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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード! 【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

リアクション

 『ド派手にやろうぜ!』という募集文に惹かれて【いとお菓子】に参加したのは、派手好きな性格のダンサー、キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)であった。
 銀髪の縦ロールに黒色の肌のキテ◯ちゃんの外見に、きらきらしいティアラ、カボチャの王錫
 カボチャ色の毛皮縁取りマント、カボチャ(バルーンっぽい)のドレス等々、カボチャ尽くしで仮装しているキャンティ。その頭には仮面舞踏会等でよく見るタイプの仮面が付けてある。
 外見はともかく、意外と本格的にダンスをやっていたキャンティらしく、ダンサーになりきり可愛いダンスを披露しながら、用意されたお菓子をパレードを見に集まった人々にばら撒いている。
 一番高い場所で目立つの希望だったキャンティには、移動劇場内に彼女専用の円形の台座が置かれ、そこで踊りを披露する。但し、BGMは竜司の歌であり、時折リズムが掴めないところもあるみたいだが……。
 キャンティの参加の影には、この人物の努力があった。
「ハロウィン・パレードでございますか。楽しそうでございますね」
「うん。みっきーとみにぃが何か企んでいるそうですわ……一部で【多魔・キャンティ】と呼ばれているキャンティちゃんとしては、参加しないわけにはまいりませんわ〜」
「成程。では、私は裏方として細々とした雑用や、皆さまの飲み物や食事の準備などお世話をさせて頂きましょう」
 シャンバラ大荒野にある、由緒正しい……らしい温泉宿『温泉神殿』で、その管理人を務める男は午後のお茶を飲みながら、パレートを妄想して盛り上がるキャンティの姿に微笑みつつ、早速【いとお菓子】への参加連絡をしたのだった。その男の名は聖・レッドヘリング(ひじり・れっどへりんぐ)である。
 尚、キャンティが着用している仮面も聖のアイデアである。
「あらぁ、仮面舞踏会みたいで素敵ですわね〜」
 聖はパレードの前にキャンティに仮面を渡していた。
 キャンティは特に疑いもせず、微笑んでソレを付けてくれた。
 これは、シャンバラ中から見物客が集まるため、キャンティが我を忘れない為の聖の配慮である。普段は可愛い喋り口調のキャンティだが、『キ○ィ』の単語には激しく反応して豹変し、罵倒を浴びせる事が過去にあったのだ。
「キャンティ様も楽しまれているご様子……本当、参加をして良かったです」
 事前に問題を阻止した執事としての達成感も絡んで、聖が楽しげに踊るキャンティを見て目を細める。
「火薬庫で有ることに変わりはありませんが……ヒジリさん?」
「カデシュ様。落ちたお菓子は、この私にお任せ下さい」
 ステージに梓目掛けて投げ込まれたお菓子が大量に落ちているのを、聖が素早く回収していく。
「それより、パフォーマンスをするんでしょう? ヒジリさん?」
 カデシュがステージ上にある大きなカボチャ型風船をチラリと見やる。
「おっと……そうでしたね。では、少しお願い致します」
 聖がカデシュに微笑み、クルリと踵を返す。
 聖が用意した大きなカボチャ型のオレンジ色の風船の中に、何かが沢山詰め込まれているのが見える。
「キャンティ様?」
「聖? アレをやるのねぇ!」
「はい。ご足労おかけします」
「いいわよぉ!!」
 キャンティが微笑み、懐から拳銃を取り出す。拳銃と言っても、ハロウィンの装飾がされた可愛い銃であり、恐らく殺傷能力は無いだろう事がわかる。
「では……タァァッ!!」
 聖がカボチャ型の風船を、ドラゴンアーツで高々と観客席の上空へと投げる。
「「「おおおぉぉぉーー!?」」」
 観客が「何だ何だ?」と一斉に、空を飛ぶ風船を見つめる。
「キャンティ様、お願いいたします」
 キャンティに深々と頭を下げる聖。
「いくわよぉぉーー!!」
 狙いをつけたキャンティの銃が火を噴く。

―――パンッ パンッ……パチンッ!!

