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はんどめいど・らっきーちゃーむ★

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はんどめいど・らっきーちゃーむ★

リアクション

「あ、あれ? おっかしーな」
銃に紋様を直接彫り込んでいた四谷 大助(しや・だいすけ)は、いざ戻そうとした銃を思ったように戻せずに困惑していました。
けれど一度迷宮入りしてしまうといくらやっても埒が明きません。
大助は思い切って雅羅に話しかけました。
「なぁ、雅羅。ちょっと助けてくれないか?」
「え?」
「ちょっと戻せなくなっちゃったんだ。雅羅のと同じ銃だし……それに銃器の扱いはお手の物だろ?」
「……仕方ないわね」
持ち上げられて悪い気はしなかったのでしょう。まして彼女の得意な銃のこととあって、仕方なしという体ではありましたが雅羅は引き受けてくれました。
手慣れた様子で銃を直していく手つきは、流石といったところでしょうか。
「こんなところまで改造しようと欲張るからよ」
「はは、ごめん。でも流石雅羅だね」
「当然よ。……ほら、終わったわ」
「おお、我ながらなかなかいい位置に紋様が入ったな。名付けて『バントラインスペシャル大助式』!」
ばばーん、と構えて見せてから、大助は明るい笑みを浮かべました。
「……なんてね。ありがとう、雅羅が手伝ってくれたおかげだよ!」
「別に、たいしたことじゃないわ」
「うん、でも本当に助かったから。……あのさ、オレ、雅羅ともっと話したい。この銃のことも、他にも色々」
そこでいったん言葉を区切ると、大助は雅羅に手を差し出します。
「以前は断られたけど、雅羅の親友になりたいんだ」
「……カラミティに飛び込んでくるなんて物好きね」
「今日からそれも返上するんだろ?」
雅羅だけでなく自分もそれを願ったのですから、雅羅はきっと幸せになれる。劇的な変化は今日だけだとしても、ずっとこのままではないはずだと、大助は信じていました。
あっけに取られた雅羅も、そんな大助の様子に思わず苦笑いを浮かべます。
――と。
「あっ、いらっしゃったんですね雅羅お嬢様!」
想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)を引き連れた想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)がやってきて雅羅の前に唐突に跪きました。
そしてお守りを差し出して、恭しく礼をします。
「ワタクシ達は雅羅お嬢様の専属メイド、執事でございます」
「ど、どうかお嬢様のお手伝いをさせてください」
「そ、そう? よくわからないけど……じゃあお茶でももらおうかしら」
「はい、ただいま! ほら、何やってんのよユッチー! お茶!」
「えっ? あっ、はい!」
「気がきかないわね、お嬢様のお友達の分も一緒に出すのよ」
「はっ、申し訳ありません!」
「お菓子もあるなら欲しいわ。あとは肩を揉んでちょうだい」
二人の様子が気に入ったのか、ちょっと得意げに命じる雅羅に、二人はどこか嬉しそうに「畏まりました!」と声を揃えました。
「え、えーっと、雅羅ちゃん?」
「もー、そのへんにしなよ?」
出されたお茶を受け取りながらも、美羽と愛美が宥めます。
それを遠巻きに眺めながらみんなのお手伝いに回っていたティアは、蓮見 朱里(はすみ・しゅり)に呼び止められて足を止めました。
「ティアさん、お久し振りです」
「あっ、お久し振りです。アインさんも」
「ああ、久し振りだ。元気だったか?」
「はい!」
朱里を支えるように傍に座したアイン・ブラウ(あいん・ぶらう)も、微笑と共に問いかけます。
ティアは笑顔で頷くと、少しだけ申し訳なさそうに眉を寄せました。
「ええと、この間はすみませんでした……」
「え、」
「お怪我はなかったらしいですけど……アインさんは気になさっていると聞いて……そのぅ」
ティアの言葉にぎくりと身を強張らせたアインはぶんぶんと首を振りました。
「いやいやいやいや!! いいんだ、もう気にしてない! 気にしていないからその話はなかったことに……!」
「ふふ、大丈夫ですよティアさん」
くすくすと笑いながら朱里は微笑んで見せる。
「あれがきっかけでアインの意外な一面も見られましたし」
「朱里さん……」
「大事な……私たちの思い出です」
そう言ってそっとおなかを撫でる朱里のまなざしは、ひどく穏やかでした。
まだ目尻に照れを残したアインも、大切なものを愛でるように朱里の肩を抱きます。
「そう言っていただけて嬉しいです」
「今日もね、ティアさんがよく効くお守りを教えてくれるって聞いて安産祈願のお守りを作りに来たんです」
「あかちゃんの……」
ほう、と朱里のおなかを見遣ったティアは、遠慮がちに尋ねました。
「あのぅ、おなかを触っても?」
「ええ、どうぞ」
朱里の許可とアインの首肯を得て、手のひらを小さな命に重ねます。そのぬくもりにティアは顔をほころばせました。
「……たくさんのしあわせが、訪れますように」
小さく呟くと、そうっとひと撫でして手を離します。
「元気なあかちゃんが生まれるといいですね」
「ありがとう、ティア」
「きっと素敵な子が生まれると思います」

