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第3章 地下迷宮の使者

 アゾート達は無事、地下迷宮を進み、地下最下層へとたどり着こうとしていた。
「……広い」
 天井は高く、周りは本棚でびっしりと詰め込まれていた。
 奥行きも、一般的な体育館二つ分の広さはあった。
 そして、そこではたくさんの本のキャラクター達が暴れていた。
 
「司書長さん〜」
ユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)は暗い地下の広間を見渡しながら、司書長を探す。
その後ろでは大きい胸が特徴的な同人誌 『石化の書』(どうじんし・せきかのしょ)がついてある体太。
「何処にも見あたらないね〜」
「……上」
 石化の書が上を指さした。
 そちらをユーリが見ると、そこには体長15メートルはある、赤く巨大なドラゴンが飛んでいた。
 ドラゴンは低いうなり声を上げるとユーリ達を睨んできた。
「ど、どうしよう?」
「私達が相手するわ。あなたたちは先へ!」
 ユーリ達が悩んでいる時に突然背後から声が飛んできた。
 そこにいたのは、ミルゼア・フィシス(みるぜあ・ふぃしす)だった。
 ミルゼアは全員を先に行かせ、ドラゴンに対峙した。
 ドラゴンは強く羽を羽ばたかせ、その場の空気をかき乱した。
「さすがに大きいわね……殺し甲斐あるかしら? マイ、あなたは柔らかい部分を狙いなさい」
「や、柔らかい部位でございますか?」
 マイと呼ばれた、巫剣 舞狐(みつるぎ・まいこ)は足下を振るわせていた。
 それが分かったミルゼアは、マイの頭を優しくなでた。
「マイ、自分の力を信じなさい。貴方は十分に強いわ」
 マイの恐れは次第になくなっていた。
 だが、それを端からうらやましそうに見ている人が居た。
「リディルには……」
「え?」
 うらやましそうに見ている、リディル・シンクレア(りでぃる・しんくれあ)にミルゼアは驚きの声をあげた。
 しばらくリディルを眺めていると、リディルははっとなり剣を構えた。
「リディルは障害は排除します。ミルゼア様は本懐を遂げて下さい」
 リディルには、ミルゼアが首を叩き切るつもりなのだろうと分かっていた。
 その為に、すでにやることは決まっていた。ミルゼアを守ろうと。
「某の矢、食ろうてみよ!」
 リディル達よりも先に、ドラゴンにポイズンアローを放ったのは、ルクレシア・フラムスティード(るくれしあ・ふらむすてぃーど)だった。
 ドラゴンの腹部へと、その矢が数発命中する。
 ドラゴンは一瞬悲鳴をあげるが、すかさずミルゼア達にめがけて襲いかかってくる。
 リディルとミルゼアはすかさずよけつつ、ドラゴンの真正面へと斬りかかる。
「思ったより、当たるわね!」
「あまり前に出すぎないでください危険です!」
 ミルゼアが常に先に斬りかかり、リディルがそれを援護する形でドラゴンは徐々に傷を負っていく。
 その間にも巫剣は裏から回り込んでいた。
 途端、ドラゴンは大きく口を開け、火を吐き出そうとし出す。
「今よ」
「氷術じゃな!」
 ミルゼアの呼びかけに、ルクレシアは強く答えた。
 ルクレシアによって放たれた氷術はみごとにドラゴンの口の中を凍らせた。
 火のドラゴンということがあり、一番効果がてきめんのように見えた。
「今ならチャンスかもしれません」
 巫剣は柔らかいしっぽの部分をめがけ、刀を勢いよく振り下ろした。
「ギャアアアウゥッ!!」
 ドラゴンは悲痛の叫び声をあげる。
 ミルゼアはこの好機を逃さぬ用、勢いよくドラゴンの首もとへ飛び乗った。
「覚悟よ!」
 その大きな剣は、勢いよくドラゴンの首を断ち切った。
 ドラゴンは消滅したのだった。