 空中でキャンティの銃に撃たれた風船がはじけ、ドッと荒野に雨のように何かが降ってくる。
「これは……」
 観客の一人が降ってきたモノを掴むと、それは、包み紙にさり気なく温泉神殿の広告が印刷されたキャンディであった。
「うめぇ!!」
「カボチャ味だ!!」
 雨の様に降り注ぐキャンディに観客達が沸く。これを見ていたキャンティと聖が微笑みあって、小さくハイタッチを交わす。
「……おっと!?」
 笑顔もつかの間、素早くキャンティの身を引き寄せる聖。
 聖達がいた場所を、ジャック・オー・ランタンの仮装をしたヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)と、リビングメイルの仮装をしたセリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)が互いの大きな光条兵器を振り回して剣舞していく。
 二人は光条兵器で斬り合いながらも、雷、火、氷等の魔法を放ち、派手に、そして縦横無尽に移動劇場のステージ内を所狭しと踊っていく。
「危なッ!!」
 間一髪で、ヴァイスが振りかぶった光条兵器を避けた刹姫。
 山車の登場を彩った刹姫と暦も、その後、皆と一緒に移動劇場の上から菓子を撒いていた。
「ふむ……まるでコマとコマがぶつかりあっている様じゃのう」
 暦が激しく火花を散らすヴァイスとセリカの剣舞に目をやる。
「コマよりずっと危ないわよ……」
「おぬし、よく見るのじゃ。火術同士や雷術同士がぶつかり合い、闇夜に火花を散らしておる、しかもお互い火事にならん程度に弱めてな」
「私達が危ないって言ったんだけど……」
 暦がそう言うのも無理はない。ヴァイスとセリカの間では、今も氷術同士がぶつかり、氷の欠片がキラキラ落ちていく。
 一方、ヴァイスと剣舞を舞うセリカは、少し別の事を考えていた。いつの間にか、その外観が西洋鎧の形にされていたパワードスーツの事である。
「(ヴァイスは彫金も裁縫も両方できるのか……樹脂製ジャック・オー・ランタンもそうだが、よくできている)」
 確かに今の二人は傍から見れば、本物のカボチャと金属鎧にしか見えない。
「(しかし……何故恐くする)」
 セリカがそう付け加える。
 セリカの鎧は、何故か目と口が三日月形に笑った不気味なものであり、どうやったのか不明だが、目と口がほんのり赤く光って見えている。闇夜に浮かぶその顔は、かなり怖い。
「(これで剣舞をやりながら魔法で演出すると言っていたが……まさかここまで迫力があるとはな)」
「セリカ! 折角の祭りなんだ、派手にいくぜ! 腕が止まってるんじゃねぇのかぁ!!」
 ヴァイスが、切れなくとも撲殺出来そうな程の大きさを持つ光条兵器の剣を振りかざし、セリカを挑発する。
「それは、おまえの方だぜ!!」
 セリカの光条兵器は、巨大な斧と穂先を持ったハルバードである。ヴァイスより長身な体から一気に振り下ろす。
「はぁーッ!!」
「でぇぇああぁぁー!!」
 ヴァイスとセリカの剣舞は、果てること無く、尚も加速していく。