「……幸せそう、ですね」
「ん?」
思わずひとりごちたセス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)に、応える声がひとつ。
先ほどまで必死でお守り作りをしていたヤジロ アイリ(やじろ・あいり)でした。
「ああいった光景を見ているとこちらまで幸せをもらえるようです」
ほら、と朱里たちを指示してセスは微笑みます。アイリもそれを見てそうだな、と頷いて見せました。
そして「じゃあ俺たちも」とアイリはお守りを差し出します。
四角のプレートに五芒星を刻んだお揃いのプレート。裏には小さく安全を祈願する紋様が刻まれています。
アイリが作ったものには緑の、セスが作ったものには紅の意志が嵌っています。
それは互いの眼の色の石を嵌めこんだ二人だけのお揃いのお守りでした。
互いに交換し、ネックレスに通してアクセサリーにしながら、へへ、とアイリは笑いました。
「これでずーっと一緒ですね、アイリ」
「う、うん……」
今回ばかりは照れながらも素直なアイリに、セスも微笑みます。
互いに想い人の安全を願ったお守りを身に付けた二人は、とても幸せそうに見えました。
それを見て意を決した遠野 歌菜(とおの・かな)は、お守りを握りしめて月崎 羽純(つきざき・はすみ)の下へ走ります。
「は、羽純くん!」
「おお、どうした?」
息を切らして向かってきた歌菜に、羽純が問います。
その問いに応えるように歌菜はずいっとお守りを差し出しました。
「これっ」
「お、おお?」
思わず受け取ると羽純の外見が見る見るうちに変わります。
「うわーうわー羽純くんが、幼くなった!」
きゃあきゃあと歌奈が喜びの声を上げます。
歌奈の願いは同じ目線で羽純と過ごすことでした。
歳の差がある羽純とではどうしても感じてしまうわずかな距離。
一日だけでもそれを取り払って見たかったのです。
わずかに身長の低くなった羽純が、何処か可愛くすら感じられます。
「……同じ年齢だと、こんなカンジなんだ!」
思わずまじまじと見つめてしまった歌奈の額に強めの一発。
羽純のデコピンがお見舞いされました。
「って、痛〜い!」
「驚かされた罰な」
「うう……中身はいつもの羽純くんだ〜」
「当り前だ。ちゃんと元に戻るんだろうな?」
「うん、効果は一日だけなの。私と同じ歳の羽純くんと過ごしてみたくて……」
「一日だけ、か……まぁ、なってしまった物は仕方ない」
羽純は息を吐いて、しょうがないなと笑みを浮かべました。
「今日はとことん歌菜に付き合ってやるよ」
「え?」
「何だ? 驚いた顔して。同じ歳の俺と過ごしてみたかったんだろ? 折角だし歌菜の望む所に一緒に行ってやる」
「私の望む所に? 嬉しい……!」
歌奈は思わず羽純に抱きつくと、さっそく街へ繰り出すのでした。