかっただけだから。そろそろ本気出すね!」
 そういうと、不壊の堅気と龍鱗化を展開。再びお富士にぶつかっていった。
「懲りない人ですね」
 お富士は不敵に笑うと、再び突っ張りをかましてきた。
「突っ張り、突っ張り、突っ張りーーー!」
 しかし龍鱗化をかけた透乃はびくともしない。それどころか、余裕で平手をかわしていく。
「ど……どうして、わたいの技が効かないんですか?」
 うろたえるお富士に向かって透乃は笑顔を見せると、
「今度は私の番だよ!」
 と叫び、烈火の戦気でお富士に拳を繰り出す。拳は、お富士の脂肪にめり込み、そのままお富士の体は大きく後方へと投げ飛ばされた。
「お富士チャン!」
 ゼニガタが叫ぶ。
「お富士ちゃんの危機デース。皆さん助けるデース」
「ラジャー!」
 と、何故か英語で叫び、男囚が襲いかかってくる。彼らは先ほど逃げなかった数少ない男囚達である。
「逃げなかったと言う事は、ナカナカ骨のある人達と見ていいのでしょうね」
 陽子はつぶやいた。
「でも、だからこそ透乃ちゃんには手を出させません」
 陽子はそう言うと、アボミネーションを唱えた。男囚達はおぞましい気配を察知し、一瞬躊躇する。しかし、それでも果敢にも襲いかかってきた。
「しかたないですね」
 今度は陽子はエンドレス・ナイトメアを唱えた。すると、男囚達は頭痛、吐き気、不安などに襲われ全員その場に倒れ込んだ。
「勇敢な人たちですから、殺さないでおきましょう」
 陽子は男囚達を見下ろして言う。そして、ゼニガタに目をやるとつぶやいた。
「あの、ゼニガタさんにしても、一応正義の心で動いてはいるようですが、それにしても、刹那が絡んでいるとはいえ、奉行所の人達は竜胆さんの件がおかしいと思ったりしなかったのでしょうか……」

 一方、透乃に投げ飛ばされたお富士は、立ち上がると、その巨体からは想像もできぬ素早さで透乃に襲いかかっていった。そして、透乃の体をつかみ投げ飛ばそうと手を伸ばす。しかし、透乃は寸前で身をかわすと、等活地獄でお富士の腹に拳を打ち込む。透乃の燃え上がる闘志が炎のような闘気となって拳からオレンジ色の炎が立ち上がる。
「う……ぐはあ……」
 お富士は腹を抑えてその場に崩れると、白目を剥いて倒れてしまった。