 そんな賑やかな移動劇場のステージの上には、【いとお菓子】専属の警備員を担当する者たちが、舞台袖に待機していた。
 観客席に向かい多量の紙吹雪を吹き出す装置の傍には、魔女の仮装をしたフラット・クライベル(ふらっと・くらいべる)がいた。フラットの容姿はミリーと瓜二つで小さな違いを除けば、双子にしか見えない。
 フラットは今日の日のために、わざわざ魔女の大鍋から紙吹雪を噴出す装置を無理矢理作っていた。
「フラット! フラット!」
 海賊ゾンビの仮装でフラットに話かけるのは、アイ・ビルジアロッテ(あい・びるじあろって)である。
「アイはねアイはね、海賊ゾンビのこしゅぷr……コスプレでっ……山車の上で「おりゃー!」してればいいんだって!」
「おりゃーって……何するの?」
「ハロウィンハロウィン楽しいハロウィン♪ アイは今日が誕生日なんだって! こんなに楽しい日に作ってもらえたなんてアイ、とってもうれしいよ!」
 アシェルタが蒐集した魂から製作されたアイ。その性格は軽く、放っておけば一日中喋り続ける事をフラットは重々承知していたので、先ほどまでは暫しダンマリを決め込んでいた。
「アイはいいよねぇ……ま、フラット達もとりあえず教導団だしぃ、警備ならおまかせーって思いたいけどぉ……」
「けどぉ?」
「フラットは弱いから、こわぁい人には何も出来ないんだよねぇ、ホントだよ? ふふふっ……」
 アイがフラットが手にした匕首を見て、唸るが、直ぐにその横にある魔女の大鍋に興味を移す。
「フラット! フラット! これも……んとー…そう、けいび! 警備するためのものにゃの?」
「そうだねぇ。これはパレードらしさの演出の他にも、観客席からの視界を悪くするのもかねてるんだ〜」
「視界を悪くぅ?」
「うん。ほら、上からだと悪い人ってよぉく見えるからねぇ……そんな人にはこの匕首をざっくりプレゼントしちゃうよ☆ でも数に限りがあるのが難点なんだよねぇ……」
「フラット! フラット! アイね、しちゅもんが、あるの!」
 匕首を見て不気味に微笑んでいたフラットがアイを見る、
「なに?」
「あのね、あのね……んーと、みんなって……パエード、観に来てるんでしょ?」
「そうだねぇ」
「紙吹雪で視界をわりゅくしたらぁ……見えないんじゃ……」
「……」
 ブシューッと大量の紙吹雪を出す装置の横で、アイと見つめ合ったままのフラットが固まる。

 元が悪魔ゆえか、精々角生やしたり、同じ髪色の縦ロールのヅラ被ったりドレス着たりって程度の仮装で、見事に童話に登場しそうな一番タチの悪い継母になっていたアシェルタ・ビアジーニ(あしぇるた・びあじーに)もまた、ステージ上の端で専属警備員として見張りを兼ねつつ待機していた。
 アシェルタが手にしている銃は、本来はミリー・朱沈(みりー・ちゅーしぇん)のものだが、ミリーがまだ扱える腕ではない【バ改造フリントロックライフル】である。
「ミリー、今度はちゃんと詰めたのですね?」
 傍にいた吸血鬼の格好をしたミリーが頷く。
「そう何度も間違えないよ」
 口を尖らせるミリー。
「まぁ、わたくしはどちらでもよいのですが、観客用と演出用を間違えますと、他の皆様にもご迷惑がかかりますしね」
 アシェルタがそういって銃を構えると、ミリーがアシェルタの背後に回る。
ーーードンッ!!
 空へと向けられた銃が火を吹くと、夜空に小さな花火があがる。
 花火はミリーのヴァンパイアの格好に合わせて血のように真っ赤で尾を引くモノであり、その他にもオレンジとか紫とかハロウィンらしい色が用意され、時折打ち上げられていた。
「くっ……さすがに反動が強いですわね」
「そりゃあ、力が取り得のボクの為の銃だからね。他の人には扱えるような反動してないよ」
 発射の反動で倒れそうになるアシェルタを支えたミリーが言う。
「アシェルタの肩さえ外れなきゃ、それでいいよ」
 銃を受け取ったミリーが直ぐ様弾丸の装填作業を開始する。
 ミリーは地味な作業であるが、銃に詰める火薬と花火の玉、それとパレードの邪魔してきた人向けの飴玉を装填する係をこなしていた。また、反動でアシェルタが飛び散らないように支えるのも忘れない。
 山車に近づいてきたモヒカンに、飴玉と間違えて銃に込めた花火玉を発射した事もある。同じサイズの形状だからわかりにくいのだ。挙句にステージ上こそ華やかだがその周囲は闇である。
 その際は、アシェルタの照準がズレたのも幸いしてか、モヒカンの頭上で花火が咲き、彼の髪が焦げただけで済んでいた。
「この飴玉は余るだろうから近くの人にでも配ろうかな?」
 飴玉は、ちゃんときれいなセロファンに包まれているので、例え人に当たって中身が粉砕されていたりしても一応は食べられるようになっている。
「まだ、駄目ですわ。ミリー」
 アシェルタが不気味な笑顔を見せる。
「警備員のわたくしが、不逞な輩には飴玉のご褒美を食らわせてあげないといけませんのよ